霧夜

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※タヒの表現があります。
苦手な方はご注意を































「さようなら」

その言葉の本当の意味を、その時の俺は理解できなかった。

いつもと言い方が少し違うな、程度の認識だった。
















思い返してみれば、表情にも言動にも、他にもおかしかった所が沢山あった。

俺があの時、本当の意味で、あいつの言葉を理解出来ていたのなら

俺がもっとあいつの事を気にかけてやれていられれば


俺が

俺が...

...あいつの苦しみに...気づいて...寄り添ってやれていれば...



今になって、現実を突きつけられて。

やっとその意味に、想い気づいて。

本当、何が天才だよ...。


後悔と悲しみが、涙と一緒にぼろぼろと零れていく。


.....あいつはいつも、笑顔で明るかった。

いつもの帰り際も、あの日でさえも、ずっとそれは変わらなくて。

けれどあれは、あいつなりの、心配させないようにと言う気遣いだったのかもしれないと

あいつ自身の想いを隠す、仮面だったのではないかと

今になって、そう考えてしまう。








...あぁ、けれど、けれど...

「お前の最後の顔が----」

俺は、あいつの真似をして、笑顔を作った。

別れの時くらいは、笑顔で迎えたかったから。






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眠りについた彼の表情は

今までで一番の、安らかな笑顔を浮かべていた


#別れ際
72作目






9/28/2023, 12:22:59 PM