あいつが、亡くなった日。
その時は、驚く程何も感じなかった。
頭が真っ白になって、何も考えられなかった。
けれど、日が経つにつれて、あいつが居なくなったことへの自覚が
徐々に強まり始めた。
あいつの太陽のような笑顔も
いつも私を元気づけてくれる優しい声も
私の存在に気づくと、必ず振り返って声を掛けてくれるあいつの姿も
ふとした時に、無意識のうちに探してみても、結局は見つからなくて。
その度に、苦しくて辛くて、悲しい気持ちに襲われ続けた。
嗚呼、こんな気持ち。知りたくなんて無かった...。
#喪失感
54作目
数年前に、一度だけ。
とある花畑に、あいつと訪れた。
色鮮やかな花々がこの空間の一面を覆い尽くし、微風に吹かれて自由自在に揺れていた。
太陽の光がそこには降り注ぐことによって、花の美しさをより一層引き立てていた。
現実から切り離されたような幻想的な景色が広がっているこの空間に、俺は思わず見とれてしまった。
あいつに言われて、連れてこられた場所。
まだ、誰にも教えてないという、俺とあいつだけが知る秘境の地。
「...この景色を...お前に見せたかったんだ...。」
隣に立つあいつが、珍しく微笑みながら、嬉しそうにそう言った。
この時、俺にとって世界に一つだけの、大切な思い出が出来たんだ。
#世界に一つだけ
53作目
子供をあやす様に、慰めるように、こいつはいつも俺の事を撫でてくれる。
ぎゅっと身体を包み込むように、優しく抱き寄せてくれる。
その時、こいつは余り喋らない。
いつも言葉にはされてないけれど、
鼓動から伝わってくる。
心に呼びかけられる。
「愛してる」「好きだ」「大丈夫」「俺がそばにいる」「安心してくれ」
と。
トクトク トクトク
と、優しい鼓動が俺の胸の内に響いて
いつでも俺を、安心させてくれる。
#胸の鼓動
52作目
月光がスポットライトのように淡く地上を照らし、色鮮やかな花弁が、美しい蝶が空中を舞う。
冷んやりとした優しい微風が、この空間に広がっている。
そんな、とある花畑で、俺は二人の人影を見た。
堂々と、可憐に、そして自然に
まるで二人が一心同体かのように、揃って舞を踊っていた。
幻想的で、非現実的なこの景色。
俺は、その光景に見とれていた。
そして同時に、あの二人の影に、俺とあいつの姿が重なった
いつか、思いを伝えられた時
再びこの場所を訪れて、
二人で一緒にーーー
#踊るように
51柵目
カチ カチ カチ カチ
リズムの良い秒針の音が、静かな部屋に響く。
カチ カチ カチ カチ
変わり映えのしない音。
カチ カチ カチ カチ
普段なら全く気にならない音
カチ カチ カチ カチ
なのに今日は、変に意識してしまうと音
カチ カチ
カチ カチ
カチ カチ
一人の部屋に、秒針の音はいつも以上によく響いた。
怖い、寂しい
前までは、こんなの全然へっちゃらだった。
子供の頃は、両親共々凄く忙しくて、よく一人でお留守番をしていたし
その後も、成長してから一人暮らしをしたことだってあった。
なのに、なのに。
たった数時間、一人の時間を過ごしただけなのに
こんなにも寂しくて、心の中にあるピースががごっそりと取れたかのように、胸が苦しい。
いつから俺は、こんなに弱ってしまったのだろうか。
一人で居ることがこんなにも苦痛で、怖くて。
誰か…早く…会いたいよ…
ガチャリ
そんな時、玄関の扉の開く音がした。
リロリロリン♪
リロリロリン♪
それと同時に、時計のアラームも、部屋に響いた
#時を告げる
ちょっといいのが思いつかなかったので、後で書き直すかもです…!!
50作目