霧夜

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数年前に、一度だけ。

とある花畑に、あいつと訪れた。

色鮮やかな花々がこの空間の一面を覆い尽くし、微風に吹かれて自由自在に揺れていた。

太陽の光がそこには降り注ぐことによって、花の美しさをより一層引き立てていた。

現実から切り離されたような幻想的な景色が広がっているこの空間に、俺は思わず見とれてしまった。

あいつに言われて、連れてこられた場所。

まだ、誰にも教えてないという、俺とあいつだけが知る秘境の地。

「...この景色を...お前に見せたかったんだ...。」

隣に立つあいつが、珍しく微笑みながら、嬉しそうにそう言った。

この時、俺にとって世界に一つだけの、大切な思い出が出来たんだ。




#世界に一つだけ
53作目

9/9/2023, 11:57:53 AM