気づいたら、色が抜けていた。
目の前のものが色を失っていた。。
周囲の風景や人の色を見い出せなかった。
全てに飽きてしまった。
何も楽しくなくなった。
退屈と凡庸が私の日常になった。
それでも私は、
正しい色を知っていた。
だから正しいふりが出来ていた。
太陽は赤、空は青、雲は白、葉は緑、栗は茶、
夜は黒、ひまわりは黄、桜は桃、ぶどうは紫、
正しく分かることができた。
色が抜けた世界に色を塗れた。
それで十分だと思っていた。
ふと気づいたら、
君の色が抜けていた。
色を塗ろうと思った。
君の色は何色だっけ。
肌の色は何色だっけ。瞳の色は何色だっけ。
髪の色は何色だっけ。唇の色は何色だっけ。
君の鞄は何色だっけ。君の靴は何色だっけ。
君の声は何色だっけ。君の心は何色だっけ。
君の色が分からなかった。
君に飽きを感じていた。
君に色を見い出せなかった。
それがとても悲しかった。
何が正しいのか分からなくなった。
【無色の世界】
華やかな時は、
あっという間に過ぎた。
木々は新芽をつけ始め、
道端には花弁の山ができている。
人はそれを気にもとめない。
容赦もなく花弁を踏みつけ、
新芽を見て終わってしまったと落胆する。
人は単純で身勝手だ。
儚いものほど価値を見出し、
終わった物には悲しいほど薄情だ。
そんな事を考えながら、
地面に広がる桃色を踏みつけた。
踏まれた色はただ醜かった。
【桜散る】
やり直したいの、全てを。
新しく始めてみたいの。
初めましてから始めて、
友達を作るの。
困った時助けてくれる。
話をたくさん聞いてくれる。
一緒にたくさん遊んでくれる。
そんな友達。
そして初めましてから、
恋に落ちるの。
優しくて寄り添ってくれて。
完璧すぎず欠点も愛せる。
何より私を愛してくれる。
そんな恋人。
そんな理想の人に出会いたいの。
きっとどこかにいるはずだから。
私も愛されてみたいから。
【ここではない、どこかで】
人生なんてロクなもんじゃない。
生まれた瞬間から位置づけが決められた、
選択肢のないクソみたいなゲーム。
そう思って生きてきた。
何一つ上手くいかなかった。
勉強も運動も容姿も性格も、
全てにおいて恵まれなかった。
そのことに早く気づきすぎてしまった。
そこからは地獄だった。
夢も希望も、未来への期待も持てない。
私は自分に価値を見いだせなかった。
周りの人を見ては羨んで、
勝手に比べて絶望する。
身勝手で悲観的、
その上自分を正当化するために
周りの人へ牙を剥く。
最低な人間だ。
お前が本当にいるのか、
私には分からない。
どうだっていいことだ。
でも、もし、本当にいるなら。
お前は私が嫌いなんだね。
責める気なんてないや、
私も理由もなく人を嫌ってきたから。
でも、1度でいいからさ、
生きていたいって思わせてみてよ。
思わせてくれないならせめて、
早くこのクソゲー終わらせてよ。
【神様へ】
それは酷く脆いものです。
とっても恥ずかしいことで、
とっても勇気がいることで、
とっても美しいことでした。
触れたら壊してしまいそうで、
でも壊さなきゃ始まらなくて、
でも壊したら全部終わりな気もして。
不安で怖くて心配で、
でもその先を期待して。
たった一言、言ってしまえば。
破滅か栄転かのどちらかで
言わなければ継続でしかない。
そんなこと分かっているけど。
でもやっぱり、私は私でしかないから。
1歩踏み出したところで、
望む未来など掴めるはずもないから。
やっぱりこの想いはしまったまま。
いつまでも、仲のいい友達のまま。
いつまでも、何も知らない君のまま。
いつまでも、知らぬフリの私のまま。
有耶無耶のままにして。
【言葉にできない】