気づいたら、色が抜けていた。
目の前のものが色を失っていた。。
周囲の風景や人の色を見い出せなかった。
全てに飽きてしまった。
何も楽しくなくなった。
退屈と凡庸が私の日常になった。
それでも私は、
正しい色を知っていた。
だから正しいふりが出来ていた。
太陽は赤、空は青、雲は白、葉は緑、栗は茶、
夜は黒、ひまわりは黄、桜は桃、ぶどうは紫、
正しく分かることができた。
色が抜けた世界に色を塗れた。
それで十分だと思っていた。
ふと気づいたら、
君の色が抜けていた。
色を塗ろうと思った。
君の色は何色だっけ。
肌の色は何色だっけ。瞳の色は何色だっけ。
髪の色は何色だっけ。唇の色は何色だっけ。
君の鞄は何色だっけ。君の靴は何色だっけ。
君の声は何色だっけ。君の心は何色だっけ。
君の色が分からなかった。
君に飽きを感じていた。
君に色を見い出せなかった。
それがとても悲しかった。
何が正しいのか分からなくなった。
【無色の世界】
4/18/2023, 2:28:39 PM