蓼 つづみ

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4/23/2026, 5:06:43 AM

母体が削られて
成立した出来事であることは理解している

その重さも軽んじない
感謝も敬意も、確かにある

それでも
生まれたかったかどうかは別ものだ
それが正しい出来事だったかどうかとも

捻れた母性に
歓喜はしない

消えたがってるんじゃなくて
無かったことになりたかった

かといって
被害者性に寄りかかるつもりはない
責を押しつけるつもりも

ただ
ひとりの弱いひととして見る

手を貸す努力はする

題 たとえ間違いだったとしても

4/21/2026, 10:50:13 AM

手から水面に落とした一滴が
どこまで波紋を広げるのかは見えない

焼石に触れた水滴は鋭い声を上げ
一瞬で消える
土に降る露は声もなく
深くまで染みていく

なにが優れているかなんて
比べようがない

題 雫

4/20/2026, 10:30:58 AM

何もいらない
これ以上、何も足さなくていい
本当は
そのままで
息ができていたはずのものばかりだ
それなのに
触らなくていいところまで触れて
整えるふりをして
静かに壊していく
小さな命が
音もなく減っていくたびに
世界は少しずつ
鈍くなる
それを
仕方ないで済ませる世界の癖が
どうしても
どうしても
わからない
だから
せめてこれ以上
何もいらない
奪わないで
壊さないでほしい
まだ
息をしているものがあるから

題 何もいらない

4/19/2026, 12:12:01 PM

人間は、結果ではなく過程を生きている存在だ。

たとえ未来を知ることができたとしても、
その途中で迷い、疑い、揺らぎながら選び続けることからは逃れられない。

それでも、もしそのような能力を手にしたなら、
危険から距離を取りたい。

壊されるはずだったものを、
壊される前に移動させたいと願う。

しかし、この思考実験を進めていくと、
ひとつの限界に突き当たる。

善意や、未来を知るという事実だけでは、
人は救えない。

なぜなら、介入には
「許される空気」と
「それを支える構造」が必要だからだ。

どれだけ強く助けたいと願っても、
突然「未来が見える」と語れば、狂人として退けられる。

相手が受け取れる状態でなければ、
どんな言葉も届かない。
社会的にも、正当性を欠いた介入は排除される。

つまり、問われているのは能力そのものではない。

未来を知る力よりも、
それを他者に届くかたちで扱う力のほうが、はるかに難しい。

では、どうすれば
「助けてよい」という空気を、
日常の中に作ることができるのか。

……あるいは、もっと俗っぽく言えば、
未来が見えるなら、いっそ競馬にでも使って、
金と権力を握ればいいのかもしれない。

そうすればようやく、
「介入する資格」が、後付けで与えられるのだから。

けれど、金や権力は「介入できる位置」を与えるけど、
それは「受け入れられる関係」を保証するわけじゃない。

どうしたら、壊されなくて済んだはずのものを助けられるのだろう。

悲しいことなんか無くなればいいのに。

題 もしも未来を見れるなら

4/18/2026, 10:48:56 AM

――転写

死後、肉体が九相図のように無へと帰するのではなく、世界へと滲み広がってゆくのならば、意識もまた消えることなく、どこかへと移ろい、転写されてゆくのではないか――その感覚の断片


境界が溶け ひとつの場となって広がり 密度が突然 変わる

触れたはずの感情は 質量として 境界を失ったまま沈み

意識は留まらず 静かにほどけ 拡大してゆく

残滓は 風のように漂い その重い広がりの中で 息をするのをやめたまま ゆっくりと沈んでゆく

消えたはずの言葉も 感覚も揺蕩いつづけ 光も 形もなく

意志も 抵抗なく押し流され 鈍い震えとして 微かに残り 霞になる

記憶の断片は 保存されず しかし 消滅もせず 通過の途中で 重さだけを落とす

そこには 音も輪郭もない ただ 落ちてゆく速度だけがある

ここでは 終わりはなく 始まりもない あるのは 流れと 密度の移ろいだけ

その残像は また別の内側で 意識の隙間を 静かに滑り込み 再生されてゆく

題 無色の世界

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