「もしも君が」
もしも君がさびしいと感じていたら。
安心して。
僕が、僕の言葉が、いつだって君のそばにいるから。
でも、どれだけさびしくても、君はこっちに来ちゃだめだよ。
僕がいるからって、こっちに来たら、
僕が悲しい。
たとえひとりになってしまったとしても、君はその命を全うしてほしい。それが、僕の最後の願いだ。
でも、もしも君が、僕のことをすぐに忘れてしまえるくらい、幸せになってくれたら。これ以上に嬉しいことはない。
もしも君が、世界でいちばん幸せになってくれたら。
僕は安心して、眠りにつくことができるだろう。
「君だけのメロディ」
この世界は美しい。
木漏れ日が、水面が輝き、花が揺れる。
静かな木陰も、夕焼け空も、この世界にはある。
美しいものなら、なんだってある。
だから、書くのをやめないで。
書いて、書いて、書き続けて。
私は、この世界でしか、あなたの作った音楽の世界でしか生きられない。もしあなたが書くのをやめてしまったら、私はもう前には進めない。
だからお願い、書くのを───。
───その曲の題名は「世界の淵」。
美しいが、途中までしか作られていない。
作者はどうしてこの曲を作るのを途中でやめてしまったのだろうか。その理由は、世界の淵に置き去りにされたままである。
「I love」
「ニンゲンしゃん!」「ん?」「だいしゅき だよー!」「ありがとう。……でも、急にどうしたの?」「あいをちゅたえるてべり、みた!」「へー。」
「ボクねー、だいしゅきいぱーいあるの!」
「えとねー、⬛︎⬛︎ちゃんでちょー、ぬいぐるみちゃんでちょー、おもちゃもだいしゅきだよー!」
それからも、しばらくの間、愛を語り続けた。
「あちょねー、」「わかったわかった!いろんなものが好きなんだね。」「んー、ちやう!」「だいしゅき なのー!」
「ニンゲンしゃん、わかったー?ボク、みんなだーしゅきだからね!」「ありがとう。」「んー!」
ふわふわで小さなからだに、沢山の大きな愛を秘めたこの子のことが、自分も───。
「美しい」「雨音に包まれて」(6/11、12)
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晴れ間が見える空。しとしと降る雨。
雨粒は虹色に輝いて、大地へと吸い込まれていく。
大地に吸収された雨たちは、美しい未来のつぼみになって、人知れず透明の花を咲かせる。
雨音に包まれたわたしたちは、虹を見上げて、どこかで咲く花を想う。
そして大切な誰かがどこかで、雨に濡れた私たちを想う。
そんなある雨の日は、とてもやさしい日。
「どうしてこの世界は」
乾いた砂の大地。降り注ぐは氷の槍。
切り裂くような風が吹くたび、やせっぽちの犬は倒れる。
微笑みを湛えた花が折れる。
やさしさはとうに消えた。
あるのは人に守られるための決まり事でできた牢獄。
檻の中で犬を嗤うは人の形をとる化け物。
理想もとうに消えた。
あるのは荒れた楽園の影。
影は荒れ地を覆い、花を枯らす。
どうして。
どうしてこの世界は。
こんなにも冷たく、息苦しいのだろう。
みんなただ、幸せに、穏やかに暮らしたいだけなのに。
もしもこの手で、この非力な手で。
世界を。
世界を、変えてしまえたら。
どれだけの人が救われるだろうか。
それとも、全てを傷つけるだろうか。
どうであれ、動かなければ。
進まなければ。