「春恋」「遠くの声」(4/15、16)
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「春恋」
春。こころ弾む季節。
鮮やかなたくさんのいろ達が、街を彩る。
あか、しろ、きいろ。
恋。こころのいろどり。
あなたを想うだけで、こころに春が来る。
さくら、こもれび、そよかぜ。
こころが冷たくなったら、恋をしよう。
だれかに、なにかに。
春よ、こいこい。
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「遠くの声」
声が聞こえる。どこか遠くで。
私を呼んでいる。どこかで呼んでいる。
私を呼ぶあなたは、誰?
私は忘れてしまった。あなたを、私のすべてを。
心のどこかで消えゆくあなたが私を呼んでいる。
「忘れないで」と、叫んでいる。
あなたが遠ざかっていく。
あなたが消えていく。
虚空を見つめる私は、あなたを忘れた私は。
誰?
考える間もなく、風が悲しみをさらっていった。
「未来図」
未来。みらい。
想像するだけで恐ろしくなる。
今をなんとかやり過ごすだけでやっとだというのに、これから起こることについて考えるともなれば、さぞかし苦しくなるだろう。
僕が今いちばんに望むことは、僕という一人間の存在を、この世から跡形もなく消し去ることだけだ。
誰からも忘れ去られ、まもなく塵と化す。
どれだけ身軽だろうか。
どれだけ楽、だろうか。
でも。
僕は今こうしてことばを遺そうとしている。
願いに反して、なぜか、こんなことをしている。
どうしてこんなことを?
なぜ僕は、誰かの見る場所で、ことばを綴る?
気まぐれかもしれない。
それとも自己満足だろうか。
でも、僕は、僕はどこかで生きることを願っている。
死という全てを飲み込む、甘い優しさに身を任せずに。
生きようとしている。
理由はわからない。
未来を見なければ、わからない。
わからないままだけれど、せめて。
笑っていられるような場所にいられたらいいな。
「風景」「ひとひら」(4/12、13)
川のある風景。
君の手には丸くて平べったい小石がひとひら。
うまく投げれば水面を飛びそうだ。
花のある風景。
君の髪に桜の花びらがひとひら。
春は君を彩る季節みたいだ。
海のある風景。
君の足元に白い貝殻がひとひら。
海は君を静かに呼んでいる。
全てをなくした風景。
君の手に壊れた世界の欠片をひとひら。
世界が遺した形見を、君はじっと見つめていた。
君だけがいる風景。
小さな君のてのひら。
かつて見た花のようだ。
この世界には、君さえいればいい。
たとえ壊れても、何度だって作り直せばいいだけだから。
だから。
君はずっと、そばにいてね。
「君と僕」
君と僕はずーっと一緒。
太陽と月。白と黒。
正反対だけど、いや、だからこそ一緒にいるんだ。
あたたかい君と一緒にいられるのなら。
僕はどこへだって行ける。
そんな気がする。
「元気かな」
「こんにちわー!ボクだよ!みんな、げんきー?ボクはげんきー!」「きょうはねー、おりがみであしょぶねー!」
おちびがお菓子の箱に向かって何か話してる。
「……何してるの?」「んー?いまねー、いんふるえんしゃ?ごっこ!」「いんふるえんしゃ……?あぁ、インフルエンサーか。」「ん!」「ニンゲンしゃんもいっちょにしゅる?」
インフルエンサーなぁ……。一体どこでそんなこと覚えたんだか。自分ですら全然知らないのに。
「じゃあ、視聴者の役でもしようかな。」「んー!」
「えーと……何作るの?」「ニンゲンしゃん、こんにちわー!おりがみでねー、おはなをちゅくるの!」「へー、楽しみだー。」
小さな手で折り紙を折っていく。小さい子どもらしく不器用だ。もどかしくも愛らしい。
折り紙……最後に触ったのはいつだっただろう。
誰とでも仲良くなれたような、そんな年齢の頃だっただろうか。
あの時の友だちは、元気かな。
……顔すらまともに思い出せない彼らのことを、ふと考えてしまった。
「ニンゲンしゃん?」「ん?」「どちたの?」「なんでもないよ。」「しょーなの。へー。」「ね!おはな、できたよー!」
「上手だね。」「あげるー!」
「ちゅぎはなにがいいー?」「鶴とか折れる?」「ちゅるー?むじゅかちいの!おちえてー!」「はいはい。」「まずはこうやって……。」
……懐かしい。こんな気持ちになるのも、悪くない、かも。