「変わらないものはない」
少し前に見た夢の話をします。
私はどうやら塾のような、大学の小さな部屋のような空間にいました。そこでどうしても理解できない物語の問題が出てきて頭を抱えています。
そんな時、ヒントなのでしょうか。不思議な映像が頭の中に流れ込んできました。
その物語には双子(?)の猫の弟「オトウトスイセン」が、兄の「アニタケノコ」に対して大きな劣等感を抱えていて、もうどうしようもない気持ちになっていました。
なので、兄をナイフで殺し、そのケジメとして自分も地下鉄に飛び込み死んでしまおうと考えました。
ですが本当は兄のことが大好きで、殺したくなんかはないんです。主人公の「〇平成吉」(みたいな名前でした。主人公の名前がわからないのも珍しい気がします)が諭して引き留めます。
そして、「崩れかけていた」世界は元に戻りました。
めでたしめでたし……かと思いきや、自分が世界を変えたことに浮かれた主人公は、自分の都合のいいような、自分を飾りつけるような有る事無い事を言いふらします。
目的は不明ですが、どうやら主人公は舞台となっている学校のような場所から出たいようです。閉塞感だったのか、それとも好奇心だったのか、彼をそうさせた原因ははっきりとわかりません。
とにかく、ここから出たいという気持ちがあったようです。
主人公は、変化の起こりやすい(らしい)渡り廊下の窓ガラスに向かって、現実世界で「嘘」と呼ばれることをたくさん言ってみました。すると彼の狙い通り、窓ガラスが開きました。
他の窓の外には明るい青空が広がっているのに、自分が開けた窓の外には真っ黒い雲のようなものが渦巻いています。
不気味に思ったのも束の間、主人公は窓の外に吸い込まれてしまいました。そしてそのまま真っ逆さまに落ちていきます。
気付けば真っ暗な景色に包まれた校舎の外に出ていました。
そして、赤黒くて大きな「嘘」の種が大量に、あちらこちらから芽吹き始めていることに気づきます。
それはそれは、不気味でした。
恐れ慄いた主人公は、なんとか戻る方法を考えますが、どこにも入り口はありません。
それに、内側にいる友達はいつも通り楽しく過ごしているようです。どうやら主人公がいなくなったことに気付いていないどころか、主人公の存在さえ覚えていないようです。
それに絶望した主人公は、より一層強く戻りたいと思うようになりました。
ここで、幸か不幸か、主人公のことを覚えている登場人物がひとりだけいることがわかります。そう、オトウトスイセンです。
「兄を殺してしまいたい」という「嘘」の気持ちを抱いたことのある彼もまた、嘘の存在を認識しているので、内気ながらも頑張ってアニタケノコ達に消えた友達のことを相談します。
そして、優しいアニタケノコ達は、忘れてしまった「主人公」を助けに行くことにしたのでした。
「でもどうやって?」
誰かが呟くと、賢いアニタケノコはこう言います。
「学校でいなくなったのなら、学校をくまなく探せばいい」
しばらく探し続けると、様子のおかしな窓がありました。
そうです。主人公が開けた窓です。よく見ると、本当に自分たちと同じくらいの年齢の少年がいるではありませんか!
そうして彼らはその主人公である少年を助け出します。
急がないといけない気がして、彼らは自分たちを梯子にして、少年に登ってもらうことにしました。
強い風や雨に邪魔されながらも、彼らは懸命に闘います。
そうしてようやっと、主人公を助けたのでした。
主人公を救い、窓を閉じたことによって、この世界と嘘の芽生えた世界を切り離すことができたのです。
めでたしめでたし……。
かと思いきや、今度は嘘をつくとそれが本当になってしまう、「人間(に似た生き物?)の世界」の話が映し出されます。
こちらの世界では、「嘘」を認識している数少ない人だけが得をしています。
例えば、「全てのテストの答えを見た」と思うだけで、その人は「全てのテストの答えを見た」ことになります。
たとえ一問も間違うことがなくても、受けたことのない授業のテストの答案と答えを知っていようとも、黙っていればバレることはありません。
だってそれが「現実」なのですから。
ですがある時、ある学校で「嘘が現実になる」ことがバレてしまい、校内はめちゃくちゃになってしまいます。
テスト中にレストランの食事が出来たり、宙に浮く教室に入れば、無理矢理踊らされるもののただでご飯が食べられたりなどなど、めちゃくちゃな嘘をつく人のせいで大騒ぎです。
そんな中、この状況に立ち向かおうとした大学生がいました。
さっきの世界の猫達のように、色んな嘘を駆使してトリガーとなった「窓」を探します。
ようやく見つけられましたが、彼はふと思いました。
「別にこの世界も、悪くはないかも……?」
そうして、彼は窓を閉じるのをやめてしまいました。
彼はめちゃくちゃな現実を受け入れることにしたのです。
嘘と現実が混在する世界は、いつの間にかあなたのすぐそばまで迫ってきているのかもしれません。
おしまい。
「クリスマスの過ごし方」
クリスマスの過ごし方……ですか。
理想ならありますよ!
例えば……。
当日はふわふわ舞う雪の中、友達か恋人と一緒に出掛けて美味しいものを食べに行ったり、映画を観に行ったり、イルミネーションの写真を撮ったり……。
でも!!!でもですよ!!!現実は!!!無情!!!
実際は!!!ひとりで病院に行って話を聞き流され!!!お金がなくて買い物はできず!!!別の病院に行って心電図検査に引っ掛かり!!!挙げ句の果てには風邪を誰かからうつされる!!!
クリスマスなのに!!!どうして?!!
まあでも?!!だれかの不幸を代わりに被っている、つまり、誰かが幸せに過ごせたと考えたら!!!それもいいかなー!!!
んなわけないだろ!!!
流石に押し寄せすぎだよ!!!
もっとゆっくり来なさい!!!
ハァ……ハァ……。
……どうしてこうなった……!
でも、昨日食べたソフトクリームが美味しかったのでヨシとします!
皆様、メリークリスマスでした!
「イブの夜」
今日はクリスマスイブ……だからといってどうということはない。「ねー!」恋愛にも有効にも無縁だから、いつも通り過ごすだけだ。「ねーねー!」もうそろそろ年末か。「ねねねー!!」
「ニンゲンしゃん?!きいてよー!!」
「ニンゲンくんは独り言中なんだから!邪魔をしちゃダメだよ!」「むー!」
「それじゃ、代わりにボクが話を聞くよ!」「ありがと。」
「きょうのよる、しゃんたしゃんがくるでちょ?」「うん?」
「ぷれぜんと もらえるかなー?」「きっとね!」「わー!」
「ボク、いいこでいるからね?⬛︎⬛︎ちゃん、いっちょにいてね?だいしゅきだからね?ね!」「当たり前だろう?たとえキミが悪い子でもボクは一緒にいるからね?」「ほんと?」「ああ!」
「それがボク達だからさ!」「ありがと!」
「それじゃあ、ニンゲンくんと一緒に寝ておいで?」「んー!」
「ニンゲンしゃーん!だっこ!!」「はいはい。」
……去年はひとりだったクリスマスイブの夜。
今年は随分賑やかに過ごせた気がする。
ふたりとも、ありがとう。
メリークリスマスイブ。
「プレゼント」
やあ!!「人間」のみんなー!!!
ボクだよー!マッドサイエンティストだよー!!
メリークリスマスイブ!!!
ボクからほんの気持ちだが、プレゼントをしようと思うんだ!
……ところで、キミ達には何を渡せば喜ぶんだい?
100点満点のテスト?美しい恋人?高価なもの?美味しい桜餅?
それとも……?
いやあ、キミ達が喜んでいるところを想像するだけでボクは幸せだよ!
宇宙を管理する側としては、個々の宇宙を幸せに長生きさせること以上に良いことはないのさ!
ところで……。
こちらを「見る」側のキミ達はどうなんだい?
このストーリーの結末を、どんな気持ちで迎えるのだろうか。
……ボク達の幸せを望み、祈ってくれているのかい?
それとも、全く逆をお望みかい?
まあいい。
……とにかく!今日はめでたい日だ!
ボクは、キミ達の幸せも祈っているからね!
そう、明日はクリスマスだ!
暖かくして、楽しく過ごしたまえよ!
それじゃあ、また会おうね!
「ゆずの香り」2024/12/22
今日は冬至だから、風呂にゆずを入れる。
……もうこんな季節か。随分早いな。
なんて思いながら、風呂に浸かる。
冬は静かで暗い。だからこそ落ち着───「ニンゲンしゃーん!!」びっっくりした!!変な声が出そうになった!
「しょれ!なにー?!」「あ、ゆずのこと?」「ゆじゅ?」
「なんでおふろいれるのー?」「冬至って言って、太陽が出てる時間が一年で一番短い日が今日なんだ。」
「で、その冬至の日にはお風呂にゆずを入れて体を清める。そういう習慣があって、そうしてるんだよ。」「へー!」
「ボクもはいっていい?」「今から?」「ん!」
「おーい、弟ー。マッドサイエンティストー。」
「呼ばれなくともいるよー!」風呂に入ってくるとかさすがに遠慮がなさすぎる……。「呼んだのはキミだろう?!」
確かに。ごめん。「まあいい!ご用件は?兄をお風呂に入れていいかとか?それならいいよ!だが、ちびっこだから取り扱いにはお気をつけてね!」はいはい。
服を脱がせてもらって、お風呂に入れられる。
されるがままのおちびを湯船で抱っこする。
……すべすべだ!落っことさないようにしないと。
小さな手でゆずを持って、それを眺めている。
ゆずってこんなに大きかっただろうか。
「ゆず、いいにおいー!」「よしよし。いい匂いだね。」
ゆずの香りが漂うお風呂で、ふたりはゆったりくつろぐ。
……いい時間だ。
「ところでニンゲンくん!」「何?」
「ずっと気になっていたのだが……。」「え?」
「冬至……昨日だよ。」
「暦でいえば12/21 だよ。」
嫌な静けさが漂う。
自分はそれを聞かなかったことにした。