「ゆずの香り」2024/12/22
今日は冬至だから、風呂にゆずを入れる。
……もうこんな季節か。随分早いな。
なんて思いながら、風呂に浸かる。
冬は静かで暗い。だからこそ落ち着───「ニンゲンしゃーん!!」びっっくりした!!変な声が出そうになった!
「しょれ!なにー?!」「あ、ゆずのこと?」「ゆじゅ?」
「なんでおふろいれるのー?」「冬至って言って、太陽が出てる時間が一年で一番短い日が今日なんだ。」
「で、その冬至の日にはお風呂にゆずを入れて体を清める。そういう習慣があって、そうしてるんだよ。」「へー!」
「ボクもはいっていい?」「今から?」「ん!」
「おーい、弟ー。マッドサイエンティストー。」
「呼ばれなくともいるよー!」風呂に入ってくるとかさすがに遠慮がなさすぎる……。「呼んだのはキミだろう?!」
確かに。ごめん。「まあいい!ご用件は?兄をお風呂に入れていいかとか?それならいいよ!だが、ちびっこだから取り扱いにはお気をつけてね!」はいはい。
服を脱がせてもらって、お風呂に入れられる。
されるがままのおちびを湯船で抱っこする。
……すべすべだ!落っことさないようにしないと。
小さな手でゆずを持って、それを眺めている。
ゆずってこんなに大きかっただろうか。
「ゆず、いいにおいー!」「よしよし。いい匂いだね。」
ゆずの香りが漂うお風呂で、ふたりはゆったりくつろぐ。
……いい時間だ。
「ところでニンゲンくん!」「何?」
「ずっと気になっていたのだが……。」「え?」
「冬至……昨日だよ。」
「暦でいえば12/21 だよ。」
嫌な静けさが漂う。
自分はそれを聞かなかったことにした。
12/23/2024, 9:54:15 AM