「イルミネーション」
「ニンゲンくん!久しぶりにボクと出かけないかい?」
この前出かけたばっかりだろ?
「そう言わずにー!行こう!」
行こうって……どこに?
「いるみねんちょん?だよねー?⬛︎⬛︎ちゃん!」「イルミネーション、だね!」
なるほど。そう言う季節になってきたっけ。でもまたなんで急に?
「キミが昼寝をしている間にテレビで見たのさ!ね、⬜︎⬜︎?」「んー!」「すごーくきれーだったの!」
「きれーだったからね、ニンゲンしゃんにもみしぇてあげたいのー!」「ありがとう。夜になったら見に行こうか。」「んー!」「ね、ね!」「ん?」「ねこちゃも、いくー?」「ニャー!」
ちっちゃい子猫にイルミネーションの美しさが分かるんだろうか……。「まあ中身はボクだから分かるさ!」「ニャー!」……なんでふたり(?)ともちょっと誇らしげなんだ?
小さな機械たちの様子をぼんやり見ているうちにいつのまにか夕方になってしまった。そろそろ出る頃か?
「そうだね!そろそろ出ようか!」「ん!」
こうしてイルミネーションを見に行くことになった。
「ニンゲンしゃー!おててちゅなごーね!」手袋をつけた小さな手で手のひらを握られる。「それじゃあボクも手を繋いじゃおうかなあ!」嬉しそうに力強くぶんぶん振られる。ちょ、おい!
「なんだい、照れているのかい?」いや、全然?「ふーん……?その割には嬉しそうだが?」やかましい。「へへっ、ごめんごめん!」「んー?」「イルミネーションが楽しみなんだって!」
「ニンゲンしゃんもいるみねんちょんたのちみでよかったー!」
「あ!あれ!きれー!」
動物を模ったイルミネーションが見える。
……なんだか懐かしい気持ちになる。「ニンゲンしゃ!みてー!かわいい!」「おやおや!本物はやはり美しいね!」
「ニンゲンしゃー!」「なに?」「おしゃしん、とってー!」「ん、いいよ。」「それじゃ、そこ、並んで!」「ん!」
「ほら、笑って!」
ふたりの笑顔は、イルミネーションよりもずっと可愛くて輝いていた。本当に嬉しそうにはしゃいで、笑って。……幸せそうで。
こっちまで嬉しくなった。
「ニンゲンしゃんも、おしゃしん!ボクがとるー!」そう言って自分のスマホを奪っていった。
「えとー、なんていうんだったけー?」
「はい、ちーず!」「とったよー!じょーず?」
低い位置から撮られた自分……ではなくこの子の顔のアップ。
う、うん。上手だよ……。「じょうずじゃ……ない?」
「上手だと思うよ……。」「ん!」
かわいく撮れているのは確かだし、まあ?いいか。
アルバムにいい写真がまた増えそうだ。
なんて思いながら、イルミネーションの光に包まれて、綺麗な夜を過ごした。
「またあちたもみようね!」「だってさ!明日もどうだい?」
「あ、あぁ。見に来ような。」「わーい!」
「愛を注いで」
「ニンゲンしゃー!おはよ!」「……おはよう。今日は普通の時間に起きてきたんだね。」「えらいー?」「うん。えらいぞ。」「にへへー。」
かわいいと思ったついでに、ふわふわの髪の毛ともちもちのほっぺたを触ってみる。相変わらず柔らかい。
「ニンゲンしゃん、ボクのことだいしゅきだねー!」「あ、うん。大好きだよー。」「ボク、かわいいもんね!」「かわいいね。」「やっぱりしょーなの!えへー!」
……きっとこの子が自分を愛されてると信じて疑わないのは、この子を造ったあの科学者が、小さな機械たちに愛を注いで育てたからに違いない。この子とその弟が、愛されていてよかった。
「じゃ、ニンゲンしゃんにあまえんぼしゅるー!」
……これからもいっぱい甘えてくれたらいいよ。
「いいねえ!ボクも混ぜてよ!」
……あんたは仕事中だろ。「そんなことを言わずに!」
冗談だよ。こっちにおいで。「へへっ!」
今日も相変わらず平和だ。
こんな日が続きますように。
「心と心」
いつだったか忘れてしまったけれど、前に書いた心のことを載せてみます*ˊᵕˋ)੭
†:.。.:+゚+:.。.:†:.。.:+゚+:.。.:†:.。.:+゚+:.。.:†
死んでしまった昔の私の心の幽霊を、何をあげても、何をしても満足しない私の心の幽霊を、ずっとずっと引き摺り続けながらでしか生きていけない
†:.。.:+゚+:.。.:†:.。.:+゚+:.。.:†:.。.:+゚+:.。.:†
こなごなの心をドブに投げ捨てた
溶ける心を薄目で見てた
†:.。.:+゚+:.。.:†:.。.:+゚+:.。.:†:.。.:+゚+:.。.:†
↓ここから新しいやつ↓
「心と心」
ボクの心に触れてごらんよ!……ほら、あったかいだろう?
それも当然!ボクの心はキミへの愛でできているからね!
……え?見えないし触れられない?
野暮ったいなあ、そんなことを言うなんて!
いいかい?心というものは、見えなくても、触れられなかったとしても、そこに「ある」んだよ。
あるだけで、暖かいものなんだ。
少しだけ、壊れやすいけれどね。
でも、ボクがずっとそばにいて、キミの心を支えるから。
寒い時には温めるから。
キミは前だけ向いて、進みたまえ!
「何でもないフリ」
「ニンゲンしゃん!たいへん!」……なになに……今度は……朝6時15分……。もうちょっとだけ寝かせてほしい……。
「な、にー……?」「たいへんたいへん!」
「おてがみがなくなってるのー!」「手紙……?」「ん!おてがみ、ないのー!」……あ、あぁ、そういえばこのおちび、前に手紙書いてたっけ。「しゃんたしゃんのおてがみー!どこー?」
そう、純粋なこの子はサンタさんを信じている。良い子にしていたらプレゼントが貰えると信じて、サンタクロースに手紙を書いたんだ。
そして、その手紙がなくなっている……らしい。
「サンタさんが来たんじゃないのか?」「えっ、ほんとー?!……でも、ボクしゃんたしゃんみてないよー?」
さて、手紙はどこにいったんだろうなー。
「ちゃんとおとどけものちないと、しゃんたしゃんにおてがみあげられないのー。」
……ふふっ。
「ニンゲンしゃん!」「……!」「なんでわらうのー!」ほっぺたをぷくぷくさせて怒っている。ごめんごめん。
……何でもないフリするのが難しくて。
まず、小さい子どもならではの純粋さに微笑ましくなった。それから、この子の真剣に狼狽える様子も可愛くて。あと、「サンタに手紙を渡した」のが……自分だから。
……つい笑みを浮かべてしまった。
「もしかしたら、おちびの弟が何か知ってるかもしれないよ?」「そかー!ニンゲンしゃん、ありがとー!⬛︎⬛︎ちゃんにきいてみるねー!」
元気に去っていった……。
「⬛︎⬛︎ちゃん!しゃんたしゃんのおてがみ、ちってるー?」
「おはよう!あぁ、アレならサンタさんに渡しておいたよ。忙しいみたいですぐに行っちゃったが、しっかり渡せたはずだ!」
「そかー!ありがと!」
……我が兄ながらかわいいね!
ボクも何でもないフリをするのが大変だよ!
……楽しみに待っていてね!
「仲間」
はぁ。みんなはいいなぁ。
仲間がいて、帰る場所がある。
そんなものはいらないって思っていた時もあった。
実際、人のいるところに身を置くとものすごく疲れるし、結末も大抵不幸になるか、僕のことなんかみんな忘れるかで。
彼らにとって僕はどうだっていい存在だ。
僕にとって彼らがどうだっていいように。
でも。
僕は誰かにとって、少しでも大切な存在になれたことはあっただろうか。好きだと言われたことはあっただろうか。みんなにとって、価値のある存在だったことが、あったのだろうか。
……全くもってない。
悲しいかな、それが現実だ。
欲しがるだけで努力もしない、そんな僕の仲間は。
ぽっかり空いた、この孤独と後悔くらいか。
でも、これでいい。
疲れずに、不幸にならずに、忘れられずに済むから。
だから、今日も僕は───
孤独を連れて歩いている。