「逆さま」
もしも私があの子だったら。
もしも昨日が今日だったら。
もしも今ごろ幸せだったら。
こんなこと、考えたことはありませんか?
現実は無情なので、いくらifを考えたところで無駄ですが……とある条件を満たせば、その「もしも」を現実のものにできる。
もしも、そんなことがあれば、あなたはどうしますか?
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今日も暇なのでネットサーフィン。
なんとなく怖い話を読みたくなって「都市伝説」なんていう雑いワードを検索。
すると、いきなり怪しげなサイトがヒット!
『発見!「逆さま」を呼び出す方法!』
「逆さま」を呼び出す方法……なんだそりゃ?
さかさまを呼び出す……なんて言われても、何が起こるかわかんないよ。
何、「逆さま」って。
面白そうだから読んでみるか。
ふむふむ……「このサイトにたどり着いたあなたは運がいい!」ほうほう……「『逆さま』はあなたのもしもを司る強い存在!」なるほど……「この情報は私とあなただけの秘密です!」……。
なんでこんなに勿体ぶるんだろう?
それだけ危険ということなのだろうか……?
まあいいや。やってみよう。
①携帯電話を2台用意する。
②手元の電話を通話状態にする。
③13秒目から話し始める。話の始め方→「逆さま、私の名前は〇〇です。私のもしもを見せてください。もしも〜〜なら、私は幸せですか?」
④話が終わったら、13秒待ったあとに電話を切る。
⑤鏡を見ると、逆さまが映る。逆さまが映ったらあなたの「もしも」が現実のものに!
……胡散臭い。似たような都市伝説が他にもあったような気がするし。やってみる価値あるんだろうか。
……でも、自分が欲まみれなのを知っているので試すしかない。
よし、やってみるか!
「携帯電話を2台」……よく考えたら意外と現代的だ。新しい神様なのかもしれない。
……通話状態にして、13秒待つ。
「さかさま、わたしのなまえは〇〇です。わたしのもしもをみせてください。もしもわたしが『さかさまにあえたなら』、わたしはしあわせですか?」
……話が終わったら、13秒待って電話を切る。
鏡を見る。特に何もない。
あ、失敗か。
「つまんね〜〜」とか言いながら後ろを振り向く。
天井に女か男かもわからない人がぶら下がって(?)いて変な声が出そうになった。
「あ、気づいちゃいました?どうもごきげんよう。私が──「逆さま?!!」「あ、ハイそうですが……ちょっとイントネーションが違いますね。」「は?」
「私は「さかさま」ではなく『逆(さ↑か)』。人呼んで「逆さま」です。どうぞよろしゅう。」
「110」「ん……?」「警察呼ぼうかな、と思って。」「ちょっと!!勝手に呼び出しておいて!!通報とは!!!なんたる無礼ですか?!!」「あ、ごめん不審者と間違えた」「えぇ……?」
「ほら、どうです?逆さまが直々に対応した時のお気持ちは!」「思ったよりうるさい」「すみません」「幸せでしょう?!」「えー……?」「幸せだと言いなさい!」「はいはい。」
「せっかく面白い「もしも」だと思ったらいきなり通報されそうになるなんて……。まあでもいつものよりマシか〜……。」
一体彼(?)はどんな「もしも」を聞いてきたんだろう。
「そういやなんだけど、逆さまはこんなとこで時間潰してて大丈夫なの?」
「えぇ。問題ありませんよ。我々は『逆』という組織ですから。ひとりで全部対応しているわけではありませんのでご安心を。」
「ふーん……。」
「ところで」「ん?」「どうです、私に会えて幸せですか?」
「全然。会うだけじゃ幸せにはなれん。」「そうですか……。」
「それでは、私はこれで失礼───「一個ぐらい願い叶えてけ!」「えー?!」「暇だから!」「えぇ……?我々はもしもを聞くだけですが、それでよければ……。」「いい話し相手ができた。」
「もしも逆さまがお前一人になったら、私は幸せですか?」
「ちょっと!!!それは聞かなかったことにしますからね?!!あまりにも非道ですから!!!」「え?つまんな。」「……。」
「それじゃあ!!!これで最後にしますから!!!もしもを言ってみなさい!!!」「うーん。」
「もしも……もしも逆さまと友達になれたら、私は幸せですか?」「……!」
「その願い、聞き届けました。それでは……。」
「……じゃあね、逆さま。」
〜〇日後〜
「おはようございます。突然ですが、編入生の紹介です。」
マジか。マジで来た。
「おはようございます。編入生の『逆』です。以後、お見知り置きを。」
逆さまと友達になったら。
自分はどうなるんだろう。
「おはようございます。どうですか?幸せですか?」
「眠れないほど」
疲れた。今日もとても疲れた。
しっかり眠れないほどに、疲れてしまった。
何にも疲れるような要素なんてないのに、どうしてこんなに?
自分でもよく分かっていない。
そんな時には自分自身に聞く。
何かあった時はこうやって、不貞腐れきったもうひとりの自分に尋ねてみる。
「何か嫌なことがあったの?」
「どうしてこんなに疲れているの?」
「その涙はなんで流れているの?」
他人事みたいに、聞いてみる。
もうひとりの自分はこっちを見ずに答える。
「分かってるくせに。なんで嫌なことほじくり返すかな。」
お互いのために聞く。だってどっちも私だから。
「疲れすぎて睡眠不足のスパイラルになってる。イライラする。」
「誰も話を聞いてくれない。」
「もはや理由もわからず泣いてる。」
こういう時は美味しいアイスとか、ハーブティーとか、好きな音楽で自分を甘やかして、ゆっくりする。
そして、好きなだけ眠る。
……いつもこんなふうに休みたいのはやまやまですが、そううまくいかないのが現実です……。
皆様も無理なさらず、寒さに負けずにお過ごしください。
「夢と現実」
嫌な夢を見て目が覚めた。どんな夢だった……だろうか。
あっという間に忘れてしまったけれど、とにかく悪い夢だった。
こんなに寒いのに汗までかいている。
空気を吸いに起きようとした時気づいた。
小さな子どもの足が自分の胸の辺りに乗っかっていることに。
……全く、どんな寝相だよ。
起き上がろうとしたが、ふとこの子を起こさないかどうかが気になった。自分が動いたら自動的にこの子も動く。起こしたら可哀想だけれど、かといってこのままだったら自分が苦しい。
思い切って体を起こした。ふぅ、息がしやすい。
おちびはベッドで眠ったままだ。よかった。ところで……。
あんたは何やってんだ?
「なんだか苦しそうな声が聞こえてきた気がしたから、キミの悪夢でも録画してみようと思ってね……って冗談だよ?」
人の苦痛を茶化すな。「悪かったって!」
「……にしても、いい寝顔だと思わないかい?」
そう言いながら優しい眼差しで兄を見つめている。
「きっといい夢を見ていることだろう。」
……そうだな、こんなに安心した様子で眠ってるんだ。
きっと幸せな夢でも見てるんだろう。
夢……か。こいつと出会ってから、夢と現実の区別がつかなくなりそうなことばかり起きている。心を読まれたり、宇宙やらあの世やらに連れていかれたり。いまだに意味わかんないや。
もしかしたら、今この瞬間だって夢なのかもしれない。現実はないかもしれない。もしもこれが夢だったら……なんてことを考えても忘れるんだろう。
「ニンゲンくん」「?」「水、飲まないのかい?……悪い夢を見て、汗をたくさんかいただろう?」ああ、そうだな。
……こっちのあったかい世界が現実でよかった。
洒落臭いから実際に口にはしないけど───。
これからもよろしく。
「さよならは言わないで」
「さよならなんて言わない」貴方はそう言った。
君に寂しい思いをさせたくはないから、離れることもないよ。
そんな理由を話しながら私に微笑んでみせた。
でも、いつか終わりが来ることは分かっていたの。
悲しいけれど、別れの時は必ずやって来る。
その時は、「さよなら」の一言が欲しいと思った。
さよならと言わないことを求めながらそう思うのは我儘でしたか?……ええ、そうだったに違いないわ。今なら分かるの。
貴方はさよならも言わないでどこかへ行ってしまった。
ボロボロになった私のからだと、寂しさだけが残った。
あまりにも虚しかった。
悲しかった。
でも、いつかまた逢えることを知っているから。
私は、それでいいの。
ぽっかり空いた貴方の形をした穴を心に抱きながら、私はその時をいつまでも───待っているの。
「光と闇の狭間で」
闇に足をすくわれ、光に弄ばれる。
抱いた希望もいつかは絶望に変わって、全てが思っていた通りにいかなくて。
とても苦しくて。
それでも。それでも生きていかなくちゃいけない。
こんな現実を見なきゃいけないことも、これが真実であることも苦しい。
命ごと何もかも放り投げることもできないし尚更、ね。
でも、だからこそ。
みんなにはささやかな幸せを知っていてほしいんだ。
どんなだっていい。
穏やかな陽の光。きらめく水面。鳥の囀り。花の囁き。
温かいスープ。美しい旋律。優しい言葉。素敵な笑顔。
キミが、みんなが光と闇の狭間でもがいているのをボクだってよく分かっているよ。
だからね。
ボクはキミを、みんなを救う光になりたいな。
……なんてね、えへへ!