「さよならは言わないで」
「さよならなんて言わない」貴方はそう言った。
君に寂しい思いをさせたくはないから、離れることもないよ。
そんな理由を話しながら私に微笑んでみせた。
でも、いつか終わりが来ることは分かっていたの。
悲しいけれど、別れの時は必ずやって来る。
その時は、「さよなら」の一言が欲しいと思った。
さよならと言わないことを求めながらそう思うのは我儘でしたか?……ええ、そうだったに違いないわ。今なら分かるの。
貴方はさよならも言わないでどこかへ行ってしまった。
ボロボロになった私のからだと、寂しさだけが残った。
あまりにも虚しかった。
悲しかった。
でも、いつかまた逢えることを知っているから。
私は、それでいいの。
ぽっかり空いた貴方の形をした穴を心に抱きながら、私はその時をいつまでも───待っているの。
12/4/2024, 9:32:13 AM