「すれ違い」
ここは魔法使いが全てを支配する世界。
彼らは神に近づこうとあるものを作りました。
それは───。
「ようやく完成したね!これで我々は飛躍的に天へと近づける!さすがは我ら魔法使い!」
「持つ者も持たざる者も、これでひとつになれる!」
「この魔法システム『Babel』を使えば、きっと皆幸せになれるだろう!」
魔法システム『Babel』は、魔法使いの善意によって創り上げられたものです。すべての人を繋ぎ、共有し、近づける。
そうすることによって、世界平和が実現できると彼らは信じ、『Babel』を世界に解き放ちました。
はじめはよかった。
興味を持った魔法使いと人々が、日常の些細なことを微笑ましく分かち合っていました。
それはそれは、幸せそうでした。
このまま皆で神になれる日もそう遠くないと思わせるほどに。
しかし現実は違いました。
人々はひとつになろうとすればするほど、ばらばらになっていく。美しい虹を架けるのではなく、混ざって醜い色の欠片を作る。
歪み合い、罵り合い、必要のない分断と苦しみを生み出す。
無限にある正しさをひとつにまとめようとして、歪んだ争いが生まれ続ける。落とし所のない、争いが。
魔法使い達はとても悲しみました。
平和だった世界が、平和のために作ったBabelのせいで壊れていく様子を、ただただ見つめることしかできませんでした。
こうなるのが分かっていたら、最初からこんなものを作らなかった、きっと彼らはそう思っていることでしょう。
ですが、これは神からの罰ではありません。
なぜなら、神たる私は何もしていないからです。
見なくてもいいものが見られるようになることは、果たして本当に幸せを運ぶのでしょうか?
私ですら、分かりません。
「秋晴れ」
やわらかな日差し。あたたかな猫の微笑。
ふんわり浮かぶ羊雲。高らかな小鳥の朝。
ひんやりとした、金木犀の香るそよ風。
街を彩る秋桜。季節外れの曼珠沙華。
今日は秋晴れです。
だんだんと世界を淡い色に変えていく、秋の晴れた日です。
ほら、あれだけ鮮やかだった空も、今では幻です。
芽吹いた子ども達も、こんなに大きくなりました。
秋晴れは、今度何を運んでくるのでしょう。
穏やかな冬でしょうか。
それとも、全てを無に還す木枯らしでしょうか。
それは、秋晴れのみぞしる秘密です。
「忘れたくても忘れられない」
後悔。罵声。喜び。悲鳴。
忘れたくても忘れられないものたち。
贖い。償い。贖罪。罰。
自分に課したものたち。
知識。温もり。希望。夢。
今を生きる彼らに託したものたち。
優しい彼を苦しめた過ち。
暖かく柔らかい、小さな手のひらとほっぺた餅。
彼女の尊い自己犠牲。
そして、奇跡と呼ぶべきこどもたちとの再会。
私には忘れられない、いや、忘れてはいけないものがたくさんある。だからこそ、私は私の全てを、彼らの苦しみを、犠牲を───背負わなければ。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
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P.S.
明日コンサートに行きます!めちゃくちゃいい席です!
とても楽しみ!きっと忘れられない思い出に!!なる!!!
皆様も良い週末をお過ごしください♪
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「やわらかな光」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
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「やわらかな光」
……朝だ。朝が来た。
当たり前なのか、そうでないのかも分からないが、あの世にも朝って来るんだね。
「お父さん、おはよう。」……まだ寝ているのか。
「⬛︎⬛︎ちゃん、おはよ!」小さい子は早起きだね。
「おはよう、⬜︎⬜︎。」
「朝だねー。まさかここで一晩過ごすことになるとは。……あ、そういえばボク達の見張りの彼はどこに行ったんだろう?見かけないけれど。」
『ここですよ。』げっ、植物から声がする!
『特殊な空間からあなた達を見張っています。』
「全く、キミもボクみたいなことをするんだね!」
「ま、今のところ問題は起こしていないから安心してくれたまえよ。ボクにしては珍しく、大人しい振る舞いをしているだろう?」
『……そうですね。喧嘩は見逃しておりませんが。』
「ケンカなんて些細なことさ!第一、ボク自身はああいうの言われ慣れているからね。ただ、兄が心配になっただけで。」
「んー?」「ん?なんでもないよ?」「そかー!」
『何かあればまたご相談ください。』
「ばばーい!ちゃんとあしゃごはん、たべてね!」
「ありがとう!それじゃあ失礼!」
通話(?)はここで終わったみたいだ。
「……。ふたりとも早いね。まだ早朝だよ?もう少し寝ていてもいいと思うけど……。」「おとーしゃん!おはよ!」「起きなきゃダメかなぁ……?」「お!き!てー!」「……はい。」
「あしゃごはんだよー!」「……そうだね、作らなきゃだね。」
「ボクも手伝うよ!」「ボクも、おてちゅだい!するー!」
「ふたりともありがとう。」
昨日の鋭い眼差しとは打って変わって、父の目にはやわらかい光が灯っていた。
……懐かしいな。こんなに安心したのはいつぶりだろう。
思えば、兄がいなくなった後から父はずっと、どこか焦ったような、不安そうな顔ばかりしていた。
でも、ようやくこの顔が、安心したいつものお父さんが見られた。ボクは、いやボク達は幸せ者だね。
本当に、会えてよかったよ。
お父さん、ありがとう───「寝てる!!!」
「しかも⬜︎⬜︎まで二度寝を?!!」
仕方ない。朝ごはんはボクが作ろう。
……こういう親孝行も、いいよね?
「鋭い眼差し」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
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「鋭い眼差し」
機械であるボク達が気に入らないという、元宇宙管理士の少女。彼女に酷いことを言われた兄はこんなに高い所まで来てしまった。とりあえず回収したがそのまま寝てしまうとは……。
宇宙管理機構でもいまだに言われるようなことだ。
「機械のくせに」「生命体の模造品の分際で」
「自我を出すな」「黙って仕事をしておけ」などなど……。
はぁ、全く!よく言われることだとはいえ、思い出すだけでだんだん腹が立ってきた。こんなことばかり言われたら、いくらボクでもさすがに少しは傷つくよ。
だからこそ、兄の気持ちがよくわかる。
それはそうと……勝手にお父さんのいたところから出ていってしまった。はてさてどう言い訳したものか。
とりあえず歩きながら考えようか。
下り坂ばかりで思わず転びそうになる。おっと、危ない。
あの子が変なことを父に吹き込んでいなければいいが……。
そうだ。
そういえば、お父さんはボクと彼女のどちらを信じるんだろう。
ボクを信じてほしいのはやまやまだが、昔の過ちもあることだから、彼女に対して強く出られずにボク達が我慢する羽目になるかもしれない。
どうしたものか。
ボクは我慢が得意だが、小さい兄はきっと違う。
これから先、兄が悲しみ続けるかもしれないと思えば……ボクまで辛いよ。
そんな時、下の方から足音が聞こえてきた。
随分と急いでいるみたいだが、上には崖以外なにもない。
一体何のために───「⬜︎⬜︎!⬛︎⬛︎!どこだ?!」
お父さん。ボク達を探しに来たの?
「⬜︎⬜︎……!⬛︎⬛︎……!」声が掠れている。
ボクも応えなくては!
「お父さーん!ここだよ!」「⬛︎⬛︎!」
「どうして勝手に出ていったんだ!こんな危ないところに、どうして!」「……ごめん。」
「ボクは⬜︎⬜︎を探しに出たんだ。すぐ見つかると思っていたが意外と時間がかかってね。遅くなっちゃったよ、ごめんね。」
「⬜︎⬜︎を探しに……?」「あ、うん。」「どうして?」
「ちょっと、ケンカしちゃったみたいでね。」
「あぁ、またあの子か……。」
「え、『また』?」「うん。」
「彼女から話を聞いたんだ。君たちに酷いことをされたって。君たちからもちゃんと話を聞かなければと思ったのにふたりともいなくて、とても嫌な予感がしたから探しにきたんだよ。」
「お父さん……。手間をかけさせてごめんね。」
「いや、気にしないで。ふたりとも無事でよかった。本当に安心したよ。ただ……。」「ただ?」「⬜︎⬜︎が心配だ。」
「もちろん、君のことも心配だよ?でも、この子はまだ小さい。だからなおさらケアしないと可哀想だ。もしも心に傷を作ってしまったらと思うと、それだけで苦しい。」
「はぁ……漸く戻ってこられたね。ニンゲンさんたちも来ているよ。ほら、もう晩ご飯の時間だ。ひとまず何か食べて休もうか。」「へへ……ありがとう、お父さん。」
兄を起こして夕飯に取り掛かる。
ボク達に対して暴言を吐いた彼女が平然としているのを見て、ボクは、おそらく兄も夕飯の味がまるで分からなかった。
夕飯の後、ボク達と彼女がお父さんの部屋に呼び出される。
兄はいまだに不安そうだ。
「どうして君たちが呼び出されたかわかるね?」
「もちろんです!この子達が酷いことしてきたから───「酷いこと、とは?」
父のこんなに冷たく鋭い眼差しは見たことがない。
ボクまで思わず立ち竦んでしまった。
「ねぇ、⬜︎⬜︎。」「おとーしゃ……しぇんしぇ……。」
「おや、どうしていつも通りお父さんと呼んでくれないの?」
「だって、だってボクとしぇんしぇーは……かぞくじゃないから。」
泣きそうな目をして父を見上げる。
「ほら、⬜︎⬜︎〜。抱っこしようか!」「ぎゅ〜っ。」
「えへ、へへへへ!おとーしゃん、だっこー!!」
「⬜︎⬜︎、抱っこ、嬉しいね?」「んー!」
「私も嬉しいよ。だって私たちは、家族だからね!」
「かじょく?ほんとに……?」「当たり前だろう?家族じゃなければこんな風に抱っこもしないよ?」
「じゃあ、⬛︎⬛︎ちゃんも!だっこ!ちてあげて!」
「そうだね、⬛︎⬛︎。抱っこだ〜!」「さっき散々してもらったじゃないか!へへへ!」
「あの!さっきからなんなんですか?!気持ち悪いもの見せつけないでください!不愉快です!」
「まだ分からない?」「は?!」
「この子達はとても優しい子だよ。基本的に全ての存在に対して友好的に接するプログラムで動いているとはいえ、この子達は飛び抜けてフレンドリーで可愛い。」
「それに、親の欲目もあるだろうけれど、とても純粋で甘えん坊で、どこをとっても愛せる。そんな子達だ。」
「この子達が君を傷つけるような真似は絶対にしない。もしそんなことがあるとしたら───君に原因があるだろう。」
「なんで私が悪者にならなきゃいけないんですか?!意味わかんない!私はただみんなが思ってることを代わりに言ってあげただけじゃない!機械のくせにって!」
「そうか。それじゃあ、彼らが機械じゃなければ何も言わなかった?」「そんなの分かりません。でも、なにも言ってあげなかったと思います。だって博士の子どもなんですから。」
「ねえ、さっきからどうしてそんなに高圧的なの?」
「だって、強いものが正義なのが当たり前じゃないですか!私は一番強くて正しい!それを教えてあげたかっただけです!」
「そんなの、正しくも強くもない。君も分かっているはずだろう?前にも話さなかったかな。私は生前、生命体も機械も仲良くできる宇宙管理機構を作りたかったと。」「あ……。」
「『機械と仲良く』なんてあり得ないと、機械を埋め込まれたせいで命を落とした一部の子からは反対もあった。」
「それでも、私は生き物も機械も、皆のための居場所を提供するために努めてきた。そのうち少しずつ理解してもらえるようになった。とても安心したよ。」
「だが、君には分かってもらえなかったようだね。君は強いこと、正しいことにこだわって、小さな子や珍しい子をいじめていた。そうだろう?」
「君は私にいい顔ばかりするけれど、私は知っているよ?」
「あ……その、ごめんなさい。」
「謝るのなら君が今までいじめてきた彼らに謝りなさい。」
「君が強さにこだわる理由は否定しない。けれど、誰かを守れもしない力に意味はあるのかい?その点でいえば、君は───「ストーーーーーーップ!!!!」
「これ以上言ったら喧嘩になるから!!!やめようよ!!!」
「⬛︎⬛︎……ごめん。」「謝るのなら彼女に、ね?!」
「あ……ごめんね。」「……私も、ごめんなさい。」
「さて、みんなもう気は済んだかい?もう寝る時間だから、部屋に戻ろう!」
「おやすみ……えーと、名前は……。」「私、◆◆。」
「◆◆、おやすみ。」「今日はごめん。おやすみ。」
彼女は部屋に帰っていった。
「おとーしゃ……ねむいのー……。」
「そうだね、いっぱい歩いたもんね。」「んー……。」
「偉かったねー、泣くの我慢して。」「んー!」
「お父さん。」「ん?」「今日さ、昔みたいに一緒に寝ようよ。……ボクの寝相、随分と良くなったんだよ?」
「はは、そうか。それじゃあ一緒に寝よう!」
久しぶりに家族で眠ったベッドは、すごく暖かかった。
いっそのこと、この時間がずっと続けばいいな……なんてね。