Frieden

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「すれ違い」

ここは魔法使いが全てを支配する世界。
彼らは神に近づこうとあるものを作りました。
それは───。

「ようやく完成したね!これで我々は飛躍的に天へと近づける!さすがは我ら魔法使い!」
「持つ者も持たざる者も、これでひとつになれる!」

「この魔法システム『Babel』を使えば、きっと皆幸せになれるだろう!」
 
魔法システム『Babel』は、魔法使いの善意によって創り上げられたものです。すべての人を繋ぎ、共有し、近づける。

そうすることによって、世界平和が実現できると彼らは信じ、『Babel』を世界に解き放ちました。

はじめはよかった。

興味を持った魔法使いと人々が、日常の些細なことを微笑ましく分かち合っていました。
それはそれは、幸せそうでした。

このまま皆で神になれる日もそう遠くないと思わせるほどに。

しかし現実は違いました。

人々はひとつになろうとすればするほど、ばらばらになっていく。美しい虹を架けるのではなく、混ざって醜い色の欠片を作る。

歪み合い、罵り合い、必要のない分断と苦しみを生み出す。
無限にある正しさをひとつにまとめようとして、歪んだ争いが生まれ続ける。落とし所のない、争いが。

魔法使い達はとても悲しみました。
平和だった世界が、平和のために作ったBabelのせいで壊れていく様子を、ただただ見つめることしかできませんでした。

こうなるのが分かっていたら、最初からこんなものを作らなかった、きっと彼らはそう思っていることでしょう。

ですが、これは神からの罰ではありません。
なぜなら、神たる私は何もしていないからです。

見なくてもいいものが見られるようになることは、果たして本当に幸せを運ぶのでしょうか?

私ですら、分かりません。

10/19/2024, 1:11:56 PM