「やるせない気持ち」
???にて───────────────
私がここに来てから───私が死んでから一万年程。
これまでずっと、救いたかった人たちを探しながら、せめてもの償いを続けてきた。
恥ずかしがり屋の少年。
笑顔が素敵な少女。
小さくてかわいい子ども達。
皆私のせいで苦しんで、そしてその末にこの世界へやって来た。
私に彼らを救うための力と、勇気が足りなかったせいだ。
だからせめてここでは、苦しまずに、少しでも幸せに暮らしてほしいと思い、彼らを探し集め、暮らしを支えている。
お腹がすけば食べ物を与え、悲しみを感じたら歌を歌い、それから家族のもとに帰りたいと言えば彼らの家族を探した。
……こんな贖罪など、きっと自己満足に違いないだろう。
私に力と少しの勇気があれば、助かったはずなのに、何を今更。そう思われても仕方ない。
だが、これは私の受けるべき罪であり、唯一の救いだ。
だから私は今日も、彼らと共にあり続ける。
───だが、心残りがひとつ、いやふたつある。
私の研究室で生まれた、双子のきょうだいのことだ。
ひとりは721兆年前に、そしてもうひとりは現在進行形で辛い思いをしている。
のんびり屋で甘えん坊の上の子は───私が一番救いたかったあの子は───まだ見つかっていない。
確かに今までに、救いたかった彼らを全員見つけられたわけではない。どこかで寂しい思いをしている子が必ずいるんだ。
そう思って彼らを、私の子どもとも言えるその子をずっと探し続けている。
どこか知らないところで、幸せに暮らしているのなら、それで十分だ。でも、きっと甘えん坊のあの子は、どこかで迷子になって、一人寂しく泣いている。
そう思うとあまりに可哀想で、居ても立っても居られなくなる。
なのにまだ見つけられずにいるんだ。
……我ながら、なんて酷い親なのだろうか。
それから、元気でしっかり者の下の子は、今でも現世で元気に仕事をしている。
仕事をしているとはいえ、あの子もまだ小さな子どもだ。
甘えたい盛りの小さな子どもを、私はひとり置き去りにしてしまったんだ。
本当はもっと、わがままを言いたかっただろうに。たくさん泣きたかっただろうに。あの子は私に気を遣って、元気に振る舞い続けていた。
子どもに気を遣わせてしまうなんて、やはり私は酷い親だ。
大好きな双子のことを考えるだけで、やるせない気持ちになる。彼らの苦しみの原因がすべて私にあると言うのに、本来なら彼らのほうがもっと苦しいはずなのに。
私は、此岸の世界から持って来た双子の写真を見て、ただただ項垂れることしかできなかった。
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!
多分ニンゲンくんの事情聴取も終わっている頃だろう。あとは何度か取り調べを繰り返して、いつか来る裁判の時を待つだけだね。
……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直さなければ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
あとどこに書くのがいいのかもわからないよぅ……(´•̥ω•̥`)
────────────────────────────────
「海へ」
この夏、母が死んだ。
美しく快活で、器用な母が死んだ。
何年もの間病気だったから、覚悟していた。つもりだった。
覚悟もしていたし、準備も整えてきたつもりだったけど、何もかもうまくいかない。手続きやら何やらに追われて悲しみに暮れる暇もない。
ボーっとしていたのか、それともセカセカ動いていたのかも分からないまま、ぼくは母の遺骨を受け取り終わっていた。
あまりにもあっけなかった。
その帰り道、母が生前言っていたことをふと思い出した。
『私が死んだら、お骨を海に流してちょうだい?』
なぜそんなことを頼むんだと思い聞くと、もっと広い世界を見て回りたいからだと母は答えた。それから、海に行けば、またみんなに会えると付け加えた。
次の休みの日、ぼくは暖かい海へ向かった。
きっと母は北の海よりも、こういう珊瑚礁のあるような海の方が好きだろうと思ったからだ。
散骨をサポートするサービスの人たちがぼくを出迎え、労ってくれる。意外とカッチリしすぎていない雰囲気だったから、ぼくは少しほっとした。
説明を受けたあと、小さなボートに乗って海の真ん中まで来た。
ぼくはこの海と、スタッフの人たちと、それから母に挨拶した。
こんにちは。よろしく。ありがとう。そして、さようなら。
だんだんと、母だったものが海に溶けていく。
だんだんと、母がいなくなっていく。
だんだんと、母を忘れてしまう。
でも、これは母の望んだことだから。
ぼくにしか叶えられない願いだから。
そう言い聞かせて、散骨を終わらせた。
なんとか用事は終わったはずなのに、気が抜けてしまって何もできない。ぼくは島を少し見て回ったあと、最後に海を見た。
母を溶かした海は、透き通っていて眩しかった。
ここを離れるのが名残惜しくてできない。
でも、ぼくも進まないと。母が一歩進んだように。
ぼくは海風を背中に受けながら、砂浜を離れた。
どこかで母が、手を振っていたような気がした。
「裏返し」
「ほら、⬜︎⬜︎、そろそろ寝る時間だよ。遊ぶのをやめてお片付けしようね?」
「んー。やっ!」
「どうしたのさ?急にわがままになって。」
「ボク、もっとあしょぶー!」
兄はほっぺたをぷくぷくさせてまだ遊ぼうとする。
「はぁ、全く……。」
仕方がないので端っこのおもちゃから片付けるか。
「まだあしょぶのー!」
「もう寝る時間だって言っただろう?!」
「やだー!」
「⬛︎⬛︎ちゃん、なんでおこるのー!ボク、おこるのやだなの!」
「キミが怒られるようなことをするからだよ!」
「むー!⬛︎⬛︎ちゃん、きらい!」
そっぽを向いていじける兄の小さな背中が見える。
……こうなったらどうにもならないな。
兄があっちを向いているうちに片付けようか。
さてさて、まずはこっちの積み木を───「?!!!」
足の裏に言葉にできないほどの痛みが!!!
ボクはその場でのたうち回っ───痛すぎる!!!
「ぃぃ……!!!」
「んー?……⬛︎⬛︎ちゃん?」
「⬛︎⬛︎ちゃん!どちたのっ?!ねー!」
「……だ、大丈夫……。」「ねー?ねー!!」
「⬛︎⬛︎ちゃ!!」「……夜だから大声出さないの!」
ボクの話も聞かずに扉を叩き始める。ちょっと!やめてってば!
「ねー!⬛︎⬛︎ちゃんたすけてあげてー!!」
兄の声を聞いてこの部屋の管理人くんが入ってきた。
「どうされましたか?」
「⬛︎⬛︎ちゃん、たいへんなのー!」
「いや、ほんとにだいじょぶだからさ……。」
セリフだけを見ていたら悲しいシーンでしかない。
……あ、そうだ。ちょっと遊んじゃおう。
「⬜︎⬜︎、ごめんね。ボクはもう……ダメかもしれない。」
「⬛︎⬛︎ちゃん?⬛︎⬛︎ちゃん!!ねー、ねぇ!」
「……。」
「⬛︎⬛︎ちゃん、さっきはごめんね。ボクね、ボクね、⬛︎⬛︎ちゃんねっ。」「嫌いだよね……?」「んーん!」「本当は?」「だいすき」「即答……うーん我がきょうだいながらかわいいな」
「うおー!急に元気になってしまった!!!もう大丈夫だよ!!!だって……。」「だって?」「コレ踏んだだけだから」
「これ?」
そう言って兄が拾い上げたのは、小さなおもちゃのブロックだった。そう、踏んだらめちゃくちゃ痛い、あのブロックである。
「……わかった?こうならないように、ちゃんとおもちゃはお片付けしようね?」「うん!」「忠告は愛情の裏返しさ!ボクがキミを嫌いになることなんかないから、安心してね!」「ん!」
「あぁ、管理人くん!お騒がせしてすまなかった!一応見ていただきたいのだが……ボクの足の裏に、穴とか開いていないよね?」「はい、問題なしです。」「それならいい。」
「皆さん、そろそろ消灯ですので、お片付けを終えてから就寝なさってください。」
「ありがとう!それじゃあおやすみ!」「ばばーい!」
……今日も今日とて大変だった!まだ寝かしつけが終わっていないからもう少し夜は続きそうだが、ひとまず落ち着いたからよかったよ。
「⬛︎⬛︎ちゃん、おやすみ。」
「⬜︎⬜︎、おやすみ。」
そういやさっき足元を見て気づいたが、ボクの靴下も裏返しだったよ。あれで一日中過ごしていたのか……。もう明日から靴下を履かずに過ごそうかな……?
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!
多分ニンゲンくんの事情聴取も終わっている頃だろう。あとは何度か取り調べを繰り返して、いつか来る裁判の時を待つだけだね。
……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直さなければ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
あとどこに書くのがいいのかもわからないよぅ……(´•̥ω•̥`)
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「鳥のように」
金糸雀のように綺麗な歌声があれば
あなたの耳を満たせたのかしら
孔雀のような翅があれば
あなたの目を彩れたのかしら
白鳥のような気高さがあれば
あなたを虜にできたのかしら
烏のような賢さがあれば
あなたを支えられたのかしら
鸚鵡のような好奇心があれば
あなたとお話しできたのかしら
燕のように仲間がいれば
あなたに春を運べたのかしら
鶏のような体があれば
あなたの血肉となれたのかしら
蜂鳥のような小ささがあれば
あなたに可愛がられたのかしら
雀のようにか弱ければ
あなたに守られたのかしら
鳥のように あの鳥のように飛ぶことができたら
私はあなたに見てもらえたのかしら
「さよならを言う前に」
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敵国を撃ち落とすために戦地に赴いた貴方。
この戦いが終わったら、結婚しようと約束をしました。
今、貴方はどうしているのでしょう。
焦げたにおいと人々の泣き声で溢れる焼けた街で、なんとか暮らしています。昨日やっと水にありつきました。
かつて貴方に褒めてもらった私の黒髪も、燃えて短くなってしまいました。貴方に褒めてもらった白い肌も、火傷で真っ赤になってしまい、もう元には戻りません。
私の命はもう長くないでしょう。
家の庭だった場所に咲く朝顔よりも、きっと短いのでしょう。
貴方と連絡がつかなくなってどのくらい経つのでしょうか。
1ヶ月?半年?それとも1年以上?
貴方は生きているのでしょうか?
それとももう、雲の上におられるのですか?
もしそうであれば、もうすぐ会いに行けそうです。
もし貴方が生きているのであれば、私がさよならを言う前に、最後の我儘を聞いてくださいませんか?
私のことなど忘れて、もっと素敵な方と結ばれてください。
そして暖かく幸せな家庭を築いてください。
どうか、どうか最後まで貴方のままでいてください。
焼け野原 燃ゆる家々 焦げし日々
残りしものは 貴方の微笑
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君が遺した最後の手紙を読んで、僕はただ手を震わせることしかできなかった。
もしあと1日でも早く帰っていたら、君はもっと安心できたのかな。もう少し僕が丈夫だったら君を苦しませずに済んだのかな。
もし僕にもっと力があれば、この戦いを早く終わらせることができたのかな。
もし僕が君を追えば、また会えるのかな。
僕は君の黒髪と白くて綺麗だった手を握って、君の好きだった白い菊を餞として添えた。