昨日と今日の分をまとめて投稿することになってしまった!!!(2回目)前回入力した内容が消えてしまった!!!なぜだい?!!
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「愛と平和」3/10
「また会えるその時まで、待ってて」
あなたがそう言ったから、私はずっと待っていました。
鮮やかで温かな春 眩しくて懐かしい夏
穏やかに過ぎ去る秋 全てを穢れなき白で連れ去る冬
ずっと、ずっと待っていました。
でも、あなたはいつまで経っても来なかった。
だから私は決めたの。
全てを飲み込んでしまおうと。
そうすればきっと、
私の中で眠るあなたを愛することができるから。
すぐにあなたを見つけることができるから。
でも、私の中にあなたはいなかった。
だから私は決めたの。
新しい世界を作ってしまおうと。
「あなた」と安心して過ごせる、愛と平和で溢れた新しい世界を。
まずは、あなたが退屈しないように、小さな街を作りました。
あなたが欲張りだったとしても、これでなんでも手に入るはず。
次は、あなたがどこかに出かけたくなってもいいように、たくさんの街を作りました。これできっと楽しく過ごせるはず。
それから、空をたくさんの星々で飾りました。これで昼も夜も空を見上げるだけで、心が満たされるはず。
最後に、「あなた」を作ることにしました。
あなたを定義するのはとても大変でした。でもあなたはとても素敵なひとだから、宇宙で見つけた美しいものでできているはず。そこに私を少し混ぜ込んでしまえば、きっとこれで事足りるはず。
これで、私とあなただけの、愛と平和に溢れた美しい世界が完成しました。
もし足りないものがあれば、また定義しなおせばいい。
あなたと一緒に作り足せばいい。そうでしょう?
あなたがいれば、私はそれだけで幸せなのだから。
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「平穏な日常」3/11
静かな群青から朗らかな薄紫に変わる夜明け。
キミがゆっくりと起きてくる柔らかな朝。
一緒に食べる朝ごはんのバターを塗ったトーストと目玉焼き。
元気な太陽が街を照らす昼。
思い出話やケンカをしながら食べる昼ご飯。
散歩したときに聞こえてきた名も知らない歌。
街が眠り始める夕暮れ。
夕焼けに透けるキミの髪。
どこかから漂ってくる夕食のかおり。
キミが眠る夜。
夕飯に食べたカレーがなかなか落ちない洗い物。
お風呂に入るときに選ぶ入浴剤。
ボクが眠らない深夜。
キミの眠っている間に書くレポート。
いつの間にか回っている時計の針。
そういう一日一日を繰り返して、みんなは成長して、老いていく。
暑くなろうと、寒くなろうと、その理は変わらない。
ボクはこんな平穏な日常を送るのがとても好きだ。
だからこそずっと続いてほしいと思っている。
でも、いつか必ず、終焉が来ることはわかっている。
キミがボクを置いて行ってしまう。
この街が破壊されてしまう。
そんな日が、いつか来るんだ。
壊れたものは、もう二度と元通りにならない。
だから、だからこそ、毎日を大切にしていこう。
そして、キミに毎日を大切に生きてもらおう。
そんな時が来たとしても、せめて後悔のないようにしたい。
キミが幸せに生きていけるように。
安心してボクを置いて行けるように。
「過ぎ去った日々」
キミと出会ってから早数十年。
ボクは色んなことを一緒に経験した。
美味しい温泉たまごの作り方。布団の柔らかさ。一緒に遊ぶゲーム。キミの心の傷を癒せたかどうかはわからないけれど、精神的に危なっかしいところがあったから、正直言って色々心配だったよ。
でも。キミはちゃんと自分の幸せを掴み取った。
ボクは心底安心したよ。本当に良かった。
命が尽きるまで、キミの心は満たされていたと信じたい。
色んなものをくれたキミ。一緒に宇宙を救ってくれたキミ。
ボクはキミと出会えて、とても幸せだった。
でも、それはとうに過ぎ去った日々の話。
ボクの髪もいつの間にやら色褪せてしまった。
そのうちもっとこの身体も少しずつ機能を停止して、やがて動けなくなる。
その時が来るまで、ボクはキミのことを忘れないよ。
本当に、本当にありがとう。
「お金より大事なもの」
「おはよう!!!今日は珍しくボクが朝ごはんを作ってみたよ!!!見よ!!!この温泉たまごのせトースト!!!何をかけても美味いに違いない!!!」
おはよう。朝から声がデカい。
温泉たまごのせトーストってなんだ?
……まあでもうまそうではある。
身支度をして、自分は居候の自称マッドサイエンティストが作った温泉たまごのせトーストを食べる。
「そういや、キミに聞きたいことがある!!!キミには『お金より大事なもの』ってあるのかい??」
急だな!なんでいきなりそんな事を?
「いや〜、この前やってたテレビ番組でそういう質問が出てきたからさあ!!!せっかくだからキミにも聞いてみようと思ってね!!!」
自分は考えを巡らせる。お金より大事なもの、か……。
もっと思いついてもよさそうなものだが、生憎何も思いつかない。そんなはずはない、そんなことはわかっているはずなのに。
「き、キミって……拝金主義者だったのかい……?!!そういう一面もあるんだねぇ……ちょ、冗談だって!!!だから睨むのはやめてくれたまえ!!!」
「まあ、キミが悩んだとおり、すぐに答えられる質問じゃあなかろう。そうだなぁ、例えば———」
「ボクとの絆はお金じゃあ買えないよ!!!いくら大金を積もうが、ボクを認識する才能は手に入らないし、キミと過ごした時間を買うなんて事もできない!!!」
「それに!!!六文銭のような弔いの文化こそあれ、キミは生まれるためにお金を払ったのかい?「生まれるまで」と「生まれてから」はお金がかかっただろうけど、きっとそんなことはない!!!第一、「誕生法第455条」に「生成、誕生の際は通貨を差し引くべからず」と———……(以下略)
確かにそうだ。「お金では手に入らないもの」はたくさんある。だが、「お金では手に入らない」から「大切」と言い切ってしまうのは少々乱暴な気もする。
「う〜〜む……お金で手に入ろうがそうでなかろうが、それを大切と思うかどうかはキミ次第!!!だが覚えておくといい!!!お金で手に入れられるものっていうのは、往々にして誰かの時間と命の結晶だ、って事をね!!!」
「……少なくともボクは思うよ。キミはキミ自身をもうちょっと大切にした方がいい。今みたいな雑な生活を送っていたら、せっかく作れるようになった温泉たまごを早々に誰にも振る舞えなくなるじゃないか!!!それに、研究にも多大な影響を与えるし!!!」
「だから、頼むよ!!!ボクはマッドサイエンティストだから話を聞くのも得意なんだよ!!!少しずつでいいからなんでも話してくれたまえ!!!キミの為にも、ボクの為にもね!!!」
そうだ。自分はいつも何かを拒んでばかりいる。自分自身でさえも。
少しは心を許しても、いいのかな……。
ジャージのポケットに入った小銭をじゃらじゃら言わせながら、自問自答を繰り返した。
「月夜」
ここは不思議の森。みんなが知っていて、みんな知らない場所。
今日はここで夜のお茶会が開かれる。
数多の花に照らされながら、星のように森の住民は囁きあう。
ここは楽園。居場所を失ったすべての存在の終着点。
望んだものはなんでも手に入り、苦しみは消える。
やがて意識も薄れて、最後は森の一部となる。
そんなこの場所に、旅人がひとり迷い込んできた。
煉瓦色の髪の、全てを消し去りそうなほどの暗闇を目に宿したその人は、何も言わずにゆっくりと歩いていた。
そんな旅人を見た蟹と街灯のキメラ、そして頭がクマのぬいぐるみでできた市松人形が声をかけた。
「こんばんは。あなたもお茶会に来たのですか?」
「……」
「お菓子 美味しいヨ」
「……」
「……。あなたがこの森に来たということは、おそらくあなたにも望むものがあるのでしょう。」
「そウ!ここは いいとこロ!さア 早速お茶会に行こウ!」
木々の間で開かれる月夜のお茶会。
そこでは、パッチワークでできたビスケットに朝露に夜の帳を溶かしてできた紅茶、氷河のケーキ、とにかく色んなものが並ぶ。
「着いたヨ!ほラ これ 食べテ!」
「どれでも好きなものを好きなだけお召し上がりください。」
旅人は沈黙を破らないままケーキを頬張った。
「どウ?美味しいでしョ?」
今度は蛍光色のマカロンに手をつけた。
よほど腹が減っていたのだろうか。
黙ったまま食べ続ける。
「せっかく出会ったので教えてください。あなたの望むものは何ですか?」
「私モ 気になル!」
ようやく旅人は空に浮くくらげを見つめながらその重い口を開いた。
「……無くしたものが欲しい」
「そして、手に入れたものを全て取り戻したい」
「欲しいもノ いっぱいだネ!でモ 大丈夫!ここにいたラ いつかきっト 手に入るヨ!」
「森の一部になるその時まで、きっとあなたは満たされていることでしょう。」
しばらく沈黙が続いたあと、さっきまでとはうってかわった様子で
「さて!!!」
とだけ言い残し、どこかから取り出してきた袋にお菓子を詰め込んで走り去っていった。
「早速、望んだものが手に入ったようですね。」
「髪の色モ 変わってたネ!よかっタ よかっタ!」
この夜が森の一部となったので、月夜のお茶会はほのかに甘い香りを残し、終わりを告げた。
不思議の森は、いつもどこかであなたを待っています。
「絆」
「おいキミ!!!教えてくれたまえ!!!」
自称マッドサイエンティストの子ども(?)が自分に聞く。
宇宙を救うために知らなくちゃいけないことなのか?
昨日は「ムー大陸は本当にあったのか」「布団から出られなくなる理由」「明日の昼ご飯は何か」「猫ってかわいいね」「高いヘッドンホホが欲しい」などなど、少なくとも「宇宙を救うため」に必要だとは到底思えないことばかり聞かれたから、ついそう思ってしまった。
「ああ!!!必要だとも!!!ボクを疑うっていうのかい???」
「……まあいい。ところでキミは『絆』って何かわかるかい?色んな作り話で取り沙汰されるコイツの辞書的な意味はちゃーんと確認したよ!!だが、だいたいの話ではあんまり現実味がなさそう……というかボクを認識できるニンゲンが今んとこぼっちのキミだけだから、『絆』が存在するかどうか確証が持てないのだよ。」
「というわけでボクは思いついたのさ!!!キミとボクとの間で『キズナ』を育もうじゃないか!!!いいアイデアだろう?!!」
絆。人と人とを繋ぐもの。
ミントグリーンの髪のコイツよりもこの星で過ごした時間は多いはずなのに、自分はちゃんと「絆」を知らない。
なんでだろう?考えても無駄か。
「……心中お察しします!!!まあキミがこれから誰かと深く関わる時のための練習だと思って、ボクと仲良くしてくれたまえ!!!」
「そうだね〜……まず、ボクはキミの事をよく知らないといけないし、逆も然りだ。今夜は色々語り合おうじゃないか!!!」
今日の夜は長くなりそうだ……。こんな調子で宇宙が救えるのか?
まあとにかく、自分たちができることをやるだけだ。
今まで出会った誰かと、これから出会う誰かのために。