本棚の隙間

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4/16/2024, 2:53:40 PM

部屋の窓から街を見るたび、どこか遠くへ行きたくなる。

一度だけ街の外れまで行ったことがある。そこは透明な壁だけで、向こう側には何もなかった。

まるでこの街はドーム状の箱庭のように囲われている。

小さい頃から、不思議に思っていた。
昼間は明るい青空なのに、物音がしたと思ったら夜になっている。

私に両親というものはいない。育ててくれる大人はいる。
だけど、その人たちもおかしい。
みんな白い上着を着ているからだ。

私たち子供を番号で呼ぶところもおかしい気がする。
何故おかしいと思うかは、友人のトリのせいだ。

真っ黒な羽を持っていて瞳は青いトリ。
物知りで、おしゃべりなトリでどこから来たのかわからない。 

そいつは言う。
「大人タチは、オマエたちを騙シテいる」

「オマエたちを番号で呼ぶガ、大人タチは、個々ニ、ナマエというモノを、持ッテイル」

「ココはハコニワ。実験サレテイル」

最初はトリの言っていることだからと信じていなかった。
けどトリの持ってきた本を読んで事実だと知った。

私はこのことを誰にもバレないように、密かに脱走計画を立てている。
しかしここ最近トリの姿が見えないのが気がかりだ。

自由のようで、自由ではないこの箱庭から出ることを夢見ている。

4/13/2024, 11:35:42 AM

───快晴駅、快晴駅です。お出口は右側。戻りの電車は反対ホーム4.9番線各駅停車俗世行きをご利用ください。次は彼岸、彼岸駅です。

ここは、快晴駅という場所らしい。
自分の知る限り、そんな駅名は存在しない。ならばここはどこなのだろうか?

駅のホーム内に、自分以外の人がいない。
電車が行ったホームはしんっと静まり返り、ただ澄んだ空が見えるだけだった。

暑くも寒くもない場所。人どころか虫や鳥もいない。うっかり居眠りをしてしまったためにこんなところに来る羽目になった。

当然、スマホは圏外。Wi-Fiもない。反対ホーム4.9番線に戻るための電車があるらしいが自分は少し考えていた。

少しだけここに残ってみようか──と。

4/12/2024, 11:39:56 PM

澄んだ青空に手を伸ばしても、君のいるところには届かない。
名前を呼んでも、返事はない。
朝目覚めるたび、どこにいても君の面影がちらついている。
もう、涙は出ないけれど、寂しく思う春爛漫。
だから、この想いを君に届くように、手紙に綴る。
君の好きな桜の便箋に、たくさんの想いを綴るよ。
遠くの空へ行ってしまった君は、私にとって特別でした。
君は私のことをどう思っていたのでしょうか?友達でしょうか?親友でしょうか?
君のいない世界なんて、想像していませんでした。
私の横でずっと笑っていると思っていました。
咲き誇る桜を1人で見ると君を思い出し寂しく思います。
1人で帰る道にも君の面影がチラついているほどに。
この気持ちを君に伝えても困った顔で笑うでしょう。
ただ1言───愛していました。

11/11/2023, 11:07:54 AM

かつて天使だった頃の話。
人間が好きだった。どうしょうもなく。
こっそりと人間の世界を覗いていた。
そんなある日一人の男に一目惚れした。
どうしても俺はあの男の元へ行きたいと強く願った。
たとえ禁忌だとしても。
至上は怒りに満ち、象徴でもある羽を天から降り注ぐ稲妻によって焼かれた。
片翼はジリジリと燃え、激痛が走った。歯を食いしばり耐え抜く俺を、至上は冷たい眼で見つめていた。
片翼が燃え朽ちたあと、もう1つの羽根は使えぬよう上司によって切られた。
ただそこに残っている無様な羽根を皆はクスクスと笑っていた。
その後、罰として俺は地上に落とされた。
飛べぬ無様な羽根を持った元天使として。堕天した。

二度とあんな場所に帰るかと口に出した。純粋無垢な天使ほど性格が悪い。ちっとも自分が悪いと思ってもいないからだ。
人間の生活は大変だった。労働、食事、睡眠などエトセトラ。時間が足りない、体も命も足りない。けどとても楽しかった。

お前と出会ったから。

それなのに何故お前は動かない?
腕の中にいるお前はどうして冷たくなっていく?
撃たれたからか?言っていただろ、筋肉があるから大丈夫って。馬鹿にしてたけどお前なら大丈夫だって思ってた。
ちっとも大丈夫じゃなかった。嘘つき。

「お願い、します。どうかこの人間を助けてください。俺は罪を犯しました」
廃墟の教会に声が響く。
「けれどこの男に罪はありません。俺のせいです。どうかお願いします。この男の命を助けてください」
声は虚しくも静寂にとけ、ただ啜り泣く声だけが響いた。
「神頼みだなんて死んても嫌だって思ってた。だけどこの男のためなら何でもする。なぁ、頼むよ。俺の命なんていらないからこいつだけは助けてくれ。無様な天使を嗤ってくれていいからさぁ!」
バサリと包み隠していた無様な羽根を広げる。月明かりに照らされた羽根は無様なりにもその瞬間だけは美しく本来の輝きを取り戻したように見えた。
しかし未だに激痛が襲う羽根は力なく地に擦るかたちで落ちてしまった。
「無様だけどお前の力になるよ」
腕の中で眠る男にそっと口づけをする。
「今日のご飯はからあげがいいな」

男が目覚めると見知らぬ教会にいた。
傍らには灰色に染まった羽根が落ちている。
羽根をとると懐かしい匂いがして涙が頬を伝った

【無様な天使を嗤ってくれ】B,L

6/16/2023, 9:41:43 AM

『好きな本(中の人の好み)』

森絵都先生の「カラフル」と神永学先生の「心霊探偵八雲」です。

カラフルは死んでしまった魂が別の人間の体にホームステイして自分の罪を思い出すみたいな話だった。

心霊探偵八雲は幽霊の見える青年八雲が事件解決していく話。

ざっくり紹介しちゃったけどめちゃくちゃおすすめです!

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