本棚の隙間

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部屋の窓から街を見るたび、どこか遠くへ行きたくなる。

一度だけ街の外れまで行ったことがある。そこは透明な壁だけで、向こう側には何もなかった。

まるでこの街はドーム状の箱庭のように囲われている。

小さい頃から、不思議に思っていた。
昼間は明るい青空なのに、物音がしたと思ったら夜になっている。

私に両親というものはいない。育ててくれる大人はいる。
だけど、その人たちもおかしい。
みんな白い上着を着ているからだ。

私たち子供を番号で呼ぶところもおかしい気がする。
何故おかしいと思うかは、友人のトリのせいだ。

真っ黒な羽を持っていて瞳は青いトリ。
物知りで、おしゃべりなトリでどこから来たのかわからない。 

そいつは言う。
「大人タチは、オマエたちを騙シテいる」

「オマエたちを番号で呼ぶガ、大人タチは、個々ニ、ナマエというモノを、持ッテイル」

「ココはハコニワ。実験サレテイル」

最初はトリの言っていることだからと信じていなかった。
けどトリの持ってきた本を読んで事実だと知った。

私はこのことを誰にもバレないように、密かに脱走計画を立てている。
しかしここ最近トリの姿が見えないのが気がかりだ。

自由のようで、自由ではないこの箱庭から出ることを夢見ている。

4/16/2024, 2:53:40 PM