『ココロオドル』
だるくて 重たくて 動けない体を
なんとか、やっとの思いで 浴室に運んだ後
泣きそうな思いで、シャワーを浴びる
でも、その途端に ココロオドル
湯気と共に 悪魔の魔法が解けたかのよう
もっと早くに 入れば良かったな なんてね
だるくて 憂鬱で 行きたくない体を
押し出して 無理矢理 連れて行った
緊張で張り裂けそうな心で 扉を開ける
でも、しばらくすると ココロオドル
笑顔と共に 死神の魔法が解けたかのよう
もっと早くに 来れば良かった なんてね
眠たくて 苦しくて 麻痺したような頭を
踏ん張って 気合い入れて えいや!と持ち上げた朝
フラフラしながら洗面台に向かい、歯を磨く
でも、後から振り返ると ココロオドル
勇気と共に 魔神の魔法が解けたかのよう
あの朝があったから 今日一日 充実できたなぁ
意地張って 後に引けなくて 正当化したい心を
引っ張って 向き合って 本音の声を聞き出した
恥ずかしさと罪悪感とフワフワしたプライドに
いびつに縮こまった心で ごめんなさいと伝える
でも、許してもらえて
今度は “ありがとう” また、“ごめんなさい”って、
泣いている私
涙の後には 虹が掛かり ココロオドル
絆と共に 魔王の魔法が解けたかのよう
もっと早くに 素直になれば良かったなぁ だってさ
『束の間の休息』
かつて、ホームヘルパーの仕事に
従事していた時のこと。
一日、多い時で10件ほどのお宅に訪問をしていた。
各お宅には、電動自転車で伺う。
お宅にてケアをする時間よりも、
移動時間の方が多いのではないかと思うほど、
電動自転車を漕いだこともあった。
ケアが立て込んでいるときは、息つく間も無く
移動が続く。
雨の日も台風の日も、雪が降る日も
漕いで漕いで漕ぎまくった。
自転車で進めない時は、押して歩いた。
だから、とても天気が良くて、気持ちのいい
晴れの日はご褒美のように感じた。
サイクリングの時間として
楽しんだりもしたし、
空や季節の移り変わりに心を和ませ、
癒してもらったりもしていた。
ある日、ある時、突然に出会う、空の一幅の名画に
心の中で歓声をあげ、涙腺が緩むことも度々だった。
ある時は、荘厳で雄大な夕暮れに、またある時は、
世界の始まりのような朝焼けに、そして、
またある時は、目に焼き付いて離れない月夜に、、、
私は、この束の間の休息が大好きであった。
この束の間の、空や風や景色との対話が、
疲れ果てた私の心と体を、癒し、再びの活力を
もたらしてくれた。
もしかしたら、しあわせって、
この束の間の、休息の中にあるんじゃないかなと
そんなふうにも思われた。
例えば、もしも、この休息が永遠となったとしたら、
どうだろう。
私は、これほどまでに、あの束の間の自然との対話に、心を震わせているだろうか。
息つく間もなく、取り組まなければならない義務に
向き合い続ける膨大な時間。
その、合間に突然にやって来る奇跡のような
自然との出会い。
私は、自分の果たすべき義務と格闘する中で、
突然、神様から送られて来るギフトのような
このご褒美こそ、私の心を真実に満たしてくれている
ような気さえした。
むしろ、この束の間のご褒美のために、
私はがむしゃらに働いているのではないかと思うほどだった。
『力を込めて』
『過ぎた日を想う』
過ぎ去った日は戻っては来ない。
あれから、私は完全に停滞している。
どれだけの日々が、虚しく過ぎ去って逝ったのだろう
周りの人たちが、どんどん自分らしく、
歩み進んでゆくのを横目にしながら、
私は、身の回りにある、あらゆるものを盾にして、
進むことがどんなに困難であるかを
一所懸命に、自分に説明していた。
でも、同時に、
そんな盾がいかに薄っぺらいものであるかも
心のどこかで、気が付いていた。
軽蔑すら感じていた。
本当の自分は、多分、
挑戦した後に惨めな思いをしたくないだけ。
こんな思いをするくらいなら、
初めから何もしなきゃよかったと、
恨み節を垂らす自分が、未来が、怖いのだ。
誰かを妬み、世間を恨むような化け物に
なってしまう気がするから。。。
余計なことはしたくないと、自分を
騙し続けている。
そして、騙されていることに気がつかないフリを
しているんだよね。
自分の挑戦に、誇りを持てたのなら、
全く違う未来に出会えるはず。
大事なことは、自分で自分を尊敬すること。
自分なんて、取るに足らないし、どうでもよいとの
烙印を押したままだと、いつまでも どこまでも
今の虚しい延長線
自分のことを尊敬するだなんて、
とんでもないことだな。
そんなふうに、今は感じる。
だけれども、本当は、きっと
誰もが、自分だけの夢を持ち、
それを叶えるために 自分らしく
自身に負けないで歩いていった人は
みんな、素晴らしいんだ。美しいんだ。尊いんだ。
なにより、自分に嘘をついていないその生き方は
とても 清々しい。
自分自身が、清々しくて、
他人から見ても きっと 清々しいだろう。
もう一度、前を向こう。夢を描こう。
今の自分が笑顔になるまで、
胸を張って歩き続けよう。
今が笑顔になれば、同時に
過ぎた日も笑顔になれる気がするから。
その積み重ねの中に、
未来の笑顔の種もあると思うから。
大事なお花を育てるように
私は、わたしの誇りという苗を育てよう。
その未来に、幸福という果実が実るのを
私は信じます。
『星座』
むかし、むかし、世の人々は
夜空にロマンの地図を広げて
ひとつひとつの星たちに、生命を吹き込んだ
それぞれの輝きに 意味を込め
ひとりひとりに 名前といういのちが与えられた
そして、たくさんのいのちが集まって、
夜空には、宇宙の展覧会が
燦然と煌びやかに開かれ、
夜空の巨大なスクリーンに
太古のロマンが生き生きと映し出されていた。
人々は代々、その物語を 言葉や文字で後世に
語り伝えてきたのだろうか
その遺伝子が、私の中にも きっと
流れている
星の光は、はるかはるか 遠くからも
この地球に届いてくる
私が今、見つめている星たちの光の中には
すでに消滅している星も あるかもしれないらしい
なんて、ロマンなのだろう
もうこの世にはいない、存在に
光という姿で、会えてしまうなんて
星座を見つめて、語り継がれるロマン
広がる夢と現実が、溶け合っているような世界
その世界の下、星座の光に導かれて
私は平均台の時空を歩く
先は全く見えなくて、一歩先だけがやっと見えて。
勇気を出して踏み出す一歩の、
私の足先だけが闇に浮かぶ。
両手を大きく広げて、
バランスをなんとか取りながら。
落ちそうになるのを必死に堪えて。
私のいのちの名前はまだ、よくわからない
だけど、確かに 夜空には 太古の昔から
ロマンの物語が続いている
物語の主人公たちは、そっと優しく
私を見つめてくれているのだろうか
星座の光を道標に
私は 私の名前を探して歩く
両手を大きく広げて
息を深く吐き、そして ゆっくりと 息を吸う
巨大なクスリーンに
私のいのちも、いつの日か 映し出されるだろうか
ロマンの星座に なぞらえて
私は わたしのいのちを 思いっきり描いてみよう
遠い星に 光よ届けと 願いを込めて