◎神様が舞い降りてきて、こう言った
#9
神様が舞い降りてきて、こう言った。
『よいですか。貴方は今から天に登らないといけません』
「なぜでしょうか」
何か悪いことをしてしまったのでしょうかと聞くと、神様は微笑んだ。
『貴方の身体はとうに朽ちてしまっているからです』
よく見なさいと言われ、じっと指先を見つめる。
指先はほんのり透けていた。
「あぁ、私は死んでしまっているのですね」
神様の腕に包まれて一人の魂が浄化されていった。
これは誰にも知られることのない
”死神の”日常である。
◎鳥かご
#8
自分の一生を籠の鳥と例える人が居るでしょう。
誰にも知られず縛られず関わらずに、産まれて死ぬことができたらその人の籠は無くなるかも知れないが、そんな人はこの世には居ない。
誰もがそれぞれの大きさの籠に囚われている。
貴方にとって自由に見える人もそれまでの人生、価値観、周りの期待に囚われている。
死後、人々はその体を籠へと変化し、その中に自身の魂を留めて楽園と称した。
その籠を管理する男は今日も彼等の楽園を覗き込む。
新しい籠の中は美しさを保って輝いている。
蔵の奥の古い籠の中は、籠の主が平穏に飽き刺激を望んだ結果が歪に楽園を変質させていた。
「人は、死後も自身を自ら閉じ込めて平和を謳い、そしていつしか狂いゆく」
哀しい憐れで愚かな生き物だね。
そう言って、男は古い籠を持ち上げた。
「周りに悪影響が出る前に処分しなきゃ」
蔵の外に向かう男の背後で、数多の楽園は輝きを放っていた。
◎花咲いて
#7
花咲いて
揃う三振り
三名槍
本丸来たる
蜻蛉切かな
槍レシピでやっとのことで
蜻蛉切をお迎えできたお祝い🌸
日本号
↓
御手杵
↓
蜻蛉切 の順番でお迎えしました。
一個前のテーマで書いたって良いよね!
◎今一番欲しいもの
#6
欲しいもの……
・画力
・文才
・発想力
・語彙力
・時間
・お金
・強いメンタル
etc.
欲しいものは沢山あって、
一番とか、パッとは答えられない。
逆に、すぐに答えられる人って
どのくらい居るんだろう。
私は今、何が一番欲しいのか。
うーーーん……
あぁ、”欲しいもの”、あった。
この問答の答えが
今一番欲しい。
◎視線の先には
#5
「綺麗だなぁ」
空を見上げて口を間抜けに開ける少年は、星を指でなぞって形にしていく。
「あれは、ベガ。あっちが、デネブ。あそこのが、アルタイル」
夏の大三角が完成すると楽しそうに笑う。
「明日は天の川、見れるかなぁ」
頬を赤くして、手に持った小さな天体望遠鏡を精一杯握りしめる様子はまだまだ幼い。
(お前にはこの空はどう見えてるんだろうな)
宝石箱のように輝いて見えるのだろうか。
その視線の先にはどんな世界が、未来が見えているのだろうか。
「きっと、見れるさ」
そう言って、その景色を忘れた父親は少年の髪をくしゃりと撫でた。