『雨音に包まれて』
私は駆け出した
無我夢中で
感情の赴くままに
どこに向かって
走ってるのかなんて分からない
とにかく嫌だった
あんな場所にいられない
思いはただそれだけだった
外は豪雨
傘を刺さずに
走ってるのなんて
私だけに違いない
―――私はどこに向かえばいい?
私の知る公園? 川沿い?
海まで向かう? 人の居ない広場?
もっと山の方? 住宅の奥地?
目的地なんてどうでもよかった
私は「わたし」に 任せた
感情の行きたい方に任せた
うごく手足のままに任せた
そこはきっと、
私も行きたい場所だから
………着いた…
その途端、さらに雨は酷くなる
まるで私に呼応するかのように
泣いた、
泣いた、泣いた、
泣いた、泣いた、泣いた、
泣いた、泣いた、泣いた、泣いた、
泣いた、泣いた、泣いた、泣いた、泣いた、
泣いた泣いた泣いた泣いた泣いた泣いた―――
喉も涙も
枯れる心配なんて無いほどの
豪雨の中に 立っていた
今の私には、
泣く以外の方法は
何一つ見つからなかった
私の中から全てが出尽くすほど
ただひたすらに泣いた
私の中から全てが出尽くすほどに…
私は本来、雨が大嫌い
だけど今日だけは…、
この雨こそが
世界一の味方だった
雨音は私の全てを包み
それら全てを流してく
全てを許してくれるかのように
抱えるわだかまりを取り除くように
叫び泣く声を周りに漏らさぬように
打ち付ける雨の全てが
ただひたすらに心地よかった―――
〜シロツメ ナナシ〜
173
『美しい』
美 と聞いて
何を思い浮かべるか
それこそ
十人十色 千差万別
似たものや同じものを
好きになることはあるだろうし
人には理解されない
全く違うものに対して
美意識を感じることもある
少数派と言えばいいのかな?
それは良いか悪いじゃなくて
お互いが理解できるかどうか
なんだけどさ
それらは全部選択してるだけ
沢山理解があるか
全然理解がないか
それだけの事だけど
少ないと時々
酷く不安になるよね?
自分は間違ってるのか?と…
そんなことはないって
今なら少しは言えるかな
理解できなくても
受け入れることはできるから
それが出来れば
大きな一歩の前進だ
世界は知らないことの方が
まだまだ沢山あるからさ
知らなくて怖いだけな時もある
無知ゆえの理解し難いって
ひとつずつ
世界の美と言うものを
受け入れていけたなら
より美しい世界が出来上がる
―――何となくそんな気がする
〜シロツメ ナナシ〜
172
『どうしてこの世界は』
それはただのひとりよがり
あるいは
世界に対する八つ当たり
はたまた
この世全ての不平不満
周りの人が
どうしても助けられてる気がする
私と同じように
辛くてうずくまってるような人に
手を差し伸べられている
そんな気がしてたまらなかった
それはそれで
極々一部の人だけなんだと
どれだけ頭でわかっていても
理屈や正論では
私の心は救われなくて…
それこそが私の欲張りだってわかってる
…わたしが…、
「私が選ばれたかった」って
私は…
わがままなのかな?
タダの怠惰なのかな?
自己中ってやつかな?
…認めたくなかったけど…
そうなのかも、と……。
私は…
自分の意思で進んでなかったこと
周りの人に引っ張って欲しかったこと
それに気づけてなかった…
私は…
周りが怖くて自分で決めれなかった
自分の好きを肯定して貰えなかった
私は自分の意思と自信を無くした…
だから周りに自分を委ねてた
委ねたくなくても…
委ねざるおえなくて…
それでは良くないと
長い長い時間をかけて
ようやく気がついた
私は…あまりに長い時間を
他人に使いすぎた
だから今を生きる他人が
ただひたすら羨ましい
自分の時間を生きてきた
この世の全ての人たちが
残りの時間は
あんまり残されてないけど
毎日ずっと…
どうしてこの世界は と…
恨み辛みが止まらないかもしれないけど
せめて、残った時間だけでも
私らしく生きた時間に
変えることが出来るなら
過去の捨ててしまった時間も
少しは成仏できるかもしれないと
信じてみることにする
〜シロツメ ナナシ〜
171
『君と歩いた道』
人と人が寄り添って
同じ道を歩いてく
この光景が
一体どれだけ当たり前か
この光景が
どれほど難しいことか
それを経験できるのは
一体いつまでだろうか
親子は割とよくある
だけど歳を重ねるごとに
それはできる人 出来ない人
だんだん差がついてくる
同じ道を歩く
物理的な道を一緒に歩くことも
とても奇跡的なこと
そして時間と言う名の同じ道
これだってとても奇跡的
遠く離れたあなたとの
時間を共有できること
その時間がとても尊い
それは時として
距離をも超える心の近さを
感じさせてくれるもの
どれだけ遠く離れても
誰より近く感じてる
私はあなたを思ってる
心も体も誰よりも
あなたの近くにありたいと
わたしは誰より願ってる
これからも
君と歩いた道を
たくさん伸ばしていきたくて―――
〜シロツメ ナナシ〜
170
『夢見る少女のように』
純粋だった
まるで真水を見ているような
出来たての透明なガラスや
水晶玉の中の世界を覗いてるような
そんな真っ直ぐすぎる
穢れを知らない目をしていた
この子の夢や願いを
この世界でいったい
どこまで叶えてあげられるだろうか
夢の世界のような世界にしたかった
そんな夢のひとつやふたつ
叶う世界であって欲しかった
だけど私の力だけでは
とてもじゃないが限界がある
世界はこの子達の夢を
見てあげることを忘れたのだろうか?
それよりも自分のプライドを
他人を犠牲にしてでも
守らなければいけないのだろうか?
自分が心の底から信じたそれは
他人に強引に嫌がってても
押し付けなければならないほどの
存在なのだろうか?
私は…全ては守れない
だとしても、今の私でも
こんなちいさな純粋の
ほんのひとかけらだけでも
守ってあげたいと願ってる
〜シロツメ ナナシ〜
169