シロツメ ナナシ

Open App

『雨音に包まれて』


私は駆け出した
無我夢中で
感情の赴くままに
どこに向かって
走ってるのかなんて分からない
とにかく嫌だった
あんな場所にいられない
思いはただそれだけだった

外は豪雨
傘を刺さずに
走ってるのなんて
私だけに違いない

―――私はどこに向かえばいい?

私の知る公園? 川沿い?
海まで向かう? 人の居ない広場?
もっと山の方? 住宅の奥地?

目的地なんてどうでもよかった
私は「わたし」に 任せた
感情の行きたい方に任せた
うごく手足のままに任せた
そこはきっと、
私も行きたい場所だから


………着いた…
その途端、さらに雨は酷くなる
まるで私に呼応するかのように

泣いた、
泣いた、泣いた、
泣いた、泣いた、泣いた、
泣いた、泣いた、泣いた、泣いた、
泣いた、泣いた、泣いた、泣いた、泣いた、
泣いた泣いた泣いた泣いた泣いた泣いた―――


喉も涙も
枯れる心配なんて無いほどの
豪雨の中に 立っていた
今の私には、
泣く以外の方法は
何一つ見つからなかった
私の中から全てが出尽くすほど
ただひたすらに泣いた
私の中から全てが出尽くすほどに…


私は本来、雨が大嫌い
だけど今日だけは…、
この雨こそが
世界一の味方だった

雨音は私の全てを包み
それら全てを流してく
全てを許してくれるかのように
抱えるわだかまりを取り除くように
叫び泣く声を周りに漏らさぬように
打ち付ける雨の全てが
ただひたすらに心地よかった―――


〜シロツメ ナナシ〜

6/11/2025, 2:21:39 PM