『ひそかな想い』
(コンコンッ)
カ「ティアミーン、ちょっといい?
って、ん?縫い物?」
テ「ぁ、カーレルさん。
はい、先日マントのボタンが
外れたとの事だったので、
それを縫い合わせていました」
カ「あ、覚えててくれたか
ありがとさん、助かるよ」
テ「いえいえ、細かい作業や魔法は
得意なので、やらせてくださいね
あーでも…、先日のような
突貫はやめてくださいね?
いくら補助・回復魔法得意でも
あれはあとが大変なので〜…」
カ「うぐ…す、すまんかった…」
テ「ガードや回避の訓練、
もう少し頑張ってくださいね〜」
カ「が…頑張る…うん…。」
テ「ん〜よし出来た!
すみません、合うボタンが
今はこれしかなくて〜」
カ「お、ありがとさん 気にしないで
…ん?どっかで見たような…?」
テ「おー、さてどこでしょう?」
カ「ん〜……。あ 思い出した!
ティアミンの服の袖のやつだ」
テ「おー、正解です〜!」
カ「ぁーでも良かったの?」
テ「いえいえ、いいんですよ。
予備の方をつけてますから」
カ「あーそうなのね、んなら大丈夫か」
テ「ところで、私に何かごようが?」
カ「あーそうそう、
そろそろ移動の時間だからと
呼びに来たんだ、行けるか?」
テ「分かりました〜では、
ここ片付けたらすぐ行きますので、
先に行っててくださいな。」
カ「あいよ、慌ててないから
ゆっくりな?」
テ「はーいー」
カ「ボタンあんがとさん、
んじゃ早速っと(バサッ)」
テ「はーい、どうぞどうぞ〜」
(バタン)
テ「(…予備のボタンは、
今、つけてる私のボタンの方…)」
〜シロツメ ナナシ〜
『あなたは誰』
鏡の自分を見ていると
時々酷く不安になる―――
私が相手に聞いてるの?
相手が私に聞いてるの?
あなたは誰?って―――
あなたは私の鏡なの?
私があなたの鏡なの?
君は俺なの?
俺は君なの?
見ていることも辛くなるほど
(彼・彼女)は酷い有り様だった
相手を罵ってるのに
それは自分に返ってきた
いや、あるいは
相手が自分に言ってきたのか
どちらでもある気がしてきた
何年も…何年も…何十年も…
繰り返して…繰り返して……
やっとわかったことが一つ
今、
この人を1番幸せにできるのは
自分しかいないんだ、って
この人は何を求めてるのか…
たくさんたくさん、聞いてみよう
今更かもしれないけど…
今からでもできることが
まだ…まだ残ってるはずだから―――
〜シロツメ ナナシ〜
『手紙の行方』
目や耳でそれぞれ働く
忙しい手紙屋さん
幸福・不幸の手紙箱
それぞれ手紙を分けていく
もしも幸福の箱ならば
それは喜びや楽しみと
アロマの香りに包まれる
だけど今の手紙屋さん
疲れきって分けられない
どれを見たって聞いたって
不幸の箱に入れてしまう
そこの手紙は燃やされて
怒り悲しみ苦しみと
辛いと言う名の煙に変わり
他のみんなも辛い辛い…
子どもと子猫がやってきた
違う箱を持ってきた
箱の名前はそれぞれこう
「決めなくていい」と
「選んでいい」
そしてもひとつ「どちらでもいい」
それらの箱に入れたなら
ゆっくりそっと、燃やしてく
そこから出てくる「真実」を
正しくえらんで、読んでいく
選ぶ量は増えたけど
「選ばない」も選択肢
だからなんだか楽しそう
これなら過去の山積みの
手紙たちも少しずつ
わけれるその日も
来るかもしれない
〜シロツメ ナナシ〜
62
『輝き』
私も―― 私にも――
あんな輝きがあると思ってた
だけど現実は、全然甘くなかった
テレビや動画の人達みたいな
あんな輝きが欲しかった
だけど全然と言っていいほどなかった
歌や声で行けるかと思った
でもそこにも輝きはなかった
スタイル…
いや やめておこう…
火を見るより明らかで
鏡だって見たくないんだから…
知識は?
…どの通知書も
平均かそれ以下…
好きや趣味はどうだろ?
これならずっと、
頑張ってきたんだから…!
だけど……
進めば進むほど
自分は大海を知らなかった…
じゃあ…次は…!
・
・
・
探しても、探しても…
私は私の輝きが見当たらなくて…
私は…私を見直すために…
暗い夜空の下に
立っていた…
ここでなら…私の輝き…
…………………………見えるはず…!
・
・
・
私は、ゆっくりと進む…
暗がりをゆっくり…進む……
くらい…くらい…
深い…深い……心の闇の中に…
ここまで来たのに……私の…輝き……
…ちっとも…見えない……
…?
………………これ?
ここは暗闇…
月の明かりも…星の瞬きもなく…
真っ暗すぎて自分も分からない…
そんな中――――
……これ…
真っ暗闇の中で
目を凝らして
目を凝らして…
ようやく見えた
今にも消えそうな…「黒い光」だった
…これが、私の…?
「それ」を見つけて初めて気づいた
私はずっと……
私じゃない私を育ててきてた事に…
私が私を
初めて…いや、久しぶりに
見つけた瞬間だった
…ごめんね?「私」……
これから…ここから―――
私はこれから
「私」を、輝かせる
〜シロツメ ナナシ〜
61
『時間よ止まれ』
レ「なぁチーユ」
チ「レイさん、どうしました?」
レ「いや、お前のスキルを
もっかい確認しときたくてさ
確か…時魔術も習得してるんだよな?」
チ「えぇ、そうですよ。
と言っても 白魔道士の派生系なので
大抵の人はちょっと頑張ればなれますよ?」
レ「いや〜…、戦士系以上に
魔術向いてないからいいわ…」
チ「そうですか?白・時魔道士には
簡単な補助魔法だけでも損は無いですが…
そしたら何が知りたくて?」
レ「ぁーそうそう、さっき知ったんだけど
時魔術の中に、『ミドストプ』って
術があるのを聞いてさ。
どんなんか知っときたくて」
チ「ミドストプですね!使えますよ〜
でも、ご存知の通り
この世界の時間魔法は
あくまで自他のすばやさを調整するもの。
ミドストプも、実際には
「術者以外が全て止まる」って言うもので、
レイから見たら、私が瞬間移動を
してるように感じるだけなの」
レ「へぇ〜…なんかそれはそれでいいな!」
チ「ただ残念ながら、
対象を叩いてもダメージにもならず
私が触れても、人でもなんでも
ほとんどロウみたいにしか感じないんです
ほかの魔法も
極々一部しか使えなくなります
ちなみに、一定の魔力と合わせて
魔力を消費することで
その時間を伸ばすこともできますよ。
一般的にはおよそ30秒ぐらいですね
上位魔術師になると
もっと伸ばせるらしいですけど
私はそれが精一杯ですね〜」
レ「ちょい残念…
とはいえ…ちょっと興味湧いてきた…
せっかくだからちょこっとでいいから
見せてくれよ!瞬間移動!」
チ「んー構いませんけど…
そうですね…では、条件!
ここのお店の
エールミール(魔力回復ドリンク)を
奢ってください。そしたらいいですよ?」
レ「エールミール?
まぁ…魔力使うわけだし…
よし、それぐらいならいいぜ!」
チ「言質いただきました!
では行きますね?
〜時魔術『ミドストプ』〜!」
☆〜
〜☆
レ「…!?消えた!?まじか!?」
チ「さぁ、私はどこでしょう〜?」
レ「!?…〜〜〜〜!
そこだ!後ろ!…あれ?いない?」
チ「わっ の、テーブルの下でした〜」
レ「チーユ…たまに意外と
子供っぽいことするな?」
チ「も、もぅ!子どもっぽいって
言わないでください!
というわけで奢ってもらいますね!
すみませーん!
ハイエールミールひとつくださーい!」
レ「な!?ミドル 飛ばして ハイ!?」
チ「エールミールには
変わりませんもーん♪いただきマース!」
レ「そ、そんなに魔力使うんかなぁ…?
…はぁ、使うタイミング考えた方が
いいのかもしれないなぁ〜…」
☆〜
チ「…さて、…魔力最大でやっちゃった…
この時間だけ…
(ギュッ…)
ごめんなさい レイさん…
…ズルい女で…。
私…まだ臆病で…
けどあの子たちには負けたくない…
誰よりもあなたの役に立ちたい…
勇気が出た時は必ず…私から…
もしくは…もしあるって言われてる、
もっと上の時魔法が使えたら…
でも、今はこれが限界…
この時だけでも…2人…
この時間のまま…
止まればいいのに…
―――っ
…あっ、いけない!魔力が尽きる!?
え、えーっと…あ!ここにしましょ!」
〜☆
〜シロツメ ナナシ〜
60