触れられたほうは、感覚も朧気で記憶に残らないまま、風は常に何かに触れて生きている。
生き物が、季節の変わり目に新しく吹く風をからだで感じたとき、その感情を吸い取って娯楽とし、遠くの町にも分けてやる。
ねむい。眠いときに考えるとろくなことにはならない。それでも書きたくなるのです。でも、何も思い浮かばない。
春なのにうっすらと肌にまとわりつく寒さが続く。毛布を首に巻きつけて、冷たい足先をどうにかして庇おうと丸まって眠る。
神様へ
疲れが取れないから七時に寝ようと思ったけど、もう8時になりそうです。たっぷり寝て明日、清々しい私になれるよう願ってもう寝ます。
神様へ
私はみんなの健康だけを願っています。
神様へ
また明日会いましょう。
仕事へ向かうあなたが見下ろす空。私のアパートの窓から見える空。駆け足で次の予定へと急ぐあなたを照らす空。公園でのんびり見上げる空。不甲斐なさを抱えるあなたが友と帰路につくときに見る夜空。これが同じ空なのだろうか。どう思いますか?あなたの世界はとてもとても眩しく見える。近づきたいと願った私は嘘つきです。ただの阿呆だと知られることすら幸福なのだから。ほら、今でもそのうつくしさの幻影。一生交わらないで。遠くの空へと誘われたあなたが残すキラキラしたもの。見える。
世界が淡いピンクと黄色と薄紫で彩られても、まだどこか肌寒さが残っていた。人も自然と同じようにあたたかさで目覚め、外へわらわらと湧き出てくる。皆朗らかで柔らかで、けたけたとした子供の笑い声があちこちで聞こえるような気がする。すべてがまとめて春として、美しい光景だ。アスファルトの上を歩く。その下でも何かが芽吹き、うごめいている。水も空気も光も、その小さな隙間から伝い、つながり、全てへと続いてゆけ。
学校の帰り道は大きな下り坂。渋滞する車の先の、歩道橋を越えて更に山を越えた先。大きな夕日がいつもあった。毎日どこにいてもイヤホンをしていた私。もちろんその時も。沈む夕日に向かって思うことはいつも同じだった。何か大きなものを見て、何かを信じていた。流れる音楽と夕日に酔って泣いている私。二度と戻りたくないけれど、やり直せるのならば絶対、私は彼女に会いに行く。くだらない陶酔も恥じないけれど、彼女だけが私の支えだった頃の夢を忘れたくない。