その日、産声が鼓膜を揺らした
掌に収まってしまう手は愛しく
指先には柔らかな肌の暖かさ
少し時間が経っても変わらなかった
力無く握り返された繋がりは離しがたく
飛び立たなければ、ずっと続けばいいだなんて
まだ未熟な私は自分可愛さが抜けない。
けれど、アナタは進んでゆく。
アナタは好きや嫌いを知れたのね。
アナタは一人で立てるようになったのね。
アナタは喋れるようになったのね。
アナタは歩く方向を決めたのね。
アナタは、いつか
私から巣立つのよね。
愛しい君へ
歩み方を学んだなら、休む事も知っていて。
もし、打ちひしがれて疲れてしまったなら
一時でも雨宿りにおいでなさい。
エゴだもの、愛なんて大層な事は言えない。
だから、アナタも
大層な物を返すべきなんて思わないでね。
遠い日に雲の上でお土産話が聴けたなら
手放した事への勇気には充分な応えになるから。
ー 手放す勇気 ー
後頭部の辺りがじんわりと熱を帯び
瞼の裏では誰かの断片が波となり踊る
そうして、海馬から眼球へと流れては
何でもなかった日々が夢物語に変わる。
曙に溶けて消える、記憶の海の話。
ー 記憶の海 ー
私の身体に染み渡る声で
貴方は“別れるかもしれない”なんて
ちょっぴり残酷なことを言う。
それも、酷く酔った夜に寝てしまう直前で
それが怖いなんて、怖気付きながら
心底、細く弱った声で言う。
理想と現実に苛まれる事を恐れるのはお互い様だ。
けれど、その感情を知る前に
未知だからと切り捨てるには
私達は互いに情が募りすぎた。
過去に、聞いてと誰かの裾を引いた時
幼かった手は簡単に振り払われたけど
貴方は聞く度、色んな“返事”をくれた。
振り払わない人は、それだけで珍しかった。
振り払わない理由が知りたくて
色んな時にも聞いてみた。
どんな時でも、貴方は変わらず返事をくれた。
好きだと伝えた声も言葉も欠かさない人だった。
これだけ沢山の言葉を丁寧にくれたなら
いつか、来るであろう別れの言葉も
貴方はきっと欠かさないんでしょう?
なら
私、貴方を諦める気には到底なれない。
さようならの、その後でも
丁寧な貴方なら言葉を返してくれるでしょう?
信用が拗れた確信犯へ
貴方が根負けして笑い出すまで
“友達”として傍に居座ってやるつもり。
ー big love! ー
なんて、純粋なだけでは終わらない。
微塵切りの息の先
ぺトリコールの道標
天使の梯子は雲を割り
昇ってく君を遠目に見上げて
虹のたもとで一つだけの影送り
少年の強がった再会の約束は
足元の弱いライオンだけが知っていた。
ー またね! ー
花筏に溢れた道路脇の水路
田んぼ道に少し零れた薄紅色
雨上がりの朝焼けの下
花盛りな春の始まりは
天真爛漫な突風に急かされて
名も無き誰かへ報せたいと
今まさに、空を舞い進む。
ー 春爛漫 ー