黒山 治郎

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7/4/2024, 5:20:48 PM

ハッピーエンドを越えた先
時を止めた登場人物達
成し遂げた功績に笑顔のまま
誰かは主人公へ駆け寄り
誰かは手を取り合って泣き笑い
しかし、物語は終わってしまい
一向に幸せな世界の続きは描かれぬ

誰が読んでくれようか?
ただ幸せなだけの他者の生活など
目を通す読者の方が珍しい

だが、誰かの目に触れなければ
時は動かず存在さえも忘却の彼方へ
いつの間にか、「物語」は瓦解し
過ぎ去ってしまった栄光は
「作者」だけが知っている。

ー 神様だけが知っている ー

7/1/2024, 10:15:59 AM

二人で予約したレストラン
グラスは二つなのに
向かいの席は空っぽで
夜景だけが透けて見えていた。

スマートフォンの通知には
「仕事が長引いて行けそうにない。」
そんな淡白な文章が一つ光って
特別だった筈の今日を忘れた貴方
今頃、別のお姫様と踊っているのかしら?

もう、貴方の居場所は私じゃないのね。
この夜景の何処へ身も心も寄せているのか
すれ違うだけの私では最早、知る術もない。

ー 窓越しに見えるのは ー

6/30/2024, 7:35:59 AM

その大きな雲へ「見越した」って叫んだら
どっかの妖怪みたいに縮んだりしないかなぁ。

ー 入道雲 ー

6/27/2024, 8:47:55 AM

最後なんて思わなかった。

だって、何でもない日だったんだ。

いつも通り互いに時間が合ったから
二人でぶらついて、遊んで
飯も食いに行ってさ。

帰り際もまた遊ぼうなって
お互いに笑いあった筈なんだよ。

いとも簡単に消え去った君に
現実感なんて到底、感じられなくて
一ヶ月の間を置いてから
君とふざけて回した
ガチャガチャのキーホルダーが
鞄の底から不意に出て来て
あれが本当に最後だったんだって
胸が軋む程、思い知らされたんだよ。

ー 君と最後に会った日 ー

6/26/2024, 9:31:11 AM

霧の中の恋が咲く

季節は春と夏の半ば過ぎ
ラフな部屋着のままの君は
湯冷めも気にせず香りを残して
一つのアイスを買って帰った。

…寂しくは、ないのかな。
少なくとも、僕は…。

なんて仕事終わりも君ばかり
この辺では聞かない訛りで
不慣れな笑顔を向ける君が
気になって、しょうがなくて。

別の日に出された
支払い用紙に書かれた名前
苗字は知っていたけれど
下の名前はお花みたいで綺麗だ。

心の中で何度か反芻してみる
無用心に差し出された住所は
…流石に見なかった。

だって、自分の足で
君の元まで行きたかったし
近所だとは知っているからね。

僕の気持ちを欠片も知らずとも
肌寒い霧の中の恋だとしても
君へ辿り着けると確信したんだ。

いつの日か必ず気持ちを
芽吹かせられる様にと
願いを込めた花を携えて

このクロタネソウを、愛しい君へ。

ー 繊細な花 ー

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