黒山 治郎

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6/30/2024, 7:35:59 AM

その大きな雲へ「見越した」って叫んだら
どっかの妖怪みたいに縮んだりしないかなぁ。

ー 入道雲 ー

6/27/2024, 8:47:55 AM

最後なんて思わなかった。

だって、何でもない日だったんだ。

いつも通り互いに時間が合ったから
二人でぶらついて、遊んで
飯も食いに行ってさ。

帰り際もまた遊ぼうなって
お互いに笑いあった筈なんだよ。

いとも簡単に消え去った君に
現実感なんて到底、感じられなくて
一ヶ月の間を置いてから
君とふざけて回した
ガチャガチャのキーホルダーが
鞄の底から不意に出て来て
あれが本当に最後だったんだって
胸が軋む程、思い知らされたんだよ。

ー 君と最後に会った日 ー

6/26/2024, 9:31:11 AM

霧の中の恋が咲く

季節は春と夏の半ば過ぎ
ラフな部屋着のままの君は
湯冷めも気にせず香りを残して
一つのアイスを買って帰った。

…寂しくは、ないのかな。
少なくとも、僕は…。

なんて仕事終わりも君ばかり
この辺では聞かない訛りで
不慣れな笑顔を向ける君が
気になって、しょうがなくて。

別の日に出された
支払い用紙に書かれた名前
苗字は知っていたけれど
下の名前はお花みたいで綺麗だ。

心の中で何度か反芻してみる
無用心に差し出された住所は
…流石に見なかった。

だって、自分の足で
君の元まで行きたかったし
近所だとは知っているからね。

僕の気持ちを欠片も知らずとも
肌寒い霧の中の恋だとしても
君へ辿り着けると確信したんだ。

いつの日か必ず気持ちを
芽吹かせられる様にと
願いを込めた花を携えて

このクロタネソウを、愛しい君へ。

ー 繊細な花 ー

6/24/2024, 9:22:50 PM

流石に一ヶ月ちょっと前に書いたお題と同じだと
正直、書く気は湧いてこないなぁ。
最近は似た様なお題が増えたかなとは思っていたが
前回の一年後と今回の1年後のお題に関しては
数字の表記違いだけなので
あまりにも、雑だと感じてしまう…。

ー 1年後 ー

6/23/2024, 9:16:47 PM

打ちっぱなしのコンクリート剥き出しの階段
螺旋の途中の踊り場は冬は特に冷ややかだった。

どんな声を上げようが、響くだけで返っては来ず
虚しさだけを溜め込んでブリキの扉を開く。

上等な靴箱なんて物も無く玄関先は味気無い色で
散らかった見知らぬ爪先が示す奥では
身知った声の変わり果てた様を聞かされた。

意図せず向かい合った木戸の先へ駆け込んで
いっそ便器と向き合ってしまおうか?
しかし、吐き出せる内容物などは最早無い。

拭い方も知らぬ不快感に酩酊する脳味噌では
靴を脱ぐ事すらも億劫で、ブリキの扉へ背を預け
ずるずると緩慢な動作で腰を落とす度に
意識も瞼も落ち込んで睡魔へ浸かりこんでゆく
後頭部がキンと冷えて目の奥が点滅する。

ここで寝てしまったら、邪魔になってしまう。

後ろ手にドアノブを捻れば
また冷ややかなコンクリートへ逆戻りだ。
背骨の一部を強かに打ち付けたが
元より傷んでいた身体ではこれ以上痛みはせず
子供の自分には乗り越えられない手摺りの先で
冬の晴れた空だけは無粋な程に青かった。

何時になったら、私は家へ帰れるのか。

迷い子とは癒えぬ病ではないかと
あの頃は、そうとしか思えなかったな。

ー 子供の頃は ー

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