黒山 治郎

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5/6/2024, 8:19:11 PM

ー 明日世界が終わるなら ー

そりゃいい、明日までは自由に生きられる
終わりが分かってんなら好きな事していいだろ?
だったら、明日を不幸だなんて思わんさ

地球てのは奇跡で成り立ってる様な星だが
如何せん、ここまで続いてくれただけで
急に途絶えたって何も可笑しかないからなぁ

完全、完璧なんてモンはこの世にゃ無くて
何事にも終わりがないってのは辛いだろ?って
単純明快、そんだけの話だ。



            ー 明日世界が終わるなら ー

5/5/2024, 5:45:15 PM

最初は、偶然の相席だった
この時代には珍しく喫煙席がある店で
向かい合った君と互いに被った注文は
結露すら涼し気なアイスコーヒーだった

留まりきれぬ水滴が素知らぬ顔で
指の隙間を通り過ぎる度に
無関心が過ぎたまま、席へ落ちた僕らを
風刺画の様に表している気がしてならなかった

ふと、灰皿を取ろうとした手がぶつかる

紫煙は混じり合い
珈琲に溶けたミルクの様に
視線は交差し、認識は示された

君を黙認した後、少しだけ残念に思ったんだ

もう相席の他人としては
その隣を過ぎ去れない事を。

               ー 君と出逢って ー

5/4/2024, 10:50:15 AM

鬼門の方角より耳鳴りは訪れる
木綿のかけ布は汚れ神棚を透かし
捲れた先では力無く千切れたしめ縄と
散らばった紙垂、両脇に座る榊の枝は
口惜しいとばかりに風に揺れて鳴る

外では何時何時と無邪気に童が唄う
鶴と亀が鳥を逃した籠を囲み
遠に小鳥は滑り落ちたというに
やや子やや子と母にもなれず
愛しげに腹を撫でるその女は
瘋癲じみた嗤い声をあげていた。

おや、しかし…
耳を澄ますと

童謡に紛れた
呱呱の声が 一つ。
               ー 耳を澄ますと ー

5/3/2024, 11:33:36 AM

あ、うん
あれ、これ、それ
そうだった、そうだよね

習慣に縮められた言葉のやり取り
継続してきた間柄の結果だけを出す
暗黙の了解に則って応え合わせ

何時からだったか
神社の狛犬よろしくと
阿吽の呼吸に努めたのは

否、知らず知らずに努めたのは
愛を実らせる方面にか

すとん

腑に落ちてからは、この当たり前に
若かりし頃の互いの密やかな恋心や
努力の影を垣間見る事が出来た

このぐらいは、誰でも…等と
双方のこれ迄や在り方を
容易く値踏みして良い訳はない

私達の関係は私達にしか、なし得なかった
二人だけの寄り添い方なのだから
だから、今日ぐらいは 互いの好きな酒を傾けて
この秘密が続いた事をお祝いしましょうか。

              ー 二人だけの秘密 ー

5/2/2024, 11:56:58 AM

醜い錆色と罵られた私を
今まさに掬おうとする手が
瞳いっぱいに映る

信じられない
信じたくない

少しの施しをして
満足感が満ちれば
月の様に背を向け、お前も消える

毛も爪もない剥き出しの皮膚に
無遠慮に牙を突き立てる

それでも

口元を濡らす血は暖かくて
自分はどれだけ凍えていたのか
その事実に打ちのめされ
傷だらけでも私を救い出そうとする
その手に抗う気はもう起きなかった

お願いだ、これ以上
優しくしないで(おいていかないで)


「貴女って暖かいのね
わたし、泣いてしまいそうよ」


垂らされた意図に上も下も無かった なんて
仏ですら知らぬ結末だろうに。

              ー 優しくしないで ー

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