黒山 治郎

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鬼門の方角より耳鳴りは訪れる
木綿のかけ布は汚れ神棚を透かし
捲れた先では力無く千切れたしめ縄と
散らばった紙垂、両脇に座る榊の枝は
口惜しいとばかりに風に揺れて鳴る

外では何時何時と無邪気に童が唄う
鶴と亀が鳥を逃した籠を囲み
遠に小鳥は滑り落ちたというに
やや子やや子と母にもなれず
愛しげに腹を撫でるその女は
瘋癲じみた嗤い声をあげていた。

おや、しかし…
耳を澄ますと

童謡に紛れた
呱呱の声が 一つ。
               ー 耳を澄ますと ー

5/4/2024, 10:50:15 AM