黒山 治郎

Open App

醜い錆色と罵られた私を
今まさに掬おうとする手が
瞳いっぱいに映る

信じられない
信じたくない

少しの施しをして
満足感が満ちれば
月の様に背を向け、お前も消える

毛も爪もない剥き出しの皮膚に
無遠慮に牙を突き立てる

それでも

口元を濡らす血は暖かくて
自分はどれだけ凍えていたのか
その事実に打ちのめされ
傷だらけでも私を救い出そうとする
その手に抗う気はもう起きなかった

お願いだ、これ以上
優しくしないで(おいていかないで)


「貴女って暖かいのね
わたし、泣いてしまいそうよ」


垂らされた意図に上も下も無かった なんて
仏ですら知らぬ結末だろうに。

              ー 優しくしないで ー

5/2/2024, 11:56:58 AM