狼星

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8/12/2023, 11:17:03 AM

テーマ:君の奏でる音楽 #272

君は演奏者で
僕は観客。
君の奏でる音楽は
人々を感動させる力があった。
僕にはそんな力がなくて
君を尊敬する。
君は誰もが持つことができるわけじゃない
魅力的な力を持っている。
僕にもそんな力があったら
なにか違った視点で世界を見られただろうか。
言葉にしてそれを君に伝えると
意外な言葉が返ってきた。
「君にも私は持っていない、
 魅力的な力を持っているよ」
君は優しいから
気を遣ってくれているんだと思っていた。
でも君は言った。
「理想は高くていいと思う。尊敬する気持ちも大切。
 でも自分を認めることも同じくらい大切だよ」

8/11/2023, 11:35:40 AM

テーマ:麦わら帽子 #271

向日葵畑の空の上から麦わら帽子が飛んできた。
「すいませ〜ん」
オレが拾うと右の方から女性の声が聞こえてきた。
向日葵畑から一人の小柄な女性が顔を出す。
「すみません。ありがとうございま……」
その女性はオレを見てぎょっとした。
ぎょっとされるのも無理ない。
オレはよく目立つ。
なぜならオレはヤクザ。
「あ、サーセン」
オレはすぐに麦わら帽子を差し出す。
まただ。
なにか言われる。
さっさと持って何も言わずに行ってくれ。
心のなかでそう思っていた。
「あの、サングラス似合ってますね」
「……え?」
女性から出た言葉は思っていた言葉と違った。
「あ、ありがとうございました」
麦わら帽子をオレから持って、去っていく。
持っていく時、小さく笑った顔が可愛くて。
「また、会いたい……」
ヤクザなオレでも普通に接してくれる。
それが嬉しかった。

「観光バスツアー行きのお客様はこちらに―」
ふと見るとそこにあの女性がいた。
「あ」
思わず声が出てしまった。
きっと聞こえていなかったけど。
バスに乗り込んでいる彼女が見えた。
気づかれないように。
不自然じゃないように近づく。
彼女がこっちに気がついた。
小さく手を振っている。
か、可愛すぎる。
オレも周りの人に気が付かれないように
小さく手を振った。

これは
名前も知らない麦わら帽子が似合う女性に惹かれる
ヤクザの話。

8/10/2023, 1:41:50 PM

テーマ:終点 #270

青春の終点の駅は涙の海。
紅葉の森から
苦労の山を乗り越え
滝の岬をくぐり抜けた。
そんな青春の旅の最後は
美しい涙で終わりたい。
笑顔なのもいいけど
涙が出るのはそれだけその場所に
想い出がある事だから。

8/9/2023, 2:47:10 PM

テーマ:上手くいかなくたっていい #269

「上手くいかなくたっていいさ。失敗すればいい」
私はそういう姉が嫌いだった。
なんで完璧を求めないの?
失敗は怖いよ。
上手くいかなきゃやっても意味がない。
そう思って姉の言うことは
いつも右から左へ流していた。

ある日、私は大失敗をしてしまった。
私は完璧を求めすぎて、
自分だけ突っ走ってしまったのだ。
すると周りから冷ややかな目で見られた。
「何1人で頑張ってんの?」
「いい子ぶってる?」
次第に私は教室の隅で独りぼっち。
「あの子は?」
「いいの。あの子は1人で何でもやれるから」
いつからか、私の席の周りには誰もいなくなっていた。
でも私は知らないふりをした。
1人で小説を読んだ。
10分の休み時間だけで30ページ進むときもあった。
でも誰も私には近寄ってきてくれない。
何なら冷ややかに向けられる視線が増えた。
私は姉の言葉を思い出した。
「上手くいかなくたっていいさ。失敗すればいい」
その言葉は分かりにくかったけど、
やっとわかったかもしれない。
完璧を求め自分だけで突き進まず、
周りを見ろということかもしれない、と。
周りを見てそれで失敗するのなら、
その失敗は自分を変えてくれる、と。

私は間違っていた。
それに気がつけた。
私は変われるだろうか。
今日は久しぶりに姉と面と向かって話そう。
右から左へ流さずに、
しっかりと話しを聞こう。
きっと姉は言うだろう。
「誰しも失敗をする。失敗すればいい。完璧を求めるな」
と。

8/8/2023, 12:45:12 PM

テーマ:蝶よ花よ #268

蝶よ花よ
姫はそう詠う。
悲しげに
寂しそうに。
まるで囚われているかごの中にいるかのように。
自由を求めるように
彼女を見ていると心が痛む。
貧乏人の僕が自由を求める彼女を連れて
街に騒動を巻き込む
三日前の話。

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