狼星

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1/8/2023, 2:59:47 PM

テーマ:色とりどり #57

色とりどりの景色がある。
一人ひとり、違う景色がそこに広がっている。
どんなにそっくりでも何処か違う。
みんな違っていい。
それでいいんだよ。

1/7/2023, 1:28:34 PM

テーマ:雪 #56

「あたし、雪子(ゆきこ)。あたしと遊んで〜」
雪の降る寒い中、一人の女の子が私の家に尋ねてきた。
「えーっと…。家、まちがえてるんじゃな〜い?」
私はその子…雪子ちゃんの視線に合わせてしゃがみ、話しかける。
「まちがえてないよ? あたしは遊びたいの!」
雪子ちゃんは手袋のしていない白い手を私に差し出す。
「私と?」
「うん!」
元気良く頷く雪子ちゃん。私は困った。遊ぶと言ってもこんな小さい子相手にどう遊べばいいのだろう、と。
「雪子ちゃん…悪いけど…。私は一緒に遊べないと思う」
「なんで?」
「私はもう大人だし…」
そう、もうすぐアラサーで独身な私には子供と遊ぶような機会はないし、すぐに疲れてしまうだろう。いや、そうに違いない。
「あなた、大人みたいなこと言うのね」
「だって、私は大人だもの」
「何を言ってるの? あなたはまだ子供よ?」
そう言って、首を横に振る雪子ちゃん。
「何を言ってるの? ……まぁ、いいや。私やることあるから他を当たってーー」
そう言いかけてしゃがんだ足を戻したが視点が変わらない。
「ん?」
私はもう一度しゃがもうとする。
「ん? ん!??」
今度は雪子ちゃんよりも視点が下がる。
「ほらね? いったでしょう? あなたは『子供』だって」
雪子ちゃんが自信満々に胸を張って言った。
手を見ると小さい手が目に映る。足だって小さい。
何よりも、ドアノブが遠い。
「嘘でしょ…。どうなってるの…?」
私は疲れているのかも知れない。こんなの夢だ。夢に決まってる。
「どうする? あたしと遊ぶ?」
私は雪子ちゃんに同じ質問をされる。この子、一体何者なんだろう……そんな思考よりも夢なら夢で楽しんだほうがいいのかもしれない。せっかく若返ったのだから。という思考が勝っていた。
「遊ぶ」
「そうこなくっちゃっ!」
雪子ちゃんは私の手をひいた。

私たちは遊んだ。
雪合戦、雪だるま作り、雪兎づくり……。
そんなことをしていると時間なんて忘れていた。
無邪気な子供のような心を思い出したかのようで楽しかった。
しかし雪が溶けて水になるように、現実に覚めてしまうと、楽しかったなぁ…とおもうのだった。
正直、雪子ちゃんの正体は今でもわからない。でも、ただ楽しかった。例えあれが夢だったとしても。
私と雪子ちゃんが過ごした時間は氷のように溶けないのだから。

1/6/2023, 12:31:57 PM

テーマ:君と一緒に #55

君と一緒にいられたのなら
どんな困難だって乗り越えられただろう
きっと…。
きっと。

そんな曲のフレーズがあった。
私はこのフレーズが大好きだった。
別に誰かこういう相手がいるわけでもない私。
でも、いつか『君と一緒にいたい』と思える人ができたならといつも思ってしまう。
いつか私も出会いたいな。一緒にいたいと思える人に。

1/5/2023, 12:38:53 PM

テーマ:冬晴れ #54

「まだまだ寒いなぁ…」
私は手を擦って縁側に座った。
鳥たちのさえずりが遠くから聞こえる。
「こんな日にはやっぱり、熱いお茶が飲みたくなるねぇ…」
私は横においた湯呑に入ったお茶に手を付けた。
「はぁ……。あったかい」
私は湯呑を包みこむとふぅ~っと息を吹き、湯気を飛ばす。ふわふわと舞う湯気が私の視界を曇らせる。
ズズズッと音を立てて飲むお茶は、格別だった。

『なんや…。ひーちゃん。やっぱりここにいたのか』
そんな声が聞こえた気がして、思わず横を見る。もちろんそこには誰もいない。
「おばあちゃん」
私は呟いた。ひーちゃんと私のことを呼ぶのはおばあちゃんだけだった。私の名前は玉城(たまき)なのに、おばあちゃんはひーちゃんと私のことを呼ぶ。
鳥の雛のような大きい目をしているから、とおばあちゃんは言っていた。
そんなおばあちゃんはもうこの世にはいない。
半年前、この世を去った。でも私はまだ、その現実を受け止められずにいた。
まだおばあちゃんが近くにいる気がする。
まだおばあちゃんは生きていて、ひょっこり出てくるんじゃないかって思っている。
「あ、今日は冬晴れやなぁ…」
私は独り言を大きく呟く。
『冬晴れ』という言葉もおばあちゃんに教えてもらった。おばあちゃんは私のこと見てくれているんだろうか。こんなに者家の殻になってしまっている私を…。
私はもう一度、お茶をズズッと飲む。
視界が曇った。
全く、湯気は私の視界を曇らすのが好きやなぁ…。

1/4/2023, 2:13:12 PM

テーマ:幸せとは #53

「『幸せ』って何?」
友達にそう聞かれた。私は下を向くしかなかった。なんて答えたらいいのか分からなかったからだ。
「僕、早く死にたいんだよね」
友達は少し経って言った。私はその子のことを見た。彼は目尻を下げて笑った。
「生きていても『幸せ』って思えないんだよね」
彼は私をからかっているのかもしれない。私をからかうことが好きだから。私はまた視線を地面へ落とす。
でも、彼が本当に死を選んでしまったら…。
私はどうなるんだろう。友達を失ったら私は、立ち直れるんだろうか。
「生きていなければ『幸せ』は手に入るの? 死んでいれば『幸せ』は手に入るの?」
私は地面を見つめたままいった。
「わからない。でも生きているのはつらいし、僕が吸っている酸素がもったいないよ」
本気で言っているのだろうか。本気で言っているとしたら……。言っていなくても…。冗談にしては笑えない。
「私は…」
私は思うがままに言葉を並べた。
「私は、あなたがいなくなったら寂しいよ。酸素がもったいないなんて言わないでよ。大切な友達がいなくなったら寂しいに決まってる。悲しいに決まっている。
自分で命はたってほしくないし…辛いことがあったならこんな私だけど相談に乗る。
だから…『幸せ』じゃなくても死んじゃ駄目だよ。私だって『幸せ』はわからない。でも、あなたと一緒にいるときが好き。あなたと一緒にいたい。それは『幸せ』とは違うのかな…?
言い切った私の視界はいつの間にか歪んでいた。鼻の奥がツンとしてきた。
泣くのかな…私。人に生きていてほしいと思う私は、我儘なのかな…? 私は泣き虫で弱虫なのかな。
「そっか」
彼は短くそういった。彼の表情は見えなかった。私が泣きそうな顔を見てほしくなかったから、彼を見なかった。彼の思考が少しでも変わればいい。
死という選択が少しでも薄れたのなら……。

私には『幸せ』はわからない。
実態のないものだからだと思う。形があって目に見えれば『幸せ』だと分かることができるかもしれない。
ただ、いま一つ私が言えることは
『幸せ』とは今、存在できていること何じゃないかって思う。毎日仕事や勉強、家事たくさん嫌なことがある日々を送っているけど、それは生きていなければできないことだと思う。死んだことがないからわからないけど。
でも、存在しているからできることだってある。色んな人と話したり。子供と遊んだり。愛する人と一緒にいたり。友達・仲間ができたり。家族と日常を送ることができたり。好きなことをしたり……。
もちろん楽しいことばかりじゃない。でも辛いことを乗り越えられたら『幸せ』に一歩進めたんじゃないかって思う。
だから今、苦しい思いをしている彼のような人に言いたい。
『生きて、幸せを掴んで』って。

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