桜の花びらがひらりと舞う
↑これで情景が浮かぶ日本語凄い
小説
おばみつ
外ではざあざあと大粒の雫が降り続く。道行く人々は色とりどりの傘を広げ、さながら花のようで心躍る。雨が降ると湿気で髪が纏まらなくなり、大変な思いをするのが常であったが、花のように広がる傘を見るのが小さな頃から好きだった。
(……あら?あの後ろ姿は…)
ふと見覚えのある後ろ姿を目にする。縞模様の羽織を着た黒髪の男性。見紛うことなく伊黒であった。しかし声をかけようとしたところで動きは止まる。少し前に出した手に雨水が伝う。
(…………誰かしら?)
伊黒の横に立っていたのは、自らよりも背の低い黒髪の女性であった。霞色の着物を纏ったその女性は顔こそ見えないものの、無駄な動きなど一切せず、静かに、嫋やかに伊黒の横に佇んでいた。二人並んで歩く姿は知り合いや友人などではなく、もっと別の関係に見えた。そう、それはまるで
その情景を暫く見つめていたが、踵を返し来た道を戻る。足元の水溜まりを思いきり踏んでしまい、泥水が跳ねる。しかしそんなことを気にしている余裕などなく、自らの屋敷を目指し一心不乱に走り出していた。
(これ黒髪の女の人が実は無一郎くんていうオチ)
(4年前とかに考えた任務の都合で無一郎くんが女装するとかいう超ご都合展開)
小説
迅嵐※SE無し
「今日で俺達も卒業かー…」
まだ肌寒さを残しながらも、暖かな日が差し込む三月。
芽吹きのときを今か今かと待ちわびる桜の木の下で、迅と俺は卒業証書を眺めていた。
「てか嵐山凄い人気だったね」
「ん?あぁ…」
迅の空色の瞳には、一つもボタンが残っていない俺の制服が映っていた。
「何が何だかてんやわんやだった」
「だろうな」
卒業式が終わった瞬間の女子達の気迫はこの先中々忘れられないだろう。
「第二ボタン、誰がゲットしたんだろうね」
少し眉を下げ不満気に呟く迅が、ボタンの無くなった胸元を見つめてくる。
「……もしかして、迅も第二ボタン欲しかったのか?」
「んん!?」
あれ、ハズレだったか。ぼんやりとそんなことを考えていると、顔を背けた迅が小さな声で何かを言っている事に気がつく。
「………から…いい」
「えっ?」
「お前本人はもうおれのだから、いい」
「…………………………えっ」
手の力が抜け、地面に卒業証書の入った筒を落としてしまう。全身の熱が一気に上がった気がした。
「………………」
「………………」
無言の二人の間を少し冷たい風が吹き抜ける。
最初に無言を破ったのは顔を真っ赤に染めた迅の方だった。
「なんか言えよ!恥ずかしくなってきたじゃん!!」
「じ、迅が急にあんなこと言うからだろ!」
「なんだよ!ほんとの事だから言っただけだし!!」
「ええっ!?」
思いが通じて早数ヶ月。俺がなけなしの勇気を振り絞った告白の時でさえ、飄々としながら驚きもせず『んじゃ付き合うかー』的な軽さだったくせに。
ぜえぜえとお互い言いたいことを言い切り、またもや無言の時が訪れる。
しかし次に沈黙を破ったのは俺の方だった。
心に秘めていた一抹の不安が、言葉となりこぼれ落ちる。
「ずっと…俺ばっかりが好きなんだと思ってた…」
「えぇ…なんでだよ」
「だって好きって一回も言ってくれないじゃないか」
「……あっ」
今さっき思い出したかの様な声に、俺は不機嫌を表すように顔を顰める。本当に忘れていたなこのぼんち野郎。その様子を見た迅があたふたと言い訳を考える姿が少し可愛くて、思わず笑ってしまいそうになる。
「嵐山」
何やら覚悟を決めたらしい迅がこちらを見つめてくる。その顔はいつも通りの顔色に戻っていて、恥ずかしさなんて微塵も感じていないような表情をしているけれど、視線をずらすとほんのりと耳が赤いことに気がつく。空色の瞳が微かに揺れたかと思うと、小さく息を吸う音が聞こえた。
きっと今の俺は、期待を隠しきれていないだろう。
ずっと聞きたかった言葉を聞き漏らすまいと、俺は静かに耳をすました。
あの日の温もり
(ストック用)
cute!
(ストック用)