小説
おばみつ
外ではざあざあと大粒の雫が降り続く。道行く人々は色とりどりの傘を広げ、さながら花のようで心躍る。雨が降ると湿気で髪が纏まらなくなり、大変な思いをするのが常であったが、花のように広がる傘を見るのが小さな頃から好きだった。
(……あら?あの後ろ姿は…)
ふと見覚えのある後ろ姿を目にする。縞模様の羽織を着た黒髪の男性。見紛うことなく伊黒であった。しかし声をかけようとしたところで動きは止まる。少し前に出した手に雨水が伝う。
(…………誰かしら?)
伊黒の横に立っていたのは、自らよりも背の低い黒髪の女性であった。霞色の着物を纏ったその女性は顔こそ見えないものの、無駄な動きなど一切せず、静かに、嫋やかに伊黒の横に佇んでいた。二人並んで歩く姿は知り合いや友人などではなく、もっと別の関係に見えた。そう、それはまるで
その情景を暫く見つめていたが、踵を返し来た道を戻る。足元の水溜まりを思いきり踏んでしまい、泥水が跳ねる。しかしそんなことを気にしている余裕などなく、自らの屋敷を目指し一心不乱に走り出していた。
(これ黒髪の女の人が実は無一郎くんていうオチ)
(4年前とかに考えた任務の都合で無一郎くんが女装するとかいう超ご都合展開)
3/2/2025, 10:19:57 PM