Hikarumori

Open App
1/13/2026, 10:51:04 AM

お題:夢を見てたい


 この夢というのは、睡眠中の体験のことだろうか?
 
 それなら、夢は見てたくないな。
 私は夢がそんなに好きじゃない。というのも、良い夢の内容は忘れるのに悪夢は頭にこびりつくからだ。

 あれが嫌い。落ちる夢。浮遊感で目が覚める感覚が嫌でしかない。しかも、落ちるまでのシュチュエーションも毎度変えてくるから悪趣味だと思う。突き落とされたり、橋が壊れたり、細かすぎて伝わらないモノマネ選手権の穴が出てきたときは流石に頭を抱えた。そこまでして落としたいんか。


 願望という意味での夢なら見続けていたいと思う。
 というより見続けるべきだ。

 この世界はどこにいっても不安だらけだ。問題を解決したとしてもまた新しい問題が現れる。悲しいかな、それに終わりはない。疲れるよな。もう、どうにでもなれって思ってしまうことがあるよ。

 だから、己への縛りとして夢を見続けたいと思う。それはいつまでも変わらない馬鹿をやるため、若さを持ち続けるため、心を生かすため、と色々あるが、私のためだ。

 私の夢を見続けていたい。

1/12/2026, 12:04:27 PM

お題:ずっとこのまま


 『ずっとこのまま』に続きがあるのなら、
 どんな言葉が相応しいだろう。

 『時が止まれば良い』は無難だと思う。この夜が明けることを望まず、永遠の闇の中で過去だけを想起する。食卓の匂い、家族の笑い声、初めて握った手、その何とも言えない温度、愛しい日々、「過去だけで良い」と人生に幕を下ろす。それは、未来への諦観だろうか。反して、懐古だろうか。

 『変わらないでいてほしい』はニュアンスが変わる。世界を固定するのではなく、誰かを固定する願いだ。言い換えるなら、その人らしくいてほしいと祈ることなんだろう。ただその言葉が呪いにならないとは言えない。その人が『その人らしさ』を問い続けるのなら、この言葉は澱になる。

 『生きていてほしい』なら前述したものよりも切実で健気な願いになる。ただ生きていてくれるだけで良い、とも言い換えられるかもしれない。それは他の全てを赦す代わりに、死だけは赦さない紛うことなき呪いだ。それが吉と出るか凶と出るかは、受け取り手に委ねられる。言葉の真骨頂だ。


 「と、考えるのは無粋だね」

 僕は彼の遺書を読むのをやめ、眼鏡を掛け直す。そして、彼の最後の言葉を三つ折りにし封をした。

 『最後に君へ、ずっとこのまま』

 彼の物語の最後は、この文章で締めくくられた。何通りかの解釈はあれど、その続きなどありはしない。あるとすればそれは幽霊で、僕たち生者が生み出した錯覚だろう。それはただの言葉であった最期を捻じ曲げるという面もあるのだ。

 けれども幽霊にこそ物語がある。届いてこその言葉で、錯覚するほどの愛だろう。僕はそれが読みたい。

 「『ずっとこのまま』……なんちゃって」

 独り言が夜に溶ける。その情景にいつか自分の言葉が文字になることを望まずにはいられなかった。




◯✉️の話

1/11/2026, 3:12:30 PM

お題:寒さが身に染みて


 暖かい部屋にいても、着込んでも、布団を被っても、身体が震えて「寒い」と訴えてくるから、私の身体は寒さに染まりに切ってしまったのだと思う。

 錯覚だった。指先が冷えていくように心根までも冷えて、瞬きがゆっくりになり、そのまま瞼を閉じたら凍ってしまうような恐怖と安穏。

 寒さには魔力がある。
 「何も考えたくない」とか、
 「余裕がない」とか、
 「優しくされたい」とか、
 「抱きしめられたい」とか。

 「それが手前の全部だ」と
 思わせられるからこの魔力は厄介だ。

 そんなことを考えていたらまた身震いをした。寒くてしょうがない。左手で右手の指先を擦った。少しも温まらない。寒さの前では私は無力で、どうすることもできないまま魔力に染まっていく。

 黒や藍の水滴が染み、模様を作って、何かになる頃には私は眠りについていることだろう。そして目が覚めたら、鼻先が冷たい。いつも通りの朝が来るのだ。

1/10/2026, 2:43:23 PM

お題 20歳


 不思議な感覚だと思う。まだ、わからないけれど。
 トンネルを抜けるような感覚なんじゃないんだろうか。

 がたんごとん、がたんごとん、

 列車の進む音だけに耳を傾けているような情景だ。たぶん隣には見知った人たちが座っている。その人たちと他愛のない話をして、くだらなさに笑って、ときに笑われて、突拍子もないくしゃみをした。

 がたんごとん、がたんごとん、

 列車の進む音だけに耳を傾けていたら、いきなりぱぁっと視界いっぱいに光が広がって、思わず目を瞑る。次、目を開いたら列車の外が知らない景色だった。その世界はなぜか妙に色鮮やかに見えて、現実味がないのだ。

 でも、隣には見知った人たちが座っている。
 私はそこで、
 なんだ、トンネルを抜けただけじゃないか、とはにかむ。

 がたんごとん、がたんごとん、

 変わらない、列車の進む音に揺られながら進んでく。



 わたしの20歳がこんなふうに見えたらいいと思う。