ワンルームにひとり
ここは私の楽園だ
しかし一歩外に出れば
見知らぬ人たちとすれ違う
学校にいても
仕事をしていても
人の気配がやむことがない
神経質なのは自覚しているが
全く人と関わらない訳ではない
波風立てずに 静かに
人の輪をすり抜ける
隙を見ては
ひとりになれる場所を
探し彷徨う 自分がいる
そうして見つけた
誰も訪れない穴場は
私と世間を繋ぎ止める
精神の生命線
【私だけ】
わたしの側で泣いていた男の子は
艶のあるさらさらな黒髪に
透き通った海のような青い瞳だった
どうやら近所の子供たちに
揶揄われていたらしい
当時のわたしはお世辞にも
おしとやかとは言えない
所謂 じゃじゃ馬と呼ばれていた
娘だった
いけないこと よくないこと
悪いことが許せなかったので
泣いている男の子に駆け寄り
近所の子供たちを追い払った
もう怖くないよ と声をかけると
男の子は また泣き出してしまって
心底焦ったっけ
今思うとあれはきっと
安堵の涙だったのだろうけれど
男の子とはそれきりだったけれど
何十年経った今でも
町外れのけもの道を通るたびに
思い出す
わたしと同じくらいだろうけれど
元気にしているだろうか
もうそんなことは
すっかり忘れてしまったかな
【遠い日の記憶】
放課後
河原でごろんと寝転ぶ
両手を頭の後ろに
添えてみたりしてみる
空は赤い
雲はまばらに浮かんでいて
ゆっくりと流れる様を
特等席で眺める
まるで空という映画の
スクリーンに流れる
キャストロールだ
一日の空模様を飾った
スタッフたちの紹介が
スクリーンが紺色に染まるまで
続いていくだろう
普段は空なんて気にせずに
河原をさっさと通り過ぎるけれど
たまには こういうのも
悪くないな と思いながら
テストまであと三日という事実を
しばし雲の流れにまかせて
忘れようとしたが
やっぱり 無理があった
せめて
雲が見えなくなるまでは
現実逃避したいな と
見上げ続けたのだった
【空を見上げて心に浮かんだこと】
貴方と僕は
夜だけの繋がり
気まぐれに会っては
溶け合い
朝日がのぼれば
離れていく
本名すらも知らない
生産性のない関係
いつまでも
時間と貴方には
甘えていられない
だから もう
【終わりにしよう】
店へふらり、と入る
テナント募集のスペースが
ちらほらみえる
不景気だな と感じる瞬間だ
ただ通り過ぎただけの店
時々買い物に来ていた店
結構贔屓にしていた店
色々あるけれど
胸がキュ と締め付けられ瞬間は
一緒だ
ふとテナントを見ると
ガチャガチャが置かれている
ふたつ みっつ と言わず
ずらり と並んでいる
最近至るところに増えたな
まぁガチャガチャは好きだから
良いのだが
めぼしいものがないか
見てしまうのも
また 本能だ
欲しいガチャガチャを見つけた
どうやら新作らしい
設置前にSNSで騒がれていたものだったらしく
箱の中身もまもなく
なくなりそうだ
丁度 回したいと思ったので
百円玉を三ついれた
欲しい種類のが出てきた
思わず口角が上がる
調子に乗って
違う種類のガチャガチャを回す
百円玉を三つ入れた
よりによって
一番欲しくない種類のものが出てきた
無意識にマジかと溢していた
【優越感、劣等感】