わたしの側で泣いていた男の子は
艶のあるさらさらな黒髪に
透き通った海のような青い瞳だった
どうやら近所の子供たちに
揶揄われていたらしい
当時のわたしはお世辞にも
おしとやかとは言えない
所謂 じゃじゃ馬と呼ばれていた
娘だった
いけないこと よくないこと
悪いことが許せなかったので
泣いている男の子に駆け寄り
近所の子供たちを追い払った
もう怖くないよ と声をかけると
男の子は また泣き出してしまって
心底焦ったっけ
今思うとあれはきっと
安堵の涙だったのだろうけれど
男の子とはそれきりだったけれど
何十年経った今でも
町外れのけもの道を通るたびに
思い出す
わたしと同じくらいだろうけれど
元気にしているだろうか
もうそんなことは
すっかり忘れてしまったかな
【遠い日の記憶】
7/17/2024, 11:37:02 AM