周りが気になって仕方がない
学校 職場 出かける先々
家の中の居間ですらも
落ち着かない
本当に
誰かひとりでもいると駄目だ
たとえ 気の知れた友人でも
たとえ 身内である家族ですらも
トイレと風呂以外にも
気持ちが落ち着ける場所が欲しかった
物事つくころから
ずっとそう思い続けて
何十年後
ようやく自分も
一人暮らしをはじめた
決して広くはないワンルームだけど
自分にとっては 楽園だ
【狭い部屋】
「ぐあーーーーちょっと聞いてよっ」
「何、朝から奇声をあげて」
HR前の教室。おはようの挨拶を軽く交わした直後、後ろの席の友人が私に声をかけてきた。
「推しがっ推しがってか朝のニュース見た?」
「いや見てないけど」
「マジか聞いて聞いてほんと信じられないんだけど」
「聞くから落ち着いて。そんでさっさと鞄を下ろしたら?」
「うん」
私に宥められた友人は、すぅ、と深呼吸をしながらゆっくりと鞄を机の上に下ろした。そして信じられない…と鞄に顔を沈めるように座り込んだ。
「結婚…した」
「え?」
「結婚したのっ推し!あーーー朝からほんと鬱い」
「あー…なるほどね」
鞄の上に伏せる友人を眺めながら納得する。だから朝からなんかテンションおかしいのか。最も彼女はいつもテンションはおかしいのだけど、今日はおかしさの質が違うというか。
「この間のワンマンライブで皆大好きって言ってたのは嘘だったのかよっっ」
「…まぁキミの推し君も全然結婚しても良い歳じゃん」
「あーあー聞こえない聞こえないっワタクシ結婚という単語は存じあげませんっ」
「じゃあなんで結婚で嘆いてんの」
「あー聞こえません」
友人は異性アイドルが好きな、所謂オタクと呼ばれる人の一種らしい。なんか数ヶ月前は別のアイドルが好きだった気がするんだけど、いつのまにか今のアイドルが好きらしい。まぁ今好きなアイドルもそろそろ変わりそうなんだけども。
いや、でもね!と友人はがばっと顔を上げる。
「結婚するにしても!してもよ!!うちらには隠せー?って思うのよ正直」
「うんうん」
「うちらは歌って踊ってトークできる推しが好きな訳で、そこにリアルを持ち込まれたら、ずっと脳裏に過ぎって気持ちよく推せない訳。世の中の人たちが結婚を祝える心情がうちには分からんのよ」
「おおう」
なんと傲慢な、という言葉をギリギリで飲み込む。勿論、友人と違って素直に推しの門出を祝える人たちも沢山いるだろうけれど、なかなかにオタクというものは難儀な思考をしている。
「てかアンタはほんとアイドルに興味ないよね」
「まぁあんまり」
友人が言うように、私はというとアイドルどころか芸能人全般に興味がそんなにない。こういう時ばかりはあんたが羨ましいよ、と友人が足をパタパタ宙でバタつかせる。
「はぁ…積んだ円盤や写真集どうしよ」
「いっそのこと売れば?」
「皆持ってるよ〜大して売値つかん」
「どんまい」
「帰りなんか奢って」
「しょうがないなぁ」
こんな調子の友人だが、数週間もすれば新たな推しが見つかるだろう。
【失恋】
さんさんと照らす太陽の下
腕を漕ぎ 足を蹴りながら
飛び続ける
塩素の ツン とした刺激が
鼻腔を満たす
息は絶え絶えに
めいっぱい吸い込み
吐き出す
ここで降りてもいいだろうけど
まだ飛べる 飛べると
もう一人の自分がそれを許さない
あと何メール?
あと何往復?
これは
とある一人の 孤高の旅人の とある夏の
【終わりなき旅】
生まれた時に出会った このコ
首元にリボンをつけた日が
わたしの誕生日と同じだったから
このコもわたしと同じ誕生日
目が覚めた時
ご飯を食べる時
遊ぶ時
どこかへ出かける時
いつでも一緒だった
ああ でも
お風呂は一緒じゃなかった
いつの日か
お風呂に連れて行きたいと
わたしがいったら
駄目だよ と言われて
ずっと ぐずっていたっけ
もう何年も前の話
物置で再会したこのコは
ところどころ ほつれていて
色褪せていて
今まで
一緒にいてあげられなくて
【「ごめんね」】
拝啓 ……
春から夏へかわりゆくこの頃
如何お過ごしでしようか。
この頃の時期といえば
服装には
ほとほと迷う日々です。
つい昨日まで暑いかと思えば
翌日は急に気温が下がったり
寒いかな?と思い、とっておいた
セーターや上着は結局
使わなくても大丈夫だったり
そんなこんなの近況ですが
もうそろそろ暑い日が多くなるかと
思っております。
お互い体調には気をつけたいですね。
敬具 【半袖】