「はい、これ」
と、何でもないようにアイツから渡されたのは、一本の花。
濃い紫色の、これは何の花だろうか。
この花の理由を聞いたら、「この色、お前にぴったりだろ?」という、アイツらしい単純な答えが返ってきた。
とりあえず礼と共に受け取り、家で調べてみた。
花について調べると、必ずと言っていいほど花言葉に関する情報も目にする。
まあアイツは花言葉なんて気にしちゃいないだろうが、念のため、念のためと言い聞かせて調べた。
花言葉というのは複雑で、その花全体の花言葉もあれば、色や本数によっても違う花言葉がついてくる。
そういうとき、どれを取ればいいのか分からないが、もしこの花で、全体の花言葉を取るなら…
なんだか、満更でもない、むず痒いような気持ちが、芽吹いた。
【芽吹きのとき】
_______
モチーフとなった花はアネモネです。
アイツの手料理を初めて食べたあの日。
あまりに優しくて、温かくて、途中から泣きながら食べたのをよく覚えている。
【あの日の温もり】
「この世界で一番可愛いものって何だと思う?」
と訊いたら、
「お前」
と即答された、あの昼休み。
【cute!】
「ついに…この時がきたな」
「ああ…」
「荷物全部持ったか?」
「お前がいるから大丈夫」
「オレに二人分の荷物管理任せるな馬鹿ヤロー」
「そうだな」
「は?」
「あとその解釈、半分間違ってるぞ」
「え、じゃもう半分は?」
「言葉通りの意味」
「……っそういう話じゃねえだろこの人たらし」
「お前にだけだが」
「うっせバーカ!!!!……行くぜ、相棒」
「おう」
拳を突き合わせ、二人が向かうのは、
某「夢の国」。
【さぁ冒険だ】
踏まれても踏まれても、強く、たくましく生きている、あの一輪の花。
しかし、その核はずいぶんと脆いことを、自分は知っていた。
だからこそ、寄り添いたいと思った。
一つになりたい訳じゃない。
ただ側にいたかった。
1+1のままで。この関係に答を出さないままで。
あの1が、真に強い、誰にも揺さぶられない1になるまで。
【一輪の花】