この方といられるのは、真夜中の12時まで。
時計を確認しながら、王子様と踊る。
ああ、もうすぐ12時、離れないと…
そう思っても、心と、王子様の腕は離してくれない。
どうしよう、魔法がとけてしまう…!
意を決して王子様から離れる。
急いで階段を降りて、ガラスの靴が片方脱げて、焦って取りに行くうちに、時を告げる鐘が鳴って、魔法がとけて…
ない。
ドレスはそのままだし、王子様も変わらず追いかけてくる。
な~んだ、嘘だったの、あの魔女の話は。
私ったら焦って、バカみたい。
「王子様!朝まで踊り明かしましょう!!」
そうして二人は、パーティーが終わるまで踊り続け、その後幸せに暮らしましたとさ。
──そのころ。
「ア!!魔法とき忘れてた!!!!!!」
【時を告げる】
この瓶に集められているのは、片割れが見つからない二枚貝の貝殻たち。
ここ数年、季節関係なく海に行き、その度にこれらを集めている。
片割れが見つからなくて、もしかしたらもう出会えないかも知れなくて、
そうやって寂しい顔をした貝殻に、自分を重ねてしまうから。
【貝殻】
些細なことでも、全部書き留めておく。
それを時々見返して、こんなこともあったなとひとり笑って、
お前にも見せたとき、こんなことまで覚えてるのかよと大笑いしてくれたら、
この日記にはこれ以上ないくらいの価値が生まれる。
【些細なことでも】
心の灯火。そよ風が吹いただけで消えてしまいそうな火。今までずっと抱えてきたそれに、さらに追い討ちをかけられる。
最悪の境遇のなか、それでも生きた。死ぬ気で生きた。
お前は、そんな自分と同じ境遇にありながら、いつまでも燃え続ける心を持っていた。
そして、その火を自分に分け与えてくれた。
始めこそ悔しかった。意地があったから。
でもだんだん、その性格に絆されて、分け与えられるのも悪くない気がしてきて…
違う。お前が分け与えたんじゃない。
自分の心が勝手に燃え上がったんだ。
それに気づいた今、自分はあの人間を生涯愛すると誓った。
【心の灯火】
口下手なくせに、お前は言葉を探してる。
自分を慰めてくれようとしてるのは分かる。
けれど、その行動が気にくわない。
お前がこうして隣にいるだけで十分なのに、それをお前は分かってないから。
【言葉はいらない、ただ…】