私の名前は田中実。たなか みのり と読む。
親は真剣に考えてつけてくれた、けどなんか、申し訳ないけど、どこにでもいそうな、ありふれた名前だな、とぼんやり感じながら生きてきた。
そうしたら、ある日やってきた転校生の男の子。
名前が田中実。
読みは、たなか みの「る」 らしいが、漢字だけなら同姓同名。
今まで自分の考えてたこと、当たっちゃったって、その転校生の紹介の時に大笑いした。
もちろん、私の名前を知っているクラスメイトもみんなざわざわ。転校生は一瞬にしてクラスの注目を集めた。私も一番に転校生と握手をしに行った。
後で聞いたら、名前の由来も全く同じ。また大笑いしてその子の背中をバシバシ叩いた。
彼は、今では私の一番の仲良し。
兼、私の最愛の家族。
【私の名前】
_______
この話を書くにあたって、初めは日本で一番多い苗字と下の名前をくっつけようと思って調べたんですが、読みと漢字で分かれてたりしてなかなか上手く行かず。そんなところに、日本で一番多いフルネームを見つけて、「即採用!!!!」となりまして、こうなりました。
自分も、同姓同名の人がテレビにでてるのを見てびっくりした経験があります。名前って面白いですね。
まっすぐにどこかを見つめる目。
その視線の先には、
何もいなかった。
なのに、彼はそこに何かがいて、意思の疎通でもはかろうとしているかのように見つめている。
やっぱり動物には、人間にはない感覚があるのかなと思いながら、彼にちゅーるを差し出した。
邪魔されて気分を害したのか、手に軽い猫パンチを喰らった。
【視線の先には】
「浮気、してないよな」
不安から、喉の奥につかえていた言葉が雪崩れ落ちた。
ため息をつかれた。
「…ついに言われたか」と独り言のように呟いたと思うと、両の頬を大きな手で覆われた。
「いいか?今お前のいる世界には、お前以外のヤツに惚れ込んでる俺はいない」
言いながら、頬を弄ばれる。少し痛かった。
不意に自分を見つめる目が優しくなって、ふわりと抱き締められた。
「俺の都合で毎回会うの先延ばしにしてるのは悪いと思ってる。浮気を疑われるのも仕方ないし、俺だっていつかそういうこと言われると思ってた。でも、
俺には、お前だけだよ」
心底愛おしそうな口調だった。
「…ごめん」
それだけを、何とか絞り出す。
視界が涙でぼやけた。
【私だけ】
学生時代から片思いしていた友達。
隙を見せれば溢れそうな気持ちを抑えて、今まで接してきた。
でもなんだか、だんだんこの恋に希望が見えなくなってきて、
終わりにしようと思った。
たまには宅飲みでもしようと誘って、家に呼び出す。
ビールやらワインやらを机に並べて、至って普通の宅飲みを演出する。
そして、酔いが回りはじめたところで、頭一つ小さいその体を押し倒した。
散々に嫌われて、この気持ちを終わらせようと思ってやったことだったのだが、
存外よさそうな顔をするもんだから、
気づいたら、
【終わりにしよう】
アイツを追い越したい。
抜け目のないあの男を負かしてみたい。
あの頃は、強い劣等感がありました。
そんな感じで勝負をしかけて、
一緒に過ごしてみると、
意外な一面を見つけたりして、
あー周りはこういうの知らないんだろうなって、
優越感に浸っていました。
そうこうするうちに、
その男を好きになっていまして、
勢いのまま告白したら、
男は顔を真っ赤にして、大層愛らしい反応をしまして、
その日、
二人の間に、
大きな愛が生まれたのです。
【優越感、劣等感】