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7/1/2024, 11:22:48 AM

「………」
「……………」
自宅の窓からこちらを覗いている女性と目があった。

「あ、どうも~」
とでも言うように控えめに手を振っている。

薄気味悪さを覚えながら窓に近づく。
するとその女性は、へらへらとした笑顔を浮かべながら捲し立てた。


「あ、!あの~私レイコといいまして~ずっとあなたのこと見てたんですよ!かっこいいなーって!あの、それでなんですけど、えへへ、私と付き合ってくれませんか?」

窓は締め切っているはずなのに耳に響く声量で、くねくねと動きながら、勝手に話し続ける女性。

「…あの、それよりも」
「はい?」

「ここ四階ですけど…どうやってここまで来たんですか?ベランダもないのに」


「え?浮いて来ましたよ?幽霊なので」
「……うわ」
「で、付き合ってくれるんですか?」
「幽霊はちょっと…」
「分かりました!人間ならいいんですね!!」
「そういうことじゃ…」


数週間後、その女性は人間の姿になって、今度はちゃんと玄関からやってきた。
告白はもちろんお断りした。なぜか友達にはなったが。


【窓越しに見えるのは】

6/29/2024, 2:09:05 PM

入道雲のようにわきあがってくる想い。
あの子の為にも早く忘れてあげたくて、こんな自分が憎くて、一晩中、布団に雨を降らせた。



でもなんで…?
雲は雨を降らせたら消えるはずなのに。
どうして私の雲は消えてくれないの?



【入道雲】

6/28/2024, 3:00:01 PM

じりじりと肌を焼く暑さにバテる夏。
水泳の授業を数回でリタイアして、傍観者に成り変わる夏。
制汗剤と日焼け止めのにおいが教室内に充満する夏。
外と中の寒暖差で毎年誰かが風邪を引く夏。
毎日のようにコンビニで買ったアイスをかじりながら帰る夏。
イベントでカップルが成立して周りが無駄に盛り上がる夏。
早々に課題を放棄してスイカを食べて涼む夏。





どこを探しても、もう君はいなかった。






【夏】

6/27/2024, 1:13:33 PM

ここではないどこかへ逃げていたら、
今頃、永遠に二人でいられたはずなのに。



なあ、
俺は、どうすればいい?

お前がいなくなったこの世界で、
どうやって生きればいいっていうんだよ。






【ここではないどこか】

6/26/2024, 12:13:01 PM

いつものように学校に行って、いつものように静かに座っている君にちょっかいをかける。

君はうざがりながらもいつものように付き合ってくれて、いつものように笑いあった。

休み時間はいつものように他愛もない話をして、
次の時間割りにはいつものようにうんざりして、
昼休みはいつものように二人っきりで屋上で食べて、
掃除の時にはいつものように先生にばれないようにふざけあって、

帰りにはいつものように肩を並べて帰る。



分かれ道で、いつものように名残惜しさを残しながら、誰よりも長いバイバイをする。

そうして、姿が見えなくなった頃に、やっと家路についた。




次の日から、君は来ることはなかった。



【君と最後に会った日】

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