さくらこ

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1/10/2023, 11:53:38 PM

【創作】20歳。

「母さん、私20にもなって、彼氏が一度もできたことないのよ?」

「あら、知ってるわよ。」

「これは流石にやばいと思って、お相手探しの旅に出てるわけだけど、なかなか難しいわね。

学生の頃は、好きな人なんてすぐできてたけど、

大学生になってみると、なんだか男の人が怖く感じてきちゃったわ。そういうもんなんでしょうけど、もっと早く知ってたら慣れていたのかな?」

「小さい頃から異性は苦手だったくせに〜」

「母さんがなぜ父さんと結婚したのか、聞いたことがあったわよね。
確か、小学生の頃だったかな、昔過ぎてあまり覚えていないけど、
二人の出会いが、父さんのナンパだったことは覚えています。」

「パパ、イケメンだったから。」

「ナンパもアリだとは思いながらも、されたときどうしても警戒心が強くて、お茶したこともないわ。
母さんは、父さんとの出会いだったもかかわらず、私にはナンパは逃げろって言ってきたわよね。あれ、どうしてなの?」

「パパも浮気もどきをしたことがあったのよ。かっこいい人はモテるから、困っちゃうわね。」

「特に深い意味はないんでしょうね。私のことをかわいがっていたから、私が大切だったんでしょう。」

「それはそうよ!あなたも素敵な人と結婚できたら、ママはうれしいな。」

「安心してよ。私も、幸せな家庭を築くのが夢なのは変わってないの。」

「幼稚園の頃も、「素敵な奥さんになる」って言ってたわね。」

「あれ覚えてる?ママと行く予定だった映画……」

「もちろん!」

「あれ…面白かったよお、ネタバレしてもいい?」

「もうどうせ見る機会ないしね。」

「いや、数分でできるほど浅い話じゃなかったわ!」

「なんだよお」

「あの映画…

あの映画、誘ったの、

ママと、仲直りするためだったんだよ。

久しぶりに、喧嘩しちゃったよね。

なんでだったか覚えてる?私が、高校三年生で相手が大学二年生。バイト先のその先輩が好きになって、カラオケに誘われたから行きたいって話したら止められたんだよね。

ママが先輩を見た時から「あの人は良くない」ってしつこく言ってきてたの、意味わかんなくてイライラしてた。
理由が曖昧で、実際ママの勘だったでしょ?

でもねママ、結局カラオケ行かなくて、付き合おうとしなくてよかった。

あの人、元カノに暴力振るって警察沙汰になったことあるんだって。同じ大学に入ったから、先輩から聞いたの。知ってる名前が出てきたからびっくりしちゃったけど。

母親の勘って当たるって言うもんね。女の勘か?わかんないけど。

ありがとうママ。喧嘩したくなかったよ、本当は。私もまだ、子供だったんだよ。年上の男の人に憧れてたんだ。
今思えば、その人がそんなふうな人っていうヒントが隠されてたんだけど、恋は盲目ってまさにそうだね。

…仲直り、出来ないままで……

ママ、まだ怒ってる?

…知ってるよ。きっとママなら、怒ってるわけないって笑うよね。

ママ。私、ママみたいに素敵な女性になりたいな。

それまで、ううん、それからもずっと見守っていてね。

大好きよ、ママ。」


貴方が大人となった時、一番最初に伝えたい人は誰ですか?

お酒を一緒に飲む予定を立てたお友達?
高校の恩師?彼氏、彼女?

でも、二人だけ。その場にいるかいないかは関係なく、
その人たちの前にいるあなたは、大人になっても子供のまま。
そんな人がいるはずです。私は、その人たちにこそ、大人になった報告を一番最初にするべきだと思っています。
あなたは、死ぬまでずっと、その人たちの子供なのは変わりません。
嫌いでも、喧嘩中でも。

「私、大人になったよ。」

あなたのおかげで。あなたのために。そんな言葉は、言いたくなければいりません。
ただ、その事実を伝えれば、
あなたはきっと、いい大人の入り方ができるのではないでしょうか?

伝えてみましょう、あなたの気持ち。

あなたの生まれた頃から、あなたが死ぬまで、どこに居たって見守っている、両親に。

1/8/2023, 7:13:05 PM

色とりどり。【創作】【えもらぶ】

「ごめんください。」

家族で花屋を営む俺は、声がして階段をおりて「あーい」と店に出た。

そこに居たのは、何本もの花を腕いっぱいに抱えた人だった。
なんとなく女性なのはわかる。ただ、深くフードを被っていて顔が見えない。しかも俯きがち。

怪しい客だが、それでも俺は笑顔で接客する。

なんせ、この花屋は森へ入る道にあるもんだから、客も多いわけじゃなく、毎月赤字寸前。黒字を何とかキープしてんのは、オーナーである母親が営業上手で常連さんがいるからだった。

怪しい客でも客は客。こっちだって金のためにやってんだ。

「あの、、すみません。お花を買いに来たわけではないのですが…」
「?そうなんすか?ってかその花は……」

まさか盗んだ…わけじゃないよな?この店に置いてる花もあるけど、置いてない花も持っているし、商品の数も減ってなさそう……だな。

「あ、これは私の家の周りに咲いてるお花で…あの…お時間ありますか?あ、お金ははらいます。」
「えー…っと?時間なら山ほどありますけど、なんの御用で?」
「このお花の花言葉を、教えて欲しいんです。花は好きなんだけれど、花言葉は分からないから……」

その女は名前をアリアと言った。アリアさんは色とりどりの花を俺に差し出してきた。
これ全部ですかと引き気味に聞けば、アリアさんは申し訳なさそうに頭を下げながらお願いしますと言った。
俺はしぶしぶそのたくさんの花を、腕いっぱいに抱え、客も来なさそうだしと店の奥にある椅子に案内した。時間がかかりそうだったからだ。
けれどアリアさんは首を横に振って断った。え!なんで!?と思ったが、腰を怪我していて立ったり座ったりが痛いんだそう。それは大変だな。

俺は遠慮なく椅子に座って、花を1本ずつ手に取ってその花がなんなのか見始めた。

「あー…俺、花は人よりは詳しいっすけど、全部わかるわけじゃねえし時間かかりますよ。母さんがいたら良かったんすけど、今日に限って店番任されてて不在なんすよ。すみません。」
「いいえ。こちらこそすみません、引き受けてくれてありがとうございます。時間は平気です。夜までに終われば。」
「今は…昼の1時、か。それは余裕っすけど……なんで花言葉聞きに来たんすか?あ、花買う時に選ぶ基準で花言葉大事にする人も結構いますけど、アリアさんもそれっすか?」
「…はい。あの…母に。」
「あ、お母さん?」
「はい。母に、花を届けたくて。感謝の言葉を直接言うのは少し恥ずかしいから、花をプレゼントする時にこんな言葉なんだよって、それくらい伝えるなら私にもできるかなって」
「めちゃくちゃいいっすね!俺も頑張ります!」

1つずつ花言葉を言いながらほかのとこに置いていくのを繰り返した。
何本か同じ花もあったがそれは飛ばした。
ひとつ言う度「素敵ですね」とか「いいな」と独り言みたいに反応していた。

結局全部早20分もせず終わって、俺って才能あるんだなと思う前に、色とりどりに見えた花も意外と種類は偏っていたおかげだと思った。

結局、1本だけ選んでそれを手に帰っていった。お礼の代わりにと代金を渡されたが、断って、要らないならその1本以外の花をくれといった。アリアさんは喜んでくれた。

それからアリアさんは同じように1週間に何度が来る常連さんになった。

仲良くなったが、俺が「アリアさんは目が見えない」ということを知ったのはつい最近だった。
フードを外した彼女の目はずっと開くことは無かった。
だが、上着に上手く隠していた長いゆるりとしたブロンドヘアと長いまつ毛と白い肌は人形みたいだった。

お母さんは今入院中らしい。いざ身近な人の命の重さを感じると、感謝を伝える気になったらしい。恥ずかしがってる暇は無いからと。
花言葉も花も、母親は喜んでくれたとアリアさんはそれこそ花のような笑顔で教えてくれた。

「本当はね、お花の名前と花言葉は、一致して覚えてるんですよ。
でも…ほら、お花がそもそも、見えないから。花言葉も、わかんないでしょ?
騙したみたいで、ごめんなさい。」
「え!いいんですよ別に。常連増えたの嬉しいし!」

アリアさんはあれから店でも花を買うようになった。これは自分で持って帰るようだと言って、花言葉じゃなくて匂い優先で買う。目が見えないと、色より、見た目より匂いが大事なのは、たしかになと思った。



そして今日、俺はアリアさんの家の周りの花畑にやってきた。目は見えなくとも管理は行き届いていて、花屋の俺から見ても素晴らしかった。種類と質が良い。

「すっげえ!すっげえっすよここ!」

テンションが上がる俺に、アリアさんはクスクスと笑った。

「そうかな。ありがと」

色とりどりの花に囲まれて、アリアさんはいっそう美しかった。

「…」

アリアさんは美しい女性だ。でも、その目でこの素晴らしい色を見ることは無いと思うと、なぜだか俺が少し寂しかった。そんなこと言うのは失礼に値するけど、でも少し。

「アリアさんも、花みたいっすね!」
「ええ?それ、どーゆうこと?」
「ここの花は、色とりどりで、それぞれ良さがある素敵な色した花ばっかですよ。
色の種類って、花屋からしても大事なんすけど……
色によって、与える印象とか変わるから。
でも、アリアさんも色んな表情があって、それ見る度俺、同じように楽しかったり面白くなったりするんですよ。
そもそも、綺麗だし!」
「えっ?えっ?わたしが?」
「はい!どんな表情でも、いつだって綺麗なのは変わらないっす!」

「え、ええ?ええ、あ、あ、ありがとう。」

顔を真っ赤にしたアリアさん。ほら、そーゆーとこが!花みたい。

これからも、アリアさんの色とりどりな綺麗な表情を沢山見れたら嬉しいななんて。

1/7/2023, 7:00:56 PM

小学生の頃から、「詩」だったり「俳句」を書く授業や機会は多い現代ですが、私はその頃から、雪について書くことが多かった気がします。もちろん、季節ごとに俳句を書く授業でしたから、俳句の時は冬しか書かなかったけれど、冬は全部雪でした。

それくらい、小さな時から、雪というのは冬だけの特別な素敵なものだったんだと思います。
冬は夏よりも太陽が低くて、眩しくて、多くの面に光が当たると、理科では習いました。
だから、その光と、真っ白な雪があわさった日はあんなにキラキラしていたのかなと思いました。頭は良くないので、いつもそんな小さなことばかり考えています。本当かは置いておいて。

小さな頃は、大人からすれば、長靴で十分な雪も、背丈が小さい私たちにとっては深くて、すっごく歩きづらいけど、でも新鮮で夢中になって遊んでいました。

学生の今も、雪が降ったらどきどきするし、雪が降らないかなってわくわくしているけど、
それより不安の方が大きくなってしまいました。登下校中、私の通学路は坂がとにかく多いので、とにかく滑って転ぶのが怖いんです。
友達がいればいいのですが、1人で転ぶととにかく恥ずかしくて。そんなくだらない理由ですが、私は雪が大好きだけど、学校の日は頼むから降らないで!と願っている原因です。

雪と言われて思いだすのは、今は亡き祖母と一緒に、こたつでぬくぬくしながらみかんを食べていた思い出です。
今も、あんなに絵みたいな幸せな風景はなかったと思います。
障子を開けて、お庭に積もったキラキラしてる雪を見ながら、さっきまで外で遊んできて真っ赤なお鼻と手を暖かい部屋で温めるんです。
こたつはあったかくて、幸せでした。霜焼けになった手を布団の中に突っ込むと、じぃんとするんです。

幼稚園の頃がいちばん雪が好きでした。遊べていました。
幼稚園の頃の冬休みなんて覚えていませんが、ああやって時間を気にせず無我夢中で雪を投げあっていたあの時期は間違いなく冬休みだったのでしょう。
宿題も、雪かきも気にせず、転ぶことも登下校も気にせずあんなに無邪気に遊べていたのは幼稚園の時だけでした。

もう一度だけ、あれを体験してみたいと強く思います。
大雪警報で学校はおやすみ。両働きの両親もなんやかんやあっておやすみになって、
私と姉は外で雪かきと称して遊ぶんです。
それで、家に戻ればあったかいこたつでぬくぬくして、
大雪警報を騒ぐニュースをみんなで見たい。
いつからか、インドア派になってしまった我が家は、もうそんなこと願っても一生来ないでしょう。
姉を誘っても絶対外に出てくれないし、そもそも防寒具が無いんですよね。
スキーも行かない家だから、お洒落なジャケットを背伸びして買ったくらいだし、長靴も入るか分からないし。

そもそも私の住んでるところは滅多に雪が降らないから…嬉しいけど、寂しい。

季節って素晴らしいですよね、思い出に必ず結びついてる。
日本に生まれてよかったって思うひとつです。

最近はもう、春夏秋冬じゃなくて夏夏夏冬になってきたから……

また元に戻って欲しいなと願うばかりです。