さくらこ

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【創作】20歳。

「母さん、私20にもなって、彼氏が一度もできたことないのよ?」

「あら、知ってるわよ。」

「これは流石にやばいと思って、お相手探しの旅に出てるわけだけど、なかなか難しいわね。

学生の頃は、好きな人なんてすぐできてたけど、

大学生になってみると、なんだか男の人が怖く感じてきちゃったわ。そういうもんなんでしょうけど、もっと早く知ってたら慣れていたのかな?」

「小さい頃から異性は苦手だったくせに〜」

「母さんがなぜ父さんと結婚したのか、聞いたことがあったわよね。
確か、小学生の頃だったかな、昔過ぎてあまり覚えていないけど、
二人の出会いが、父さんのナンパだったことは覚えています。」

「パパ、イケメンだったから。」

「ナンパもアリだとは思いながらも、されたときどうしても警戒心が強くて、お茶したこともないわ。
母さんは、父さんとの出会いだったもかかわらず、私にはナンパは逃げろって言ってきたわよね。あれ、どうしてなの?」

「パパも浮気もどきをしたことがあったのよ。かっこいい人はモテるから、困っちゃうわね。」

「特に深い意味はないんでしょうね。私のことをかわいがっていたから、私が大切だったんでしょう。」

「それはそうよ!あなたも素敵な人と結婚できたら、ママはうれしいな。」

「安心してよ。私も、幸せな家庭を築くのが夢なのは変わってないの。」

「幼稚園の頃も、「素敵な奥さんになる」って言ってたわね。」

「あれ覚えてる?ママと行く予定だった映画……」

「もちろん!」

「あれ…面白かったよお、ネタバレしてもいい?」

「もうどうせ見る機会ないしね。」

「いや、数分でできるほど浅い話じゃなかったわ!」

「なんだよお」

「あの映画…

あの映画、誘ったの、

ママと、仲直りするためだったんだよ。

久しぶりに、喧嘩しちゃったよね。

なんでだったか覚えてる?私が、高校三年生で相手が大学二年生。バイト先のその先輩が好きになって、カラオケに誘われたから行きたいって話したら止められたんだよね。

ママが先輩を見た時から「あの人は良くない」ってしつこく言ってきてたの、意味わかんなくてイライラしてた。
理由が曖昧で、実際ママの勘だったでしょ?

でもねママ、結局カラオケ行かなくて、付き合おうとしなくてよかった。

あの人、元カノに暴力振るって警察沙汰になったことあるんだって。同じ大学に入ったから、先輩から聞いたの。知ってる名前が出てきたからびっくりしちゃったけど。

母親の勘って当たるって言うもんね。女の勘か?わかんないけど。

ありがとうママ。喧嘩したくなかったよ、本当は。私もまだ、子供だったんだよ。年上の男の人に憧れてたんだ。
今思えば、その人がそんなふうな人っていうヒントが隠されてたんだけど、恋は盲目ってまさにそうだね。

…仲直り、出来ないままで……

ママ、まだ怒ってる?

…知ってるよ。きっとママなら、怒ってるわけないって笑うよね。

ママ。私、ママみたいに素敵な女性になりたいな。

それまで、ううん、それからもずっと見守っていてね。

大好きよ、ママ。」


貴方が大人となった時、一番最初に伝えたい人は誰ですか?

お酒を一緒に飲む予定を立てたお友達?
高校の恩師?彼氏、彼女?

でも、二人だけ。その場にいるかいないかは関係なく、
その人たちの前にいるあなたは、大人になっても子供のまま。
そんな人がいるはずです。私は、その人たちにこそ、大人になった報告を一番最初にするべきだと思っています。
あなたは、死ぬまでずっと、その人たちの子供なのは変わりません。
嫌いでも、喧嘩中でも。

「私、大人になったよ。」

あなたのおかげで。あなたのために。そんな言葉は、言いたくなければいりません。
ただ、その事実を伝えれば、
あなたはきっと、いい大人の入り方ができるのではないでしょうか?

伝えてみましょう、あなたの気持ち。

あなたの生まれた頃から、あなたが死ぬまで、どこに居たって見守っている、両親に。

1/10/2023, 11:53:38 PM