杖を手に入れても、進むことの苦しさは
進む程に増すばかり。
僅かな支えの杖さえも、折れやしないかと気が気でない。
杖に感謝もしてやれない。
捨てて這うのが優しさなのか。
私にはわからない。
どうすればよかった?
温かな手が差し伸べられると
信じるべきだったのか。
引き返せない。
立ち止まれもしない。
錯覚に等しい小さな光りを追いかけて
ただ進むのみだ。
このしぶとい命が尽きるまで
歩む他ない。
何もなくていい。
頭が働かない間は
静かでいられる。
心も鈍麻して
痛みも忘れられる。
すべてどうでもいいって
消えていられる。
ずっと鈍いままでいたい。
青空を思い出して。
心地良い風を感じている。
太陽の明度を覚えてる?
「これもまた過ぎる」
雲は形を変えて流れていく
もう二度と同じ形は流れない。
雲を抜けて降り注ぐ光りが
大丈夫だと言ってくれた。
この苦しみを咀嚼していくんだ。
いずれ誰かを救うから、それが私を救うから
心地良い青空を思い出して。
堪えるのも。
凪ぐ風を感じて
静かに、心地良さを思い出す。
感じているだけでいい。
思考は休息している。
私は大丈夫。
「紺碧の空も
相変わらず曇天の様相だ。
100,000ルクスの光りが
煢然たる日々を浮き彫りにするのみ。
これもまたクオリアだ。」
ずっと、そこに悲しみがあって
明るさも楽観の欠片も何処にも無く、
私はただ悲しみに塗れている。
あなたの居ない世界。
これはただの孤独じゃない。
喪失と共にある。
太陽の日差しも、遠くで凪ぐ風も、
ふわふわと暖かい毛布に包まれている時でさえ、失い続けている。
無いまま、泣いて、失くして…。
幸せなフリも、楽しいフリも出来る。
無いんだと思い出しては、喪失から目を逸らした分だけ痛む。
世界でたった一人、ただ唯一、
最初で最後の愛しい人。
帰ってこない。返して。代えはない。
聞こえない。
もう一度、名前を呼んでくれたら。声が聞きたい。
思い出す度に得る孤独。
ずっと。
ずっと失い続ける。
孤独になりたい。
失うものの無い孤独に。
あなたの代わりなどありはしないのに、
代替に張り付く喪失の痛みが錯視する。
あなたとの穏やかな時間を、幸福感だけを味わっていたかった。永遠と。
あなたのいない世界がある。
私は異世界に来てしまった。
遠かろうと、近かろうと、
君と二度と合うことがないなら
僕にとって死んだのと変わらない。
悲しくて、寂しくて、
会いたくても会えないから
それはもう死んだのと同じ。
ふと思い出して、懐かしさに浸って
君はどこかで元気にしているかなと思い馳せても
知る事が出来ないから、死人と同然。
だから辛くても、苦しくても、
君の幸せを願うよ。
今頃君がどうなっているかなんて
どの神を信じていようと分からないから。
きっと綺麗な場所で安らかに微笑んでるさ。
一人残された僕みたいに
少しも苦しまずに。
ずっと穏やかに。