この世は元々地獄だった。
真実から目を背け続けた結果、
いつしかなんて事ない世界になって、人々はここが現世なんだと信じ、地獄のルールを元に正常とした。
この世が元々地獄だから諍いが生まれ、
この世が元々地獄だから理不尽に合い、
この世が元々地獄だから欲に塗れているのに、
それが“人間”というもので、そういうものなんだ。ということになった。
この世界が美しいのも地獄基準だから。
この世界が愛に溢れているのも地獄基準。
それが幸福。
「認めたくないし理解出来ないでしょう、なにせ我々はここの住人なんですから。」
コーヒーの入ったカップで暖を取っていた後輩は、結局は一口も口を付けなかった。
子供の頃はよく親に地獄に落ちるよと脅されたっけ。
少しのイメージもなかったけど、怖かった。
今じゃこの世が地獄だから、何も怖くないよ。
私がこの先何をして地獄行きだろうと、
怖くないから平気だよ。
何をしたって平気だよ。
地獄の景色が変わるだけだから。
朝起きて、歯を磨いて、
気温を気にしながら服を選び…etc.
そうやってルーティンをすべてこなして、
さあ出るぞと玄関へ向かってハッと目が覚める。
なんて事のないいつもの朝を
今からまたすべてやるのかと思うと、
しんどくて無理だった。
私にはただの夢じゃなく、
タイムリープそのものだったから。
フィクションじゃ平気でうん十回とループしているが、私なら4回くらいで気が狂うと確信した朝。
仮病を使って休んだ。
11/07-10
23.11/08.8:19-10
地下室みたいな、何もなく黒い空間に
錆びた梯子がある。
上へ登る梯子だが、遥か遠く頭上へ伸びている。
宇宙まで届きそうなくらい。
登ればいい。
それだけだけど。
いつ壊れるかわからないし、
私には梯子の一段目すら握る力がない。
登ればいい。
ただそれだけだけど。
その先に望むものや、希望があるとは限らない。
死に物狂いで進んだ先に
飽き飽きした苦痛だけがあるかもしれないのだ。
嗜まない煙草を吸って、
考えるのをやめた。