「突然の君の訪問」
君と出逢ったのは、春だった。
満開の桜よりも綺麗な笑顔の君。
一目で恋に落ちた。
あれから、毎日君を見つめている。
日毎にどんどん君を好きになる。
出逢った頃と比べると、君との距離も近づいてきている。
いつか、君が家に来てくれたら嬉しいな。
もしそんな事になったら、僕は朝から掃除をして。
前の日からスイーツや美味しいコーヒーを用意して。
洋服も、気張り過ぎない程度にお洒落にして。
匂いも大丈夫かな?
君の写真は恥ずかしいから隠しておこう。
そんな楽しい妄想をしながら、1日を過ごす。
君の好きな音楽をかけて。
突然玄関のベルが鳴る。
ドアスコープ越しに君が見える‼
どうしよう?何だろう?どうすればいい?
慌てふためく僕。
サッと髪の毛をセットして、深呼吸してドアを開ける。
「すみません、隣の部屋の者ですが、音が五月蝿いのでボリュームを下げてもらえます?」
僕を知らない君の、不機嫌な声。
一方的な僕の想い人。
「雨に佇む」
強過ぎず、弱過ぎずの丁度いい感じの雨降りの日。
家の窓から外を眺めると、スカイブルーの傘を差した女性が佇んでいた。
雨の日は気分が下がりがちだから、暖色系で鮮やかな色が似合うと思ってたけど、スカイブルーも綺麗だな、と思った。
家事を終わらせてふと外を見ると彼女はまだそこにいる。
待ち合わせかな?と思いつつ、やる事に追われて時間が過ぎる。いらない物を振り分けして、処分して。十分吟味して断捨離をしていく。
休憩してふと外を眺めると、スカイブルーが目についた。かなりの時間が経ったのに、彼女はまだそこにいる。
いつまで居るのだろう?何をしているのだろう?どうしたいのだろう?気にはなるけど、やらなければならない事が多すぎて、構ってはいられない。
夜になってやっと作業が終わった。後は細かいゴミの処分だけ。やりきった達成感で気が抜ける。
目の端にスカイブルーがうつる。嫌な空気を感じて振り向くと、彼女が目の前にいた。
さっき私がゴミ袋の中に入れたのと同じ顔がそこにある。恨みがましい目で私を見ている······
「私の日記帳」
毎日3行日記を書いていた。
その日にあった、些細な事でと何でもいいから、良い事を3つ探して書いていた。
ちょっとでも嬉しい、楽しい、有難い、綺麗だと思った、感動した、とか。
兎に角気持ちがプラスに動いた事を書いていた。
最初は楽しくて、いやいや人生捨てたもんじゃなくない?とか、世の中割と良い人多くない?とかって思ってたけど、いつの間にか段々義務になっていって、同じ様な事の羅列になって、探す事がしんどくなってた。
始める前は良い事探しでポジティブになるかな、とか感謝の気持ちで日々穏やかに過ごせるかな、とか思ってたけど、予想はしていたけど超短気で飽き性な私は、そこまで辿り着く前に止めてしまった。
今は、「一々文章化しなくても、その時その時の気持ちを大事にして、心に刻めばいいやん‼」「心の日記帳が永久保存出来るし一番良いんだよ?」って、毎日自分に言い聞かせてます······
だらしない私でごめんなさい。短気な私どうしよう?とか言いつつ、反省はしても後悔はしない私が、自分でもちょっと好きな事が一番問題かも、と思う今日この頃······
「向かい合わせ」
あなたがずっと小さい頃は、外食に行っても隣に座って、ひたすらお世話してた。
あなたに食べさせるのに精一杯で、自分のご飯を食べられる頃には、もうすっかり冷めてた。
あの頃は自分の食べたい時間に、温かいご飯を自分のペースで食べたい、って思ってた。
たま~にゆっくり食べられる時があると、最高の贅沢だと思ってた。
そんなあなたも大きくなって、いつの間にか向かい合わせで座るようになった。
メニューも料金も大人になって。会話も一人前の様な顔をして。
洋服も、いつからか子供服じゃなくなってた。
あの頃はただただ毎日が精一杯で、早く大きくなって欲しい、って思ってたけど、いざこうなると、嬉しいけど、少し淋しい。
いつか、あなたに身長も抜かされるのかな。そんな日が来ると良い様な、良くない様な。
又この先は今までと違う心配や悩みが出てくると思うけど、ずっとあなたの味方だからね。
これからも宜しくね。
「やるせない気持ち」
昨日恋を失った。
生まれて初めて、本当に胸って痛くなるんだ、ってわかった。呼吸も苦しくなるんだって知った。
切ないとか、苦しいとか、辛いとか。
言葉は沢山あるけど、この気持ちをどうあらわせばなんてわからない。
ただ、淋しい。悲しい。虚しい。辛い。苦しい。
とれだけ言葉を重ねても、上手く言えない。
いつかはこの気持ちも、「あの頃は若かったから」って笑えるんだろうか。「あなたと出会う為のステップだったんだよ」って言える人に出逢えるのだろうか。
わからない。何も考えられない。
ただ、やるせない。