¿?
紋白蝶が飛んでた。
別にそんな特別じゃないけど…。
ひらひら飛んでいるその蝶はすぐに何処かに行った。
けど 道路に出た瞬間に轢かれた。
呆気ないその終わり方に
私は少し羨ましくも思った。
人は誰しも いずれ忘れ去る。
記憶の中に埋もれる日常や 鮮やかな夕焼け
青春を駆けた学校 思い出の遊び場 読み終えた本
もちろん 埋もれる日常も。
「ねぇ 何かあったの」
茜に焼けた桜を遠目に見ながら 感傷的な思考に
君の声がかかった。
「いつか 君を 忘れてしまいそうで。
いつか 君が 忘れてしまいそうで。」
答えるつもりはなかった が うっかり口が滑った
お互い この場所以外には行けない けど
"離れ離れになるんじゃないかって
もう逢えない日が来るような気がして
ただ これが君の夢で 俺が空想で
君の目が覚めてしまえば..."
「忘れないよ。絶対に。」
そういった君は 真っ直ぐな眼だった
彼女は出来ない約束事は言わない
だから いつもなら"絶対"なんて使わないんだ
君は俺の手を握って
「忘れても 君は覚えてくれるから。」
だから大丈夫。
って君は笑った。
その後は 指切りげんまんをした 馬鹿らしいけど。
例えこの本に結末が来ても 忘れないって。
彼女は俺に会う為に身を捨て
俺は彼女と伴に過ごす為に身を捧げた。
そんな関係だから多分忘れないだろう。
忘れたくても 忘れられない。
忘れらない、いつまでも。
?
「1年後 俺達はどうしてるだろうな」
二人しかいない教室で君が 不安そうに 呟いた。
「いつも通りだよ」
そっと君の隣に行きながら その呟きに返事をした
「多分」
できない返事は もうしたくない。だから
ちょっとだけ 補足した。
「ん そうか。」
そう言って 君は私の頭を撫でた。
「どうしたの 淋しくなった?」
ひやかして言ったつもりだった けど
きみの眼は 本当に不安そうに揺らいでた。
「私はどこにも行かないよ。君がどこにも
行かない限りは ね。」
「当たり前だろ」
顔を赤くした君を見て ちょっとほっとした。
" いつも通り"の結末が 来ませんように。
物語
果てしないこの"日常"に終わりが来ませんように。
「初恋の日、っていつ?」
そう突然君が聞いてきた。
突拍子もないその質問に 俺は上手く答えられなくて
「お前に会った時。」
と キザっぽいことを言ってしまった。
「なにそれ」
やっぱり 君は俺を揶揄うように笑って言うから
「笑うなよ 聞いてきたのはそっちだろ」
と 拗ねた子供みたいな返し方をしてしまった。
「拗ねないでよ 私は会う前からだよ」
へにゃりと笑って さらっとそんな事を言える
君には いつまでも勝てる気がしない な。
流星群を見に 君と2人で屋上に訪れた。
「明日世界が終わるなら 何を願おう」
突然 君が流星群を見ながら ぽつりと呟いた。
呟いた君は 星に呑まれるような気が そのまま
消えてしまいそうな気がした。
だから 俺は焦った様にこう言ったんだ。
「君がいるなら 俺はもうそれで十分だ。」
って。
そしたら君が こっちをみて
見透かしたように笑うから 恥ずかしくなって。
俺は拗ねたように俯いてると
「私もだよ。だから 最後までよろしくね。」
そう言った君は なんだか寂しそうに笑っていた。
俺らは 知っている。
この日常は いつか思い出になることを。
いつか 結末が来ることを。
本を読み終えるように ゆるやかに 気付かない内に
「最後なんて 言うなよ。」
「ふふ、私達に結末はいらないかもね。」
あぁ、君はずるいな。
言えないことを 君は平気で言うんだからさ。