「冬になったら」
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「もうひとつの物語」
(めも)
束の間の休息
¿?
寂しさを埋めるように好きな趣味が、好きな物が増えていく。
弱さを隠すように異端になっていく。
「今日の新作のあの服可愛い!」
「あのベット高いけど可愛い……」
「うわぁああのキャラビジュ良い…」
まるでそれらに恋をしているように、
飴玉のように甘く口に広がる。
さりとてそれは飴玉のように、吟味し尽くしてしまえば
段々と無くなり、気付かず内に消えてしまう。
恋と言うには余りにも身勝手で独り善がり。
けれど、恋じゃないのなら私は一度も恋なんてした事ないだろう。
きっとまた大切な物が増えて、またどうでも良くなる。
それまでどうか、この甘く麻薬のような思いに浸らせて
「今日は星が見えるから、星座を探そう!」
と君は勢いよく椅子から立ち上がった。
突然の事で俺は苦笑いをしたけど、君はいつだって
突拍子もなくて。
「うん。いいよ」
そんな所も可愛いなあ。なんて思いながら返事をした。
「うーん、私オリオン座以外分からないんだよね」
とどこかの教室から持ってきた望遠鏡で、教室の窓から覗きながら君は言う。
「この時期はオリオン座見つけにくいんじゃないかなあ」
俺もそんなに詳しくわないけど、ある程度の知識ならある。
オリオン座は基本、11月の下旬頃かららしい。
そう伝えると君はつまらなさそうに「そっかあ」
と言った。
「俺も見ていい?」
「もちろん!!見つけたら教えてね!」
「うーん、頑張るね」
と期待の目を向けられて苦笑いをした。
…
………
「あ、あれペガスス座じゃないのか?」
「……??ペガサス座なんてあるの?」
「ペガススだよ。」
あれからしばらくして見つけたのはペガスス座。
神話では勇者ペルセウスがペガススに乗って姫のアンドロメダを助けたらしい。詳しい話は俺にも分からないけど。
「うーーーん…?全然ペガサスっぽくないね」
「だからペガススだってば」
星をまじまじと見続けながらはてなを浮かべる君が可愛らしくて、つい頭を撫でながらそう言った。
校舎を出て桜道を散歩している夜。
今日は月が綺麗で、その淡く綺麗な光が桜を照らし
甘美な雰囲気が道を包む。
なんだか、ただ散歩するだけでは物足りなくて
「踊りませんか」
と軽く会釈するようにして手を誘う。
なんて、踊りの教養なんてないのにそう言ってしまった。
「ふふ、どうしたの急に」
なんて君が微笑みながら手を乗せ,音無きリズムに合わせて
優雅に踊る。
「なんだか散歩だけじゃ勿体ないと思ってさ。」
踊る君に釘付けになりながらそう行った。
「確かに、今日は月が綺麗だもんね」
とにこやかに顔を明るくすると、
「あっ…」
君が足が絡まってバランスを崩してしまいそうになった。
「大丈夫?お姫様」
自分の手を君の背中に回して支える。
ぎゅっと顔との距離が近くなった。顔では笑顔を保っているけど、にやけているのかそれとも照れてぎこちない笑顔なのか自分でも分からない。
「……ありがとう。私の王子様。」
君は顔を俺より赤くして気恥しそうに笑うとそう言った。
「…えへへ」
「…はは」
2人とも気恥ずかしくて、額を合わせてへにゃりと笑って誤魔化した。
その後はケルト音楽でもあるかのような身軽なステップで踊り、疲れ果てるまで楽しく踊ったのだ。
こんな夜も悪くないだろう